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禁忌に手を出す
遺体回収
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その日の夜。
私は教会の遺体安置所にやって来た。
教会の遺体安置所には最近亡くなった方々が安置される施設だ。本当に亡くなったのか、一定期間様子を見るために遺体が安置される。もしかしたら神の情けによりあの世から蘇っているくるかもしれないからだ。
死後数日しか経っておらず、まだ葬儀がとり行われていないグスタフの遺体は、ここ遺体安置所に保管されているはずな。
グスタフを蘇生するためには彼の体が必要だった。
私のほかにお父様も一緒だった。そしてお父様の弟子の一人のベンノさんも。
ベンノさんはお父様の熱心なお弟子の一人。中肉中背の中年のおじさん。私より一回りふた回りも年上だった。昔からお父様が面倒を見てあげていた。私も小さい頃からベンノさんを知っており、仲良くしてもらっていた。
ベンノさんはお父様に恩を感じているらしく、お父様に忠実で何でも言うこと聞いてくれる。お手伝いとしてベンノさんについてきてもらっていた。
教会の遺体安置所からグスタフの遺体を運び出すためには人手が必要だからだ。なので、ベンノさんには布で作られた担架を持ってきてもらっていた。
「こっちだ」
教会の司教であるお父様が案内してくれる。お父様は遺体が何処に安置されているのか知っているようだった。教会の司教として遺体安置所には何度か訪れているようだった。
私は聖女として傷ついた人たちを癒やして回っていたので遺体安置所に入ったことはなかった。生きている人達を助けることに必死だったからだ。
グスタフが亡くなってからも遺体安置所に入ろうとは私は思えなかった。グスタフの死に向き合うことになってしまうからだ。
しかし、今は違う。私の手には禁術があるから。この術を使えばもう一度グスタフと一緒に暮らすことができる。素敵な日々が戻ってくる。
お父様の後ろをついていくとグスタフが豪華な装飾を施された台座に横たわっていた。グスタフの周りには白い花が飾られていた。
両手を胸のうえで組んだグスタフは穏やかな表情をしていた。まるで眠っているみたいに。
「彼は聖女を守った英雄として丁重に扱われている。魔法で防腐処理も施されているため綺麗なものだろう」
お父様が説明してくれた。
「……そうなのですね」
ドラゴンに食いちぎられた胴体と脚も綺麗に縫い合わされているようだった。死んでいることが信じられないほどキレイな身体になっていた。
私はグスタフの近くに立って、彼の頬に手を当てた。彼の頬はとても冷たく、氷のようだった。命の火が消えた抜け殻。
「もうすぐ会えるからね」
私はグスタフに優しくキスをし。やっぱりとても冷たい。
私はお父様をちらりと見た。
「ベンノ、運びだすぞ」
お父様がベンノさんに声をかけた。ベンノさんは持ってきた担架を床に広げた。お父様とベンノさんはグスタフのそばに立った。
「3、2、1」
お父様とベンノさんが声を揃えて、グスタフの遺体を持ち上げた。そして床に置いた担架にゆっくりとおろした。
お父様とベンノさんはとても慎重にグスタフの遺体を扱ってくれた。
私は周囲を警戒しながら、二人の様子を見守っていた。グスタフの遺体を持ち帰ることを他人にバレてはいけない。もし見つかればグスタフを蘇らせる計画は失敗に終わってしまう。
私達3人を担架でグスタフを運びながら遺体安置所を後にした。
私達の姿を見た人は誰もいなかったと思う。
○
教会の近くに用意していた馬車にグスタフを乗せた。ベンノさんが御者台に上り、私とお父様、そしてグスタフは馬車の座席に乗り込んだ。
ベンノさんが鞭をうち、馬車は静かに歩き出した。
私達が目指すのはお父様の別荘だ。なぜなら、グスタフは死んだことになっている。いや、実際に死んでしまった。グスタフの姿を知る者が多いこの街で彼を蘇生させることはできない。蘇生したあとのグスタフを見られてしまったら、禁術の使用を知られてしまうためだ。
グスタフの姿を知るものが少ない別荘地にいけば、その問題を回避できる可能性が高い。
私達を乗せた馬車は街をでて街道を走る。
夜の暗闇に紛れて進む馬車。外を見ると夜空に星がまたたいていた。私達の行動をみるのは星たちだけ。
私は隣に座らせたグスタフを眺めた。
――もうすぐ目覚めさせてあげるからね。
これからの生活を想像して、笑みが溢れてしまった。
私は教会の遺体安置所にやって来た。
教会の遺体安置所には最近亡くなった方々が安置される施設だ。本当に亡くなったのか、一定期間様子を見るために遺体が安置される。もしかしたら神の情けによりあの世から蘇っているくるかもしれないからだ。
死後数日しか経っておらず、まだ葬儀がとり行われていないグスタフの遺体は、ここ遺体安置所に保管されているはずな。
グスタフを蘇生するためには彼の体が必要だった。
私のほかにお父様も一緒だった。そしてお父様の弟子の一人のベンノさんも。
ベンノさんはお父様の熱心なお弟子の一人。中肉中背の中年のおじさん。私より一回りふた回りも年上だった。昔からお父様が面倒を見てあげていた。私も小さい頃からベンノさんを知っており、仲良くしてもらっていた。
ベンノさんはお父様に恩を感じているらしく、お父様に忠実で何でも言うこと聞いてくれる。お手伝いとしてベンノさんについてきてもらっていた。
教会の遺体安置所からグスタフの遺体を運び出すためには人手が必要だからだ。なので、ベンノさんには布で作られた担架を持ってきてもらっていた。
「こっちだ」
教会の司教であるお父様が案内してくれる。お父様は遺体が何処に安置されているのか知っているようだった。教会の司教として遺体安置所には何度か訪れているようだった。
私は聖女として傷ついた人たちを癒やして回っていたので遺体安置所に入ったことはなかった。生きている人達を助けることに必死だったからだ。
グスタフが亡くなってからも遺体安置所に入ろうとは私は思えなかった。グスタフの死に向き合うことになってしまうからだ。
しかし、今は違う。私の手には禁術があるから。この術を使えばもう一度グスタフと一緒に暮らすことができる。素敵な日々が戻ってくる。
お父様の後ろをついていくとグスタフが豪華な装飾を施された台座に横たわっていた。グスタフの周りには白い花が飾られていた。
両手を胸のうえで組んだグスタフは穏やかな表情をしていた。まるで眠っているみたいに。
「彼は聖女を守った英雄として丁重に扱われている。魔法で防腐処理も施されているため綺麗なものだろう」
お父様が説明してくれた。
「……そうなのですね」
ドラゴンに食いちぎられた胴体と脚も綺麗に縫い合わされているようだった。死んでいることが信じられないほどキレイな身体になっていた。
私はグスタフの近くに立って、彼の頬に手を当てた。彼の頬はとても冷たく、氷のようだった。命の火が消えた抜け殻。
「もうすぐ会えるからね」
私はグスタフに優しくキスをし。やっぱりとても冷たい。
私はお父様をちらりと見た。
「ベンノ、運びだすぞ」
お父様がベンノさんに声をかけた。ベンノさんは持ってきた担架を床に広げた。お父様とベンノさんはグスタフのそばに立った。
「3、2、1」
お父様とベンノさんが声を揃えて、グスタフの遺体を持ち上げた。そして床に置いた担架にゆっくりとおろした。
お父様とベンノさんはとても慎重にグスタフの遺体を扱ってくれた。
私は周囲を警戒しながら、二人の様子を見守っていた。グスタフの遺体を持ち帰ることを他人にバレてはいけない。もし見つかればグスタフを蘇らせる計画は失敗に終わってしまう。
私達3人を担架でグスタフを運びながら遺体安置所を後にした。
私達の姿を見た人は誰もいなかったと思う。
○
教会の近くに用意していた馬車にグスタフを乗せた。ベンノさんが御者台に上り、私とお父様、そしてグスタフは馬車の座席に乗り込んだ。
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グスタフの姿を知るものが少ない別荘地にいけば、その問題を回避できる可能性が高い。
私達を乗せた馬車は街をでて街道を走る。
夜の暗闇に紛れて進む馬車。外を見ると夜空に星がまたたいていた。私達の行動をみるのは星たちだけ。
私は隣に座らせたグスタフを眺めた。
――もうすぐ目覚めさせてあげるからね。
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