瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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【第4部 番外:美女のシリアルナンバー事件編】 1人目の犠牲者

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○月○日○曜日 
神奈川県横浜市  

その夜、遅くまで学校に残っていた嶋田百合子は、1人、自宅に向かって急いでいた。

百合子の通っている私立聖華学園高等部は、文化祭まであと1週間と迫っていた。生徒会副会長でありながら、文化祭実行委員長も兼任している百合子は、その準備で多忙を極めていた。本来は硬式テニス部に所属している彼女だが、文化祭が終わるまでは、準備に専念する為、部活は休部扱いにしてあった。
だが、それでも準備する事は山の様にあり、連日遅くまで学校に残っていなければならなかった。

本来であれば、一緒に準備で残っていた他の生徒達と、先生に車で家まで送ってもらう筈だった。
しかし、毎週観ている連続ドラマの録画予約を忘れた事に気づき、百合子は先生が車を取りに行っている間に1人で学校を出た。暗い夜道を1人で帰るのは抵抗があったが、他の生徒の家を順番に回っていては、ドラマに間に合わない。それに、残っていた生徒の中で一番遠くに住んでいる百合子は、送ってもらう事自体にも気が引けた。

凶悪犯罪の多発する昨今、生徒の登下校時の安全確保についてはどこの学校も力を入れている。当然聖華学園も例外ではなく、生徒会役員の百合子も推進に取り組んできた。その彼女が、不用心にもこんな夜遅くに単独で下校したとあっては、本来他の生徒に示しがつかない。
そもそも、先生が家まで送る事を条件に、一般の生徒が夜9時、実行委員が10時までの居残りを、文化祭までの期間限定で学園側に許可する様提案したのは、他ならぬ百合子自身だった。
先生には明日小言を食らうかもしれないが、まあ何とか言い訳をすれば大丈夫だろう。まさか、ドラマが観たかったからなどとは言えまいが。

最寄駅までは、問題なく無事に到着した。もともと、学園から駅に向かうとほんの2~3分程度で駅前商店街に出る為、比較的夜でも人通りは多く、この区間には実質危険な場所はほとんどなかった。

百合子は商店街を走り抜けると、駅前のロータリーに出た。今日初めて腕にはめてきた、買ったばかりのベビーGに目をやる。丁度電車の来る時間だ。

〝急げば間に合う!〝

百合子は駅に駆け込み、一気に改札口を通ってホームに出ると、目の前に到着している電車のドアに飛び込んだ。

〝ふう~間に合った〝

一息入れると、車内の乗客が一斉にこちらを見ているのに気付いた。
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