混沌の刻へ

風城国子智

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 同じ頃、ハルはアルリネットの神殿に居た。
〈……やっぱりな〉
 閉じ込められた場所で見つけた壁画を、昼の光でもう一度まじまじと見つめ、大きな溜息をつく。
〈母者の、言う通り、か〉
 壁画に描かれていたのは、アルリネット神が全ての神々を産み落とす姿と、その神々をスーヴァルドが支配しようとする様。ルディテレスの神殺しも、ありありと描かれている。勿論、ここはアルリネットの神殿だ。崇める神に不利なことは描かれていないだろう。だが、何となく、ハルはここに描かれていることが正しいと感じていた。
 これをヴァリスに見せたらどう言うだろうか。ふと、そんなことを考える。おそらく、狭量なヴァリスは全力で否定するだろう。ま、ジェイやティアにも見せたところでどうにもならない。当面は自分の胸に仕舞っておこう。ハルは一人頷くと、問題の壁画からそっと、離れた。
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