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はっと、目覚める。
いつも通りの天井の木目が、ダンを出迎えた。
ここは、現世の、自分の部屋。混乱する思考の中、それだけを、判断する。アキの魔法で、戻された。細かい震えを覚え、ダンは手近の布団を力一杯殴りつけた。
頭の上の時計は、午前七時を指している。起きて学校に行かなければ。のろのろと、ベッドの上に上半身を起こす。しかし、腰から下の温かさはどうしたのだろう? 羽根布団は、ベッドの横に落ちているのに。頭と肩の寒さに震えながら、ダンはそっと俯いた。
「ダンっ! 調子、良くなっ……あーっ!」
ミカの高い声が、ダンの耳をひっぱたく。
「アキっ! またダンの寝床に潜り込んでるっ!」
私もダンと一緒に寝たい。朝から困るミカの言葉に思考が真っ白になる。いくら幼馴染みとはいえ、ダンもミカも高校生、昔みたいに同じ布団で寝るわけにはいかない。……ではなく。騒ぐミカを無視し、ダンはもう一度、確かめるように、自分の腰の辺りを見下ろした。確かに、……いる。ミカが騒ぐ声で目覚めたのだろう、目を擦りながら上半身を起こしたかつての幼馴染みの、あの時代には絶対に無かったフリースのパジャマ姿に、ダンの口からは一言も出なかった。
「あらあら、二人ともお寝坊さんね」
ダンの横で騒ぐミカの後ろから、現世での母親の声が響く。
「早く起きないと、朝御飯抜きで学校に行くことになるわよ」
ダンとアキを見た母の声には、動揺など、全くみえない。前世の住人であるアキに違和感を持たないミカと母の言動に、ダンの頭は疑問符でいっぱいになった。
いつも通りの天井の木目が、ダンを出迎えた。
ここは、現世の、自分の部屋。混乱する思考の中、それだけを、判断する。アキの魔法で、戻された。細かい震えを覚え、ダンは手近の布団を力一杯殴りつけた。
頭の上の時計は、午前七時を指している。起きて学校に行かなければ。のろのろと、ベッドの上に上半身を起こす。しかし、腰から下の温かさはどうしたのだろう? 羽根布団は、ベッドの横に落ちているのに。頭と肩の寒さに震えながら、ダンはそっと俯いた。
「ダンっ! 調子、良くなっ……あーっ!」
ミカの高い声が、ダンの耳をひっぱたく。
「アキっ! またダンの寝床に潜り込んでるっ!」
私もダンと一緒に寝たい。朝から困るミカの言葉に思考が真っ白になる。いくら幼馴染みとはいえ、ダンもミカも高校生、昔みたいに同じ布団で寝るわけにはいかない。……ではなく。騒ぐミカを無視し、ダンはもう一度、確かめるように、自分の腰の辺りを見下ろした。確かに、……いる。ミカが騒ぐ声で目覚めたのだろう、目を擦りながら上半身を起こしたかつての幼馴染みの、あの時代には絶対に無かったフリースのパジャマ姿に、ダンの口からは一言も出なかった。
「あらあら、二人ともお寝坊さんね」
ダンの横で騒ぐミカの後ろから、現世での母親の声が響く。
「早く起きないと、朝御飯抜きで学校に行くことになるわよ」
ダンとアキを見た母の声には、動揺など、全くみえない。前世の住人であるアキに違和感を持たないミカと母の言動に、ダンの頭は疑問符でいっぱいになった。
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