1 / 47
main story
1
しおりを挟むside 縞
待っているの、運命を
探しているの、運命を
待っているの、愛する人を
探しているの、愛する人を
こんなドラマの告知CMが流れている。
「オメガバースのドラマだー!
この俳優アルファだしリアル~!」
「ほんとだよね!絶対観る!」
心底、くだらない。
オメガバースなんて当事者以外は娯楽だろうな。
Ω、俺の全てを縛りつけるもの。
穏やかなβ一家に俺は生を受けた。
近所でも評判の美男美女の夫婦の間に生まれた子どもだった。
でもその子どもは親に似ず、平凡な容姿だった。
可もなく、不可もなく、なんとも形容し難い容姿。
父も母もそんな俺を腫れ物のように扱った。
そして小学生のとき俺がΩだとわかると軽蔑の眼差しとともに寮のある学校へ押し込んだ。
俺は両親から捨てられたのだ。
実際それから今まで両親には会っていない。
ピシリ。
俺の心に、初めて罅の入る音がした。
そのときは平凡な容姿を恨んだ。
Ωというバースを恨んだ。
でも授業でαというバースとΩのバースだけに運命の番という切れない縁が芽生えるのだと教わり、愛が欲しかった俺はそれに憧れた。
Ωというバースも恨むべきものでもないと思えた。
運命を探す俺だけれど閉鎖された全寮制の学校に高校まで通っていたため、周りはβばかりで、αはおろか、Ωも俺ひとりだけだった。
今となってはそのおかげで普通にみんなと過ごすことができていたとわかったけれど。
そんな高校で一度だけ、俺は恋をした。
高校に編入という珍しい形で入ってきたβのひと。
ひとりしかいないΩで奇異の目に晒されていた俺に、いつも優しく、気さくに話しかけてくれる人だった。
誰にでも隔てなく接する人でもあったからいつも誰かかしら彼を囲んでいた。
高校卒業を間近に控えた3年生の冬、意を決してすきだと、付き合ってほしいと告白した。
玉砕覚悟だったけれど、どうしても伝えたかった。
返ってきたのはいい奴だと思うけれど、恋愛対象として見ることはできないというお断りを意味する言葉。
βの大半はβと付き合うのだからΩの俺を恋愛対象として見れないというのはなんだか納得できた。
仕方ないことで、気持ちを伝えることができただけでよかったんだと、そう言い聞かせて荷物を取りに教室に戻ったとき彼といつも彼を取り囲んでいる友人たちが集まってなにかを話しているのを見た。
おかしそうに、楽しそうに話す声のなか、俺は教室に入る勇気はなくてその集団から見えないように物陰に身を潜めてしまった。
「んでどーよ、告白だった?」
「あぁ、顔を真っ赤にさせてすきなんですって告ってきたよ。
断ったけれど。」
「あははっ、好意寄せられているのわかってて優しくしてたんだろ?
ひでーやつー!」
「Ωって綺麗な顔の奴が多いんだろ?
でもあいつ平凡じゃん、別によくね?
優しくしてたのはΩってバースがどんなんか知りたかっただけだし。
そもそも鏡見てから告白しろって話だろ。
一時の甘い夢を見させてやったんだしむしろ感謝してほしいくらいだよ。
まぁ、Ωはめんどくさそうだなってことが今回の収穫かな。」
「お前かわいい彼女いるしな。
いやぁ、イケメンは羨ましいぜ、ちくしょう!」
「うっせー!」
ぎゃはははっと笑い声が聞こえるなか溢れそうになる涙を血が出るほど唇を噛んで耐えた。
427
お気に入りに追加
497
あなたにおすすめの小説
君は俺の光
もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】
ヤンデレです。
受けが不憫です。
虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。
もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。
ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。
結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを―――――
明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。
完結⭐︎キツネの嫁入り
66
BL
後宮もの、18禁、オメガバース、ヤンデレ
扉絵はなつさ様Twitter(@reona0598)にかいていただきました♡あちは様@gwvjjjtありがとうございます♡
隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
僕のおにいは世界一!
柴傘
BL
藤原 碧(ふじわら あおい)と藤原 真澄(ふじわら ますみ)は、血の繋がっていない義理の兄弟。
弟である碧は兄である真澄への好意を隠してはいるが、ダダ漏れ状態でモロバレ。真澄も碧の事は憎からず思って入るものの、歳下であり一応戸籍上の弟である碧に手を出すのは、という倫理観から手は一切出さずにいた。
然しある日、飲み会帰りの真澄は珍しく深酒をしたようで酔っ払っていた。これ幸いとばかりに碧は真澄を誘惑して…。
義兄×義弟、オメガバース。オメガバ要素薄め。
途中妊娠描写あり、相変わらず頭よわよわハッピーエンド
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる