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第1章

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「ユーリ、とれたー!」

「……ぼくも!」


2人は顔に土をつけてピッカピカの笑顔をくれた。
手にはそれぞれトマトときゅうりを握っている。

「おぉ!美味しそうだな!
いいか~?」

俺は近くの水場でその野菜を洗って布巾で拭いて2人に渡す。

「さ、食べてみな。
採れたて野菜を生で食べるのは作った人に醍醐味さ。」

そう教えれば2人の顔はさらに輝いて、採れたて野菜にかぶりついた。

じゅわり
ポキンッ

おぉ、美味しそうな音。
新鮮な音だな。

「「……っお、い、しーっ!」」

「ふ、ふふ、はははっ、そうだろう!

食べ終わったらこっちも手伝ってくれ。」

「「ユーリ、あげる。」」

2人はそれぞれ、俺にも野菜を分けてくれた。

「いいのか?
2人の大事な野菜だろう?」

2人の畑は小さいから採れる野菜も少ない。

「「あげる。」」

「……ありがとう。」

ありがたくもらって俺も水場で洗いその場でかじりつく。

トマトは程よい酸味とそれ以上の甘さがあって、果汁が口の中で弾けた。
きゅうりもポキン、と綺麗に割れるほどの歯ごたえと瑞々しさがある。

「これは、美味しいな。」

そういうとそうだろうそうだろうと、2人の小さな胸が誇らしげに張られた。




美味しい野菜で英気を養ったら畑から、なす、オクラ、パプリカ、とうもろこしと夏の野菜を採っていく。

「今日はこの野菜を使ってスペシャルメニューだな。」

「「スペシャルメニュー!」」

本当はカフェのお客様にも提供したいけれど初めての収穫でそこまでの量は収穫できなかった。

「2人にはサラダを作ってもらおうかな。」

「「うん!」」





採れた野菜をキッチンに置いて身体を綺麗にしたら、料理に取り掛かる。

作るのは夏野菜のスープカレー。

子ども用と大人用で辛さを変えなきゃいけないからスパイスの調合は一からしなくてはいけない。
ここにはカレールーなんていう便利なものはないからね。

でも料理のスキルのおかげか計らずともこれくらいでいいなっていうのがわかるからスムーズにカレーの素は作れた。



「「すごいにおい。」」

嗅ぎ慣れない匂いにトマトやきゅうりを切っている2人の顔はしかめっつらだ。

「これが美味しいものなるんだよ。
そのうち2人ともこの匂いを嗅ぐだけでお腹が空くようになるさ。」

カレーはとろ火で長時間煮込む。
スープは水ではなくブイヨンスープを足すのがポイントだ。

一番のポイントはザクザクと大まかに切った夏の恵みを全部素揚げにすること。
これで野菜がさらに甘くなって、サクサクとした食感が楽しめるようになる。


すこーしだけ味見したら採れたて野菜とあってか今まで食べたカレーより一層美味しく感じた。
双子も味見!ってねだってきたけれど、出来上がった一番美味しいものを食べて欲しかったから今回は味見をさせなかった。
おかげで双子は口を尖らせていたけれど。


出来上がるのを待っている間、味の想像がついている俺はすでによだれが出そうになっていた。


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