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第1章

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お昼どき。

神様に勝手に改装されていた店の玄関の横にある大きめの窓を開けていい匂いを外に出す。

お客さんが来てくれるといいなと願いつつ、5つあるカウンター席の端っこに座って本を読む。
店を出て小道を作っている左の建物は本屋さんだったから、挨拶を兼ねて昨日の市場調査の帰りに1冊本を買ってきたのだ。

幸いなことにこの世界の文字を読むことはできた。
ただし製本技術は地球ほど発展していないのか少し紙質は粗いし量産は中々できないのだろう、結構高かった。
まぁ本屋の店主にカフェを営むことを知らせることができたからよし。

ちなみに小道を作っている右の建物は雑貨屋さんだった。
ここで先ほど店用の食器を買いに行ったんだけれど、まとめて買ったら端数をおまけしてくれる気のいいおばちゃんだった。
おばちゃんにもちゃんとカフェの宣伝はしてきた。


カラン カラン


「いい匂いじゃな。」

「いらっしゃいませ。
おすきな席へどうぞ。」

本屋の店主が来てくれた。
お客様第一号だ!

「さて、なにがあるのかな?」

「最初なのでボロネーゼを作りました。
今日はこれだけですが、自信はありますよ。」

「ボロネーゼ?初めて聞く料理じゃな。
じゃ、それを。」

「ありがとうございます。
ボロネーゼセットと単品どちらになさいますか?」

「セットとは?」

「セットにしていただくと、日替わりのサラダとスープがつきます。
料金は300イェン追加となりますが。」

「セットで頼む。」

「かしこまりました。」

パスタを茹でる前にお冷を出しておく。

「おや?水は頼んでおらんが。」

「お冷は無料ですよ。
私の店ではそうしているんです。」

どうやら大半の飲食店では水もお金をとっているらしい。
差別化ということで今後もお冷は無料で出していこう。

ボロネーゼにサラダ、あとはコーンポタージュをつけて出す。

「ボロネーゼに、付け合わせのサラダ、モロコシのポタージュです。」

「おぉ、これは美味しそうじゃ。


ではさっそく……これは美味い!」

おじいさんは一口食べた途端、ガツガツと食べてくれた。
お髭にソースがついているのがなんだかかわいい。

「いやぁ、いい店を知ったのう。
いつできたのか全く気づかなかったが……。

これから料理は増えていくのかの?」

「ひとりで営んでいる店なので、当面はお昼限定10食で日替わりのランチをやろうかなと」

「こりゃ毎日来なきゃいけんかもなぁ。」

「大歓迎ですよ。
800イェンちょうだいいたします。」

「800イェン!?
王城すぐそばなのに随分安いのぅ!

ここより味もサービスも悪い店で1500イェンは取られるぞ!」

「まぁ場所も表通りに面していなくて目立たないですからね。
のんびりやっていきたいので広告する予定もないですし。」

「そうかのう……?
できたばかりで利益が取れずに潰れる、なんてことないようにしてくれよ。」

「それはもちろん。」

それから雑貨屋のおばちゃんも来てくれて、匂いにつられたのか、他にも数人来てくれて本屋のおじいさんと同じような反応をされつつ2時間で売り切れてしまった。
最後なんて売り切れてしまったことを伝えなければならなかったくらい。

限定って言葉に弱いのはどこの世界でも共通みたいだ。


来てくれた人がまた明日来ると言ってくれた。


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