気まぐれ店主ののんびり?生活

朝比奈和花

文字の大きさ
上 下
36 / 83
第1章

36

しおりを挟む


泣き出した双子に今度は俺がオロオロしちゃう。
なんて言ったって双子が泣いたのは初めて見るから。

どう泣き止ますかと考え始めていたらエルヴィスさんが双子を纏めて抱き上げた。

俺は身長175cmでエルヴィスさんは190cm後半はあるから初めてだろう視線の高さに持ち上げられてピタリと泣き止んだ。

「お兄さんに心配をかけたんだから今度は困らせちゃいけないよ。」

「……お兄さん。」

「……お名前は?」

「私?私はエルヴィス。」

「エルヴィス。」

「……かっこいいね。」

「エルヴィス“さん“だよ、ミクロ。」

「ユーリさん、構いませんよ。」

「本当に色々とご迷惑をおかけしました。
明日もし屋台に来ていただけたらお詫びを兼ねてサービスしますので!」

そう言ってその場で別れた。

「「ユーリ。」」

「ん?」

「「ごめんね。」」

「……ふたりが無事だったからいいよ。

……帰ろっか。」

「「うん。」」

その日のごはんは親子丼。
兄と弟だけど仲良く、の意味を込めてね。

「おいし?」

「「美味しい!」」

ミクロは普通、フィラは汁だくが好きなよう。
俺は汁だく派。

「今日の勢いが明日も続くと思うからもう少し売る量を増やそうと思うんだ。
だから今日はふたりで先に寝てて。」

「「僕たちもやる。」」

「それはだめ。
子どもはきちんと寝るのも仕事!」

子どもの夜ふかしが許されるのは年越しのときだけ!
それ以外は許しません!

俺がいなくても俺の部屋で寝たいというのでそれは許して、お風呂に入れて歯を磨かせ、ベッドに入れた。
寝つけなさそうにしていたから習慣になっていた読み聞かせだけしたら、すんなり寝てくれた。






「俺はここからが本番なんだよねぇ。」

お昼に切っておいたバナナにチョコをつけ、今日空いた寸胴鍋に新たにソースを作る。
ソースを作るには長時間煮込まなきゃいけないから、事務室で仮眠をとりつつ作ることになりそうだ。

それにしてもエルヴィスさん、すごい美形だったなぁ。
澄んだ瞳は吸い込まれてしまいそうで、濡羽色の黒髪はツヤツヤしていた。
どこかのいい家の人って感じの雰囲気がぷんぷんしていた。

ぼやぼやした印象の俺とは大違いだ。
まぁ庶民の俺には今後関わり合いになることはない人種だな。

人種といえば竜族だったみたいだけれど、見た目は人族と変わらなかったな。
体格は大きかったけれど魔人族や精霊族と違って魔力や霊力が溢れている様子もなかった。
もしかしたら隠しているのかもしれないけれど。

そんなことを考えながら夜は更けていったのだった……。



























___



「チェルロ、見つけました。」

「……まさか。」

「やっと……やっとです。
慎重に動かなければ……。」

やっと見つけた、いつまでも見つからなかった私の宝玉……。

「……しばらくこの地に滞在することになるじゃないか。

あぁ、皇帝になんと説明すればいいやら。」

「適当にすればいいですよ。」

「そんなわけにいかないだろう!」

ふたりの男の会話を聞いていたのは色とりどりの花だけだった……。



しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。 非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。 両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。 そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。 非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。 ※全年齢向け作品です。

処理中です...