気まぐれ店主ののんびり？生活

第1章

9 side ミミ

side ミミ

「それにしてもあの店主何者なんだろうな。」

「……っていうのは？」

「だってよ、毎日営業しなくても暮らしていけて、少し奥まっているけど貴族街近くの一等地に店を構えられる身分を持っているんだろ？」

「確かに……高度な魔法もしくは霊法が周囲にかけられていたしね。
高度すぎて僕には分からなかったけれど。」

「「う～ん。」」

ユーリさんへの謎は深まるばかりだった。



翌朝、洗ったお弁当箱の返却と今日の分のお弁当を買いに行く。

「おはようございます、ユーリさん。」

「おはよう、ミミくん。」

「お弁当箱の返却と、今日の分のお弁当を買いにきました。
あ、スープセットでお願いします。」

「ありがとう。

お弁当箱返却してくれたから10%引きだけれど、今回使う？
それとも違うときにする？」

「今日のぶんのお弁当から引いてください！」

「かしこまりました。

……ところで、お弁当、どうだった？」

「見た目も綺麗で本当に美味しかったです！

まぁ、僕は動く仕事なので少し物足りなかったかな……。」

本音ついでに思っていたこともこぼれてしまった。

「そうだよねぇ、騎士団の人には少ない量だったかも。
よし、改善の余地あり、と。

教えてくれてありがとう。」

今日も一日頑張ろうね、の一言で、どこまでも頑張れる気がした。



そして騎士団でももうあのお店の噂が広がっていて、まさかの第3騎士団長もあの店のお弁当を持ってきていた。

なんでも、奥さんと喧嘩して、朝食をもらいそびれたときに誘われるようにあの店に辿り着いてお弁当を買ってしまったらしい。
安いから朝奥さんお負担を減らすためにも空いている日はお弁当を狙いに行くって第2騎士団長と話しているのを小耳に挟んだ。

それを聞いた第2騎士団長も少し興味を持っている気配がして、強敵が現れてしまったと焦りを覚えたのだった。





あの店に通っている人たちが次第にあの店を気まぐれカフェと呼ぶようになった。
ユーリさんに店名じゃなくて気まぐれカフェと呼ばれてしまっていますよ、と教えたら

「店名……あぁ、“ウィステリア“っていう店名が一応あるんですけれど、みなさんが親しみを込めてそう呼んでくれているのならそれでいいです～。」

とのほほんとした返事が返ってきたのだった。


まぁこう言ったのもこの店の魅力で、このユーリさんも魅力でもあるんだろう。

それからは非番の日はランチに、仕事の日はお弁当と、営業している日はライバルと争奪戦を繰り広げながら気まぐれカフェに通うことになるのだった。