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第七章 東の理
7.24 東雲の政と王配殿下
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一方、『王配』殿下については、悪い噂を聞かない。リーンハルトの配偶者と同じく南苑の王族出身で、東雲の先王の配偶者となってからは先王と共に政に参与していた。政に関するセンスは抜群で、現在の東雲が静穏なのは先王を助けた王配の力があったからだというのが、東雲に漂う雰囲気。王配がいれば東雲は安泰。だから、リーンハルトは王にならないのだろうか? 図書館に飾られていた先王と王配、そして王子達を描いたモザイク画を思い返す。人間は、いつか死ぬ。いつ死ぬか分からない人間にずっと頼ったままは、良くないのではないか。
「今の状態が良いことは分かっているのだが」
東雲の王政についてサシャが質問した時のグスタフ教授の渋面が、脳裏を過る。
「東雲に王がいないのは、やはり良くない。本来は既に権限を失っている『先王の王配』殿下に頼りきりであるのも、だ」
先王が亡くなっているのだから、現在東雲の政を補佐している先王の弟と契りを結べば、先王の王配殿下も新たな、政に関する強い地位を得ることができる。リーンハルトが王位を辞退すれば、先王の弟が即位し、先王の弟と契りを結んだ先王の王配殿下もきちんとした権限で以て政に参与できる。しかしながら、何故か、リーンハルトは王太子のままで、先王の王配殿下も今までの地位に留まったまま。先王の弟も先王の王配殿下も子供を産める年齢ではなく、たとえ無理に子供を産んだとしても命を落とす可能性が高いので、どちらかに必ず子供ができる『契りを結ぶ』という行為は避けた方が良いと、先王の弟も、先王の王配も考えたのだろう。それが、グスタフ教授がサシャに語った結論。
「では、何故、リーンハルト団長は王太子のままなのですか?」
「それは、……分からない」
トールの疑問そのままを口にしたサシャに、グスタフ教授が唸りながら首を横に振る。
「あいつの扱いにくさは、昔から、だったからな」
少年の頃のリーンハルトは、年下でまだ力が弱かった弟のヴィリバルトと、東雲でしばしば預かっていた従弟のアランをことあるごとに虐めていた。溜息をつくグスタフ教授の言葉に、トールの心が冷える。
「リーンがいる限り、無理だ」
帝都にいた頃、サシャを東雲に逃がすというグスタフの提案に答えたヴィリバルトの苛立った声を、不意に思い出す。ヴィリバルトがいっていた「リーン」は、おそらく、小さい頃のヴィリバルトを虐めていた兄リーンハルトを指していたのだろう。現在はどうであれ、過去に弱い者を虐めていたというのであれば、やはり、リーンハルトには関わらない方が良い。
「今の状態が良いことは分かっているのだが」
東雲の王政についてサシャが質問した時のグスタフ教授の渋面が、脳裏を過る。
「東雲に王がいないのは、やはり良くない。本来は既に権限を失っている『先王の王配』殿下に頼りきりであるのも、だ」
先王が亡くなっているのだから、現在東雲の政を補佐している先王の弟と契りを結べば、先王の王配殿下も新たな、政に関する強い地位を得ることができる。リーンハルトが王位を辞退すれば、先王の弟が即位し、先王の弟と契りを結んだ先王の王配殿下もきちんとした権限で以て政に参与できる。しかしながら、何故か、リーンハルトは王太子のままで、先王の王配殿下も今までの地位に留まったまま。先王の弟も先王の王配殿下も子供を産める年齢ではなく、たとえ無理に子供を産んだとしても命を落とす可能性が高いので、どちらかに必ず子供ができる『契りを結ぶ』という行為は避けた方が良いと、先王の弟も、先王の王配も考えたのだろう。それが、グスタフ教授がサシャに語った結論。
「では、何故、リーンハルト団長は王太子のままなのですか?」
「それは、……分からない」
トールの疑問そのままを口にしたサシャに、グスタフ教授が唸りながら首を横に振る。
「あいつの扱いにくさは、昔から、だったからな」
少年の頃のリーンハルトは、年下でまだ力が弱かった弟のヴィリバルトと、東雲でしばしば預かっていた従弟のアランをことあるごとに虐めていた。溜息をつくグスタフ教授の言葉に、トールの心が冷える。
「リーンがいる限り、無理だ」
帝都にいた頃、サシャを東雲に逃がすというグスタフの提案に答えたヴィリバルトの苛立った声を、不意に思い出す。ヴィリバルトがいっていた「リーン」は、おそらく、小さい頃のヴィリバルトを虐めていた兄リーンハルトを指していたのだろう。現在はどうであれ、過去に弱い者を虐めていたというのであれば、やはり、リーンハルトには関わらない方が良い。
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