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第1章
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しおりを挟む泣き出した双子に今度は俺がオロオロしちゃう。
なんて言ったって双子が泣いたのは初めて見るから。
どう泣き止ますかと考え始めていたらエルヴィスさんが双子を纏めて抱き上げた。
俺は身長175cmでエルヴィスさんは190cm後半はあるから初めてだろう視線の高さに持ち上げられてピタリと泣き止んだ。
「お兄さんに心配をかけたんだから今度は困らせちゃいけないよ。」
「……お兄さん。」
「……お名前は?」
「私?私はエルヴィス。」
「エルヴィス。」
「……かっこいいね。」
「エルヴィス“さん“だよ、ミクロ。」
「ユーリさん、構いませんよ。」
「本当に色々とご迷惑をおかけしました。
明日もし屋台に来ていただけたらお詫びを兼ねてサービスしますので!」
そう言ってその場で別れた。
「「ユーリ。」」
「ん?」
「「ごめんね。」」
「……ふたりが無事だったからいいよ。
……帰ろっか。」
「「うん。」」
その日のごはんは親子丼。
兄と弟だけど仲良く、の意味を込めてね。
「おいし?」
「「美味しい!」」
ミクロは普通、フィラは汁だくが好きなよう。
俺は汁だく派。
「今日の勢いが明日も続くと思うからもう少し売る量を増やそうと思うんだ。
だから今日はふたりで先に寝てて。」
「「僕たちもやる。」」
「それはだめ。
子どもはきちんと寝るのも仕事!」
子どもの夜ふかしが許されるのは年越しのときだけ!
それ以外は許しません!
俺がいなくても俺の部屋で寝たいというのでそれは許して、お風呂に入れて歯を磨かせ、ベッドに入れた。
寝つけなさそうにしていたから習慣になっていた読み聞かせだけしたら、すんなり寝てくれた。
「俺はここからが本番なんだよねぇ。」
お昼に切っておいたバナナにチョコをつけ、今日空いた寸胴鍋に新たにソースを作る。
ソースを作るには長時間煮込まなきゃいけないから、事務室で仮眠をとりつつ作ることになりそうだ。
それにしてもエルヴィスさん、すごい美形だったなぁ。
澄んだ瞳は吸い込まれてしまいそうで、濡羽色の黒髪はツヤツヤしていた。
どこかのいい家の人って感じの雰囲気がぷんぷんしていた。
ぼやぼやした印象の俺とは大違いだ。
まぁ庶民の俺には今後関わり合いになることはない人種だな。
人種といえば竜族だったみたいだけれど、見た目は人族と変わらなかったな。
体格は大きかったけれど魔人族や精霊族と違って魔力や霊力が溢れている様子もなかった。
もしかしたら隠しているのかもしれないけれど。
そんなことを考えながら夜は更けていったのだった……。
___
「チェルロ、見つけました。」
「……まさか。」
「やっと……やっとです。
慎重に動かなければ……。」
やっと見つけた、いつまでも見つからなかった私の宝玉……。
「……しばらくこの地に滞在することになるじゃないか。
あぁ、皇帝になんと説明すればいいやら。」
「適当にすればいいですよ。」
「そんなわけにいかないだろう!」
ふたりの男の会話を聞いていたのは色とりどりの花だけだった……。
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