玉響から久遠へ

朝比奈和花

文字の大きさ
上 下
3 / 47
main story

3

しおりを挟む


side 縞


名前を聞かれてからはカフェラテを持っていくたび、ひとことふたこと話し、季節をふたつ超えたころ仕事を終えた俺を待っていてくれた彼から

「初めて君を見ていいなと思って言葉を交わすたびに惹かれていった。

よければ俺と交際してくれないか。」

と告白された。

初めての両想いに有頂天になったことを覚えている。
その日のうちにマスターに報告してしまったほどだった。



付き合ってから彼に自分はαなんだと告げられ、それを言ってくれたということは番になることも視野にいれてくれているのかな……なんて考えちゃうこともあった。

俺は他のΩと違って美しくないから中身で勝負しようと料理も掃除も洗濯も家事というものは全て頑張った。

ただ付き合って1ヶ月になるころには歪みが生まれていた。


彼の家に呼び出されて料理を作って欲しいと言われていったんだけれど、


「ここのブランドの味噌じゃなきゃ味噌汁じゃない。
αの舌は肥えているんだ。

作り直せ。」

「ごめんなさい……でも300gで1,000円もする味噌なんてアルバイトの俺じゃ買えないよ」

「もういい、外で済ませてくる。」

と彼を不機嫌にさせてしまうことが多々あった。

彼に呼び出されて家に行ってもパジャマはシルクじゃなきゃだめ、洗剤はここのブランドじゃなきゃだめ、これはここのブランドと書かれたリストまで渡されこれらは全て俺が買っていた。

彼の物だし少し払って欲しいと頼んでも、

「なんで君の不出来な料理や拙い家事にそんなお金をなんで払わなきゃならない?」

と断られる始末。



やっと取り付けたデートを待ち合わせをしてから5時間待たされた挙句、大事な会社の仲間と飲み会にいくことにしたとドタキャンされたこともあった。

すきだと思いを伝えてもそう、としか返ってこない。

都合よく使われている気がして使用人のような気分になっていた。
付き合っても手を繋いだこともなく、どんどん自分が惨めになった。

それでも初めて付き合った人。
こんな自分と付き合ってくれた人なんだと必死に彼に合わせる。





もっとアピールしなきゃダメなのかなと思って一応薬は用意して、発情期に彼の家に行って彼に助けを求めた。
流石にΩのフェロモンにはαの彼は勝てないんじゃないかと思って。

αが、彼が欲しいと訴える身体。
全身を舐めるような熱が這っていく。

裸にカーディガンだけ羽織って彼を誘う。

「なんだ、その格好は。」

「ね、ねぇ、身体が苦しいの……。

助けて……?」

一瞬目を見開いた彼がこちらへやってくる。

「……何をさかっているんだ。」

俺のカーディガンのポケットに入れていた抑制薬を見つけ、無理やり口に押し込んで部屋に閉じ込められた。

薬が効いてきて、副作用の頭痛と気だるさとともに冷静になるころ頭の中はなんでなんでと疑問が湧くばかりだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君は俺の光

もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】 ヤンデレです。 受けが不憫です。 虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。  もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。  ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。  結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを――――― 明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。

完結⭐︎キツネの嫁入り

66
BL
後宮もの、18禁、オメガバース、ヤンデレ 扉絵はなつさ様Twitter(@reona0598)にかいていただきました♡あちは様@gwvjjjtありがとうございます♡

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

僕のおにいは世界一!

柴傘
BL
藤原 碧(ふじわら あおい)と藤原 真澄(ふじわら ますみ)は、血の繋がっていない義理の兄弟。 弟である碧は兄である真澄への好意を隠してはいるが、ダダ漏れ状態でモロバレ。真澄も碧の事は憎からず思って入るものの、歳下であり一応戸籍上の弟である碧に手を出すのは、という倫理観から手は一切出さずにいた。 然しある日、飲み会帰りの真澄は珍しく深酒をしたようで酔っ払っていた。これ幸いとばかりに碧は真澄を誘惑して…。 義兄×義弟、オメガバース。オメガバ要素薄め。 途中妊娠描写あり、相変わらず頭よわよわハッピーエンド

【R18】【Bl】イケメン生徒会長αは俺の運命らしいです。えっと俺βなんですが??

ペーパーナイフ
BL
俺はΩの高校2年ナギ。この春、αとΩだけの学園に転校した。しかし転校数日前にストレス性変異によって、突然性別がβに変わってしまった! Ωクラスに入ったもののバカにされる毎日。そんなとき学園一のαである生徒会長から 「お前は俺の運命だ」と言われてしまい…。 いや、俺今βなんですが?? βに変わり運命の匂いがわからず攻めから逃げようとする受け。アホな受けがαにえっちな溺愛されます。 注意 無理やり 自慰 玩具 フェラ 中出し 何でもありな人向け 妊娠可能ですが、主人公は妊娠しません リバなし 無理やりだけど愛はある  ほぼエロ ストーリー薄め オメガバース独自設定あり

処理中です...