気まぐれ店主ののんびり?生活

朝比奈和花

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第1章

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「すみません、住居についてのご相談をしたいのですが……。」

「かしこまりました、この木札を持って第2商談室へどうぞ。」

第2商談室へ行くとちょうど先客が終わったところでスムーズに入れた。

「お待たせいたしました。
どういったご用件でしょうか?」

「空き家についての相談なんです。
ちょうど自分の家の隣が空いているようで、もし内見ができるようならしたいな、と。」

そう、ずっと気づかなかったが、あの店の隣が空き家になっているようなのだ。
本屋の後ろなのだが、本屋との間は40cmほどしかないから俺の店の前を通って入るしかなく、俺のところのように店頭販売できるような窓がなく正面は古い扉ひとつのみ。
お店を開くには良くない立地なのだろう。

だからか空き家と書かれていただろう紙はボロボロで見えなくなっていたのだ。
それで俺も最近空き家だと気づいたというわけだ。

「あぁ、あそこですか。
すぐにでも内見できますよ。

行ってみますか?」

「はい、よろしくお願いします。」

双子はやっぱり思っていたのと違ったのだろう、内見には参加せず、家でお留守番することを選んだ。



さっそく中に入れば、若干埃っぽいが、定期的に掃除は入っていたのだろう。
思っていたより、手入れはされていた。

「ここはもともと小さな宿だったんですが、オーナーが歳を理由に宿を畳まれてからずっと空き家なんです。
ずっと空き家というよりは数回宿として営もうとした人がいたのですがいかんせん場所が良くなく諦める方が多くて……。」

本当に部屋を貸すって形の宿だったのだろう。
上にはベッドと小さな机だけの部屋が5部屋とお手洗い。
1階にはオーナーの自室とシャワールーム。

宿の横、今の家の書斎の自室から見える草がボーボーに生えている庭はここのものだったようだ。

「この空き家の値段はどれくらいですか?」

「今では価格も下がって5000万イェンになっております。」

商業ギルドの人は安そうに言っているが、大金だ。
それでも買えない金額ではない。
なって言ったって手つかずの3億イェンがあるからね!

「買います!」

買うと決まってからまた忙しいことになった。
買ってから改装しようとしたら老朽化が著しく、改装するなら建て替えたほうがいいということになってしまったのだ。

結局総額で億いってしまった……。
しかし後悔はないっ!

庭を少し小さくして一部をカフェと繋げた。
宿だったから部屋の多かった上の階は5部屋から3部屋にしてシャワー室じゃなくてカフェみたくお風呂場を作ってもらった。

そしてこの家を買った目的の1階にカウンターを設置し、その後ろには作業室を。
そう、週に1回大量の薬を医療ギルドに卸すなら自分のペースで薬屋をやってしまった方がいいと思ったのだ。

それにこの世界の薬は苦いものが多い。
子どもが嫌がって飲まないことも多いと聞く。
子どもでも飲みやすいような薬を作りたいのだ。

まぁそれをやると豪傑ばあちゃんに卸せ!って言われて忙しくなるからやらなかったけれど、自分の店で細々とできるなら話は別だ。

出来上がるのは半年後、ということでそれまで薬作りといつも通りのカフェの営業でいい。
薬屋も週1日営業の予定。

それまでに双子になんとか包丁をある程度使えるようになってもらわないと。
自ら忙しくしてしまっていることにげんなりしつつ家に帰ったのだった。







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