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名前を聞かれてからはカフェラテを持っていくたび、ひとことふたこと話し、季節をふたつ超えたころ仕事を終えた俺を待っていてくれた彼から
「初めて君を見ていいなと思って言葉を交わすたびに惹かれていった。
よければ俺と交際してくれないか。」
と告白された。
初めての両想いに有頂天になったことを覚えている。
その日のうちにマスターに報告してしまったほどだった。
付き合ってから彼に自分はαなんだと告げられ、それを言ってくれたということは番になることも視野にいれてくれているのかな……なんて考えちゃうこともあった。
俺は他のΩと違って美しくないから中身で勝負しようと料理も掃除も洗濯も家事というものは全て頑張った。
ただ付き合って1ヶ月になるころには歪みが生まれていた。
彼の家に呼び出されて料理を作って欲しいと言われていったんだけれど、
「ここのブランドの味噌じゃなきゃ味噌汁じゃない。
αの舌は肥えているんだ。
作り直せ。」
「ごめんなさい……でも300gで1,000円もする味噌なんてアルバイトの俺じゃ買えないよ」
「もういい、外で済ませてくる。」
と彼を不機嫌にさせてしまうことが多々あった。
彼に呼び出されて家に行ってもパジャマはシルクじゃなきゃだめ、洗剤はここのブランドじゃなきゃだめ、これはここのブランドと書かれたリストまで渡されこれらは全て俺が買っていた。
彼の物だし少し払って欲しいと頼んでも、
「なんで君の不出来な料理や拙い家事にそんなお金をなんで払わなきゃならない?」
と断られる始末。
やっと取り付けたデートを待ち合わせをしてから5時間待たされた挙句、大事な会社の仲間と飲み会にいくことにしたとドタキャンされたこともあった。
すきだと思いを伝えてもそう、としか返ってこない。
都合よく使われている気がして使用人のような気分になっていた。
付き合っても手を繋いだこともなく、どんどん自分が惨めになった。
それでも初めて付き合った人。
こんな自分と付き合ってくれた人なんだと必死に彼に合わせる。
もっとアピールしなきゃダメなのかなと思って一応薬は用意して、発情期に彼の家に行って彼に助けを求めた。
流石にΩのフェロモンにはαの彼は勝てないんじゃないかと思って。
αが、彼が欲しいと訴える身体。
全身を舐めるような熱が這っていく。
裸にカーディガンだけ羽織って彼を誘う。
「なんだ、その格好は。」
「ね、ねぇ、身体が苦しいの……。
助けて……?」
一瞬目を見開いた彼がこちらへやってくる。
「……何を盛っているんだ。」
俺のカーディガンのポケットに入れていた抑制薬を見つけ、無理やり口に押し込んで部屋に閉じ込められた。
薬が効いてきて、副作用の頭痛と気だるさとともに冷静になるころ頭の中はなんでなんでと疑問が湧くばかりだった。
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