86 / 109
第2章
12
しおりを挟む気づいてしまった想いはとりあえずぎゅぎゅっと心にしまいこむ。
辛い思いをしている子たちがいるからね。
寝ている2人の様子を見にいけば、荒い息はしているけれど、よく眠っていた。
おじやでも作りますかね。
丁寧にだしをとって、胃に優しい大根と旨みを増すためにきのこ、柔らかくした人参とシャキシャキのネギを卵でまろやかに。
ミツバを添えれば完成だ。
ほかほかの土鍋をアイテムボックスにしまった。
書斎から数冊本を持ってきて、寝ている2人の横で本を読み、時折タオルを変えて、起きたらおじや食べさせ薬を飲ます。
時間がくればエルヴィスさんが来た。
「ユーリさん、下に行ってみたほうがいいかもしれませんよ?」
「下?」
お客さんが来てしまったんだろうか?
そう思ってエルヴィスさんに双子を任せてカフェに行くと、いつもお弁当を売っている大きな窓から外に何かあるのが見えた。
お店の前には双子を心配するお見舞いの花や双子が好きなお菓子、メッセージカードが置かれていた。
メッセージカードを見れば日頃の来てくれる常連のお客様からだった。
あぁ、こんなに愛される店に、愛される子に育ってくれているんだなぁ……。
どこか誇らしい気分になった。
くれた花を花瓶に生けて寝室に持って行き、サイドテーブルに飾る。
エルヴィスさんは薬屋の緊急ベルがなったので様子を見に行った。
「……ユーリ。」
「お、フィラ、起きたか。」
顔をまっかにしたフィラがこちらを見ていた。
「……ユーリ、だっこ。」
普段そんな風に甘えないフィラの甘えに毛布ごとフィラを抱き上げた。
思えば寝ているときも懐に潜り込んでくるのがフィラで、俺の上に乗っかってくるのがミクロだった。
「……ユーリ、ごめんね。」
「?何が?」
「……お店、おやすみになっちゃった……。」
ああ、もう。
「いいんだよ、そんなこと気にしなくて。」
まんまるくて熱い頭に頬を擦り寄せた。
「ユーリ。」
「お、ミクロも起きたか。」
「僕も、だっこ。」
「よしきた。」
右の太ももにフィラ、左の太ももにミクロを乗せて抱きしめる。
ストーブがいらないんじゃないかっていうくらいほかほかだ。
「常連のお客さんたちが2人を心配して差し入れたくさん持ってきてくれたぞ~。
元気な姿を見せてやりたいな。」
「「うん。」」
ぽん、ぽん、と身体を叩いていれば2人はまたすぅ、と眠りについた。
またベッドに寝かせて、リビングにいけばまたエルヴィスさんが戻ってきた。
「本当に子どもたちにアトラ熱が流行っているみたいで、その患者でした。
もう医療ギルドも薬の材料がなく、近所の薬屋もないそうです。
今チェルロが材料をとりに森に行ってくれたので大丈夫だと思いますが。」
「そうですか……。」
エルヴィスさんの薬屋はエルヴィスさんやチェルロさんが材料を自ら仕入れることができるのが大きい。
それに品質もいいからしばらくは混むかもしれない。
エルヴィスさんはこの事態にいつも休みにしている日も店を開けることにしたようだ。
2,025
お気に入りに追加
3,424
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました
ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】
ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です
※自筆挿絵要注意⭐
表紙はhake様に頂いたファンアートです
(Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco
異世界召喚などというファンタジーな経験しました。
でも、間違いだったようです。
それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。
誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!?
あまりのひどい仕打ち!
私はどうしたらいいの……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる