白と白と

風城国子智

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雲とは異なる白

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 冬空に浮かぶ大きな白に、一瞬、足が止まる。
 空の青に紛れた山肌と、その上に乗っている雪の白は紛れもなく、写真や、新幹線の車窓の向こうに何度も見ている『富士山』の形。空中に浮かんでいるように見える秀峰は、写真よりも雄大。
 富士山、こんなに大きかったのか? 急な傾きを持つ坂道を滑るように降りていく自転車の乾いた風を頬に感じながら、小さく首を傾げる。こんなに大きな山なのに、これまで、この場所で、富士山を見た覚えがない。自転車で坂道を降りていく学生服が、普段通り視界を横切る。この、東京の西の街に暮らすようになって、十一ヶ月。この街で富士山を見たのは、これが初めて。記憶を辿り、唇を歪める。
 首を横にして見えたのは、『富士見坂』という坂の名称。
 坂の名前に、息を吐く。何故、これまで、富士山に気付かなかったのだろう? 雪が無い富士山の山腹は空の色と同じだから、気付かなかった。脳裏を過った結論に、微笑む。では何故、今になって、富士山に気付いた? 暦は既に二月。富士山の山頂なら、雪は初冬には降り積もっているはず。
 自分の中にある別の結論を、そっと振り払う。
 気だるい面持ちで坂を下りきると、富士山は、見えなくなった。
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