玉響から久遠へ

after story 1

3

side 蓮


そんなときふ、と俺の中でとある考えが浮かんだ。
それはもう全て丸く収まる案だ。

αの子はいらないのか？など言われなきゃいけない事態を引き起こした全ての元凶のあいつに子どもを生ませればいいじゃないか、と。

俺は優秀なαだし運命をβに取られるようなあんな平凡をどう扱ってもいいだろう？

なんていったって運命なんだからあいつの全ては俺が握っているはずだ。



αの子がいないとαとしてどうなんだとどんどんプレッシャーをかけられる中、俺は毎日物陰に隠れてあいつが外に出るのをひたすら待った。

瑞樹からどこにいるの？連絡が山のように来ていても気にならなかったしどうでも良かった。
あのΩさえ腹ますことができれば俺はまた返り咲けるのだから。





そして遂にその日はやってきた。





店の裏口からごみの袋をいくつも持った俺のΩがひとりで出てきたのだ。

重かった、など何やらひとり呟いている俺のΩを後ろから襲った。

最初は抵抗してくるだろうと思っていた。
けれど痛い目に合えば抵抗する気はなくすだろう。

一度殴ったがそのΩの目は恐怖と俺への怒りに染まっていて二度、三度と手が出る。


なぜ運命なのに俺に反抗する？
なぜいうことをきかない？
所詮、孕むだけしか脳のないΩなのに。


雨で張りついた服を乱暴に脱がせながらも利き手で力一杯殴りつければ大人しくなった。


これでいい、これでこそΩだ。




このままつがいにして飼ってやろうとうなじのみならず目についたところ全てに噛みついた。

そして身体を暴く。

このとき俺は何も気づいていなかった。
口や手に触れる液体が鮮血だったことも、下で喘いでいると思った声が絶叫だったことも……背後から人が迫ってきていたことも。



バチバチバチッ



どこからか電流の走る音が聞こえたのと同時に俺の視界は暗転した。















目が覚めたときには全てを失っていた。

家も、パートナーも、仕事も、金も。

結局手に入れようとしたものを手にするどころか持っていたものまで全てを失った。





俺はどこで間違えたのだろう？




END．