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還る期節に

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 前触れは、全く無かった。
 気付いた時には、フィンの魂は、宿っていたはずのグレンの胸から去ってしまって、いた。
 理不尽な理由で無残に殺されたフィン。そのフィンの、魂だけでも。そう念じながら走った冷たい大地を覚えている。やっと見つけたフィンの魂と共に、グレンは生まれ育った故郷を離れ、仲間を見つけ、新しい生活を始めた。そのことに、フィンは安心したのだろう。それでも。
 俯いて、涙を堪える。目に映った小さな芽吹きに、グレンははっと胸を突かれた。そう。もう、春。だからフィンは、グレンの元を去った。……新しい命として、生まれ変わるために。だから。
「いつでも、戻ってきて良いよ」
 虚空を見上げ、グレンはそっと、呟いた。
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