Amethyst

風城国子智

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Amethyst 1

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 濃紫色に染まった部屋の床に、一つの影が倒れている。
 ふわりと広がった栗色の柔らかい髪が、影がまだ少女であることを告げていた。
「今回も、駄目だったか」
 動く気配すらない、少女の影を一瞥し、深い溜め息をつくのは、髪に少しだけ白髪の混じる、それでもまだ精悍そうな男。男はそのまま、傍らに置かれた、少女が飲んでまだ半分残っているワイングラスを手に取り、残っていた紫色の酒を飲み干した。
 多量の金貨と引き換えに男の許へとやって来た没落貴族の娘に、何の感情も湧かない。これは、呪いなのだ。その呪いを知っていて、それでも金に目が眩んだ少女の両親は可哀想な少女を男に売った。それだけの、話だ。
 それでも、……男を知らずに死んだ少女に、慈悲を掛けるくらいは良いだろう。
 男は少女の身体を抱き上げると、紫に染まった少女の唇に、自分の唇を重ねた。
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