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第1章
8 side ミミ
しおりを挟むside ミミ
自慢の耳を生かして、貴族街や市民街あらゆる所の噂や内緒話を仕入れている第3騎士団の僕。
市民街を警らしていたら、何やら美味しい食事処ができたという噂を小耳に挟んだ。
なんでも探せる者と探せない者がいるどこにあるかもわからない店。
本屋や雑貨屋の店主は行ったことあるらしいが売られている個数が限られているし、店主目当てだったら紹介した自分たちが食べられなくなったら困ると紹介もしてくれない。
でも美味しいという噂は広がって今や貴族街にも噂が広まりつつある。
貴族街付近の市民街を警らしていると、本屋と雑貨屋の間に見慣れない小道があった。
こんな小道あったかなと思いつつ、ここも警らしておこうと小道に入ると何かを潜ったような感覚が体を襲った。
魔力?霊力?よくわからないながらも高度なそれに警戒心が一気に高まる。
小道を進めば何かの店があった。
何やらいい匂いがするから食事処だろう。
恐る恐るその店に入る。
カラン カラン
綺麗な鈴の音と共に現れたのは美人な男だった。
キャメルの髪を遊ばせて、透き通るようなヘーゼルの瞳。
口角の下にあるホクロ色っぽい。
歳は成人したてくらいだろうか。
若いうちにこの容姿にこの色気なら大人になったらなかなかに苦労しそうだ。
「いらっしゃいませ。
お好きな席にどうぞ。」
警ら中だというのに思わずカウンター席に座ってしまった。
「初めての方ですよね。
今日はカルボナーラです
単品とセットどちらになさいますか?」
店主が差し出してくれたメニューにはクリーム色のパスタのイラストが描かれていた。
「セットで……。」
「かしこまりました。」
しばらくして差し出されたカルボナーラは絶品だった。
一瞬でこの店のファンになってしまうくらいに。
そしてここが噂になっている食事処だとわかった。
それからはもう毎日通った。
でも週3日の営業になるというのを聞いたときはショックだったがお弁当というシステムもやると聞いて、運が良ければ1日に2回通えると気を持ち直した。
「あ、いいなぁ、それあそこのお弁当だろ!」
騎士団の午前訓練を終えて、お弁当を広げていたら、同僚のルフが隣にやってきた。
ルフもあの店に通っていると知ったのはつい最近だ。
「うん、早起きは得意だからね。」
「うわぁ、綺麗だなぁ。」
そう蓋を開けたお弁当の中身は、色とりどりの野菜に、美味しそうな焼き魚。
デザートの果物。
一緒につけてくれているハードパンに挟んでもうまそうだ。
あそこで買った水筒に入れてもらったスープは口が広いから飲みやすくて、もう買ってから何時間も経っているのにいまだにあたたかく、訓練で疲れた身体を程よくほぐしてくれるようだった。
「くっそぅ、今日寝坊しちまったんだよなぁ。
それに今日は出遅れちまってさっきあの店に行ったけれど、もうランチ完売してた。」
「今日は訓練長引いちゃったもんね。」
「それにしてもあの店主美人だよなぁ。」
「……成人したてか、もしかしたら成人していない可能性もあるんですからね。
同僚が犯罪を犯すのなんて見たくありませんよ。」
「わかっているよ。
それにユーリさんはなんか恋人にするには俺が彼に釣り合ってない。」
……何も言ってあげられない。
確かにルフの荒い雰囲気にあのユーリさんの柔らかな感じはユーリさんを汚してしまうようで合わないかも。
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