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第1章
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しおりを挟む「さて、ふたりが買ってきてくれたオランジとゴリンはオランジのパウンドケーキとゴリンのパイにしようかね。」
これは売り物ではないから多少見た目が崩れても大丈夫。
「ミクロはオランジのパウンドケーキ担当でフィラはゴリンのパイを担当してもらおうかな。」
食材を洗ってもらったり、バターや粉を混ぜてもらうのはできるし、俺がつきっきりで見れるから火を使うオレンジのシロップやナパージュはふたりに作ってもらう。
卵黄と白身を分けるのに失敗したり、振るう粉を勢いよくして粉が舞ってしまったりと多少のハプニングはあったが、辛抱強く作り上げた。
今はオーブンの前にへばりついている。
「2人とも飽きないの?
遊んでてもいいんだよ?」
「「飽きない。」」
まぁ自分で作ったものができる瞬間をみたい気持ちはわかるからほっといた。
くれぐれもオーブンを勝手に開けたり、触ったりしないように念を押して。
もし破ったら料理は10歳になるまで手伝わせないことにした。
事務室の扉を開けたままにして、本当は双子が寝たらやろうと思っていたことに手をつける。
昨日貴族街の魔道具屋さんで出会ったものたち。
赤と白と黒のオパールのような魔石がひとつずつ。
そしてそれにあうシルバー色の金物。
本屋さんで惹かれた本のうちのひとつ『魔法と魔術の使い方』という本を参考にして、中に書いてある術式を組み合わせたり被っているところは削ったりして、圧縮し、その魔石に組み込んだ。
なかなかうまくいったと思う。
そして金物で細工をして完成、と。
赤と白の魔石を終えたところで
「「ユーリ、焼けた。」」
と双子が知らせに来てくれた。
「ちょうどおやつの時間だし、それ食べようか。」
両方とも一晩寝かせた方が味が馴染んで美味しいし、3人とはいえ量が多いから少しだけ取って、残りは粗熱が取れたら冷蔵庫行きだ。
初めて作ったから少し型崩れしているけれど、いい匂いがして美味しそうだ。
「どれどれ~。」
まずはミクロが作ってくれたオレンジのパウンドケーキを一口。
「お、美味しい!
程よい酸味と甘さがいいな。
で、こっちは……。」
フィラの作ってくれたゴリンのパイを一口。
「おぉ、こっちも美味しい。
シナモンも程よく効いていてりんごの甘さが引き立つな。」
俺の言葉を聞いたふたりは綺麗に嬉しそうに笑った。
初めてこんなに豊かに笑ったのを見たな。
俺に釣られて食べ始めた2人も美味しい!と食べる手が止まらないようだった。
自分で頑張って作ったお菓子はそりゃ美味しいよね。
「ふたりともこっちにおいで。」
「「?」」
ふたりのタグに先ほど作った魔石のチャームを取れないようにつけた。
「「これなぁに?」」
「お守りだよ。」
「「お守り?」」
「ふたりはとっても賢くてかわいい俺の大事な弟だから、危ない目に遭わないように魔法がかけてあるんだよ。
あとは健康に育つようにとか俺の願望も込めちゃったけれど。
ふたりにとって悪くないものだし少なくとも成人なるまではつけておいてくれると嬉しい。」
そう伝えればふたりは大事そうに魔石を握りしめた。
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