瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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○月○日○曜日
お台場NBS本社12階 アナウンサー部

誰もいないフロアで、青野裕美は1人残業していた。明日の取材の準備だった。経費節減の為、この時間帯は1時間毎にフロア全体が消灯される。残って仕事をする場合には、もちろん各自で点灯させてよいのだが、裕美は自分の机のスタンドだけで仕事を続けていた。別に経費節減の為ではなかった。ただフロアの外の操作パネルまで行くのが面倒だったからだ。


裕美はスケジュールを一通り読み終えると、椅子の背に体を預けた。薄暗い天井を見上げながら、明日の取材の事を考える。

〝美女のシリアルナンバー〝

裕美がこの事件のレポーターに選出されたのは、半年程前の事だった。

入社2年目ながら、日曜日の朝に放送されているバラエティ番組゛サンデーワールド゛の司会などでも人気、評価は上々で、裕美は既にNBSの看板アナの1人としての地位を確立しつつあった。
母校のミスキャンパス他、様々なミスコンで優勝経験のある裕美の実績は伊達ではなかった。170センチ以上のモデル並のスタイルに加え、類希な容姿は、他局の先輩人気アナ達を圧倒した。

〝美女のシリアルナンバー〝の取材、
レポートに関しても、視聴者の評判は
上々で、黒のスーツ姿で希に見る凶悪犯罪をレポートする彼女の凛とした雰囲気は、新たなファン層を獲得していった。

一方、裕美の身に危険が及ぶ事を心配する声も多かった。被害者は飛び抜けて美しい女性ばかりの為、ただでさえ最近メジャーになった裕美は、ターゲットとなる可能性が高いと思われた。実際、犠牲となった女優やグラビアアイドルも何人か出ており、有名人といえど、、例外ではなかった。
そんな中、この事件のレポーターになるという事は、ますます犯人を刺激してしまう事になりかねない。

だが、裕美はあえてこの仕事を受けた。それはもちろん、自分自身の更なる飛躍の為だった。

それから半年。。

レポートは続けられている。だが、依然犯人の手がかりはない。゛美女のシリアルナンバー゛の話題は、半年経っても一向に落ち着く事もなく、もはや社会現象となっていた。

裕美は、サイドデスクに置かれた写真週間紙を開いた。

美女のシリアルナンバー 〝生け贄〝青野裕美の誤算!?

記事の内容は、半年間、裕美が襲われなかった事に関する様々な憶測だった。しかも、話題作りの為取材中に裕美が襲われる事を期待して、NBSが裕美を起用したとまで書かれていた。



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