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学食にて
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午後2時過ぎ。
昼休みの喧騒から平穏を取り戻した学食の角で、3人の女の子達が広いテーブルの端に固まって座りながら、ジュースを飲んでいた。そのテーブルは彼女達が所属するテニスサークルの溜まり場だったが、、たまたま休講になった彼女達以外、今は誰も来ていない。
「ねえねえ、聞いた?」
静まり返った学食に響く声を意識してか、3人の中の長い髪の子が声をひそめながら話を切り出す。
「Eクラスの久住晃子が、例の焼き印を押されたって話。」
「ええ~っ!マジで?
じゃ、やっぱり美女のシリアルナンバーって本当の話だったんだ。」
正面に座っている帽子を被っている子が反応すると、横のショートの子が腕組みをしながら頷いた。
「そうだよね~彼女、今年の学祭でミスコンやってれば優勝間違いないと言われてたもんね。」
「そうそう。シリアルナンバーの話が社会問題になっちゃったから、ミスコン自粛しちゃったけどさ。」
と、長い髪の子が話を続けた。
「それで、いつ?何処でやられたの?」
ショートカットの子は興味津々といった様子だ。
「先週の土曜日の夜だって。サークルの飲み会の帰りに自分の家のすぐ近くでいきなり襲われたみたい。怖いよね~」
髪の長い子は、話しながら怯えた表情を浮かべた。
「警察には知らせたんでしょ?犯人はやっぱり分からないのかな。」
「背後からいきなり襲われた上に、頭に袋を被せられて犯人の姿は見てないらしいし、目撃者もいないみたい。模倣犯による事件も多発してるし、捕まえるのは難しそうだよね。」
話を聞きながらまたジュースを1口飲むショートカットの子。ふと顔を上げた彼女は、学食の入口のドアを開けて入ってくる1人の女の姿に気づいた。
「ちょっと!あれ、久住晃子じゃない?」
他の2人もすぐに振り返ってその女を見た。それは紛れもなく彼女だった。
晃子は、赤いセーターに白いミニスカートでゆっくりと彼女達のいる場所とは反対の方に歩いていった。
「ふーん。数日前に通り魔に襲われたにしては、意外と元気そうだね。」
ショートカットの子は意外そうな顔をして、髪の長い子に話しかけた。
「それがね。本人はちょっと喜んでるって噂だよ。」
「うそ~っ!だって、跡だって消えないんでしょ?」
「うん。かなり深い傷になっちゃうみたいだね。ただ、美容整形すれば消えないこともないみたいだけど。。
でもね、久住晃子はあえて傷を消さないって言ってるらしいよ。」
髪の長い子は、久住晃子を横目で見ながら声を潜めた。
「彼女、学内のミスコンで優勝するより嬉しいって言ってるんだって。美女のシリアルナンバーは全国区だからって。。」
ショートカットの子は、口をとがらせて
「まあ、そりゃさ、超綺麗な子しか襲われない訳だし、お墨付きをもらった様なものだもんね。だから、わざわざあんなミニ履いてんのかね~」
と言った。その口調には皮肉が混じっていた。
3人が自分の噂話をしているとは知らない久住晃子は、軽快な足取りで歩き去っていった。
彼女の子鹿の様に細く美しい足、そのミニスカートから覗く右の太股には包帯が巻かれていた。
昼休みの喧騒から平穏を取り戻した学食の角で、3人の女の子達が広いテーブルの端に固まって座りながら、ジュースを飲んでいた。そのテーブルは彼女達が所属するテニスサークルの溜まり場だったが、、たまたま休講になった彼女達以外、今は誰も来ていない。
「ねえねえ、聞いた?」
静まり返った学食に響く声を意識してか、3人の中の長い髪の子が声をひそめながら話を切り出す。
「Eクラスの久住晃子が、例の焼き印を押されたって話。」
「ええ~っ!マジで?
じゃ、やっぱり美女のシリアルナンバーって本当の話だったんだ。」
正面に座っている帽子を被っている子が反応すると、横のショートの子が腕組みをしながら頷いた。
「そうだよね~彼女、今年の学祭でミスコンやってれば優勝間違いないと言われてたもんね。」
「そうそう。シリアルナンバーの話が社会問題になっちゃったから、ミスコン自粛しちゃったけどさ。」
と、長い髪の子が話を続けた。
「それで、いつ?何処でやられたの?」
ショートカットの子は興味津々といった様子だ。
「先週の土曜日の夜だって。サークルの飲み会の帰りに自分の家のすぐ近くでいきなり襲われたみたい。怖いよね~」
髪の長い子は、話しながら怯えた表情を浮かべた。
「警察には知らせたんでしょ?犯人はやっぱり分からないのかな。」
「背後からいきなり襲われた上に、頭に袋を被せられて犯人の姿は見てないらしいし、目撃者もいないみたい。模倣犯による事件も多発してるし、捕まえるのは難しそうだよね。」
話を聞きながらまたジュースを1口飲むショートカットの子。ふと顔を上げた彼女は、学食の入口のドアを開けて入ってくる1人の女の姿に気づいた。
「ちょっと!あれ、久住晃子じゃない?」
他の2人もすぐに振り返ってその女を見た。それは紛れもなく彼女だった。
晃子は、赤いセーターに白いミニスカートでゆっくりと彼女達のいる場所とは反対の方に歩いていった。
「ふーん。数日前に通り魔に襲われたにしては、意外と元気そうだね。」
ショートカットの子は意外そうな顔をして、髪の長い子に話しかけた。
「それがね。本人はちょっと喜んでるって噂だよ。」
「うそ~っ!だって、跡だって消えないんでしょ?」
「うん。かなり深い傷になっちゃうみたいだね。ただ、美容整形すれば消えないこともないみたいだけど。。
でもね、久住晃子はあえて傷を消さないって言ってるらしいよ。」
髪の長い子は、久住晃子を横目で見ながら声を潜めた。
「彼女、学内のミスコンで優勝するより嬉しいって言ってるんだって。美女のシリアルナンバーは全国区だからって。。」
ショートカットの子は、口をとがらせて
「まあ、そりゃさ、超綺麗な子しか襲われない訳だし、お墨付きをもらった様なものだもんね。だから、わざわざあんなミニ履いてんのかね~」
と言った。その口調には皮肉が混じっていた。
3人が自分の噂話をしているとは知らない久住晃子は、軽快な足取りで歩き去っていった。
彼女の子鹿の様に細く美しい足、そのミニスカートから覗く右の太股には包帯が巻かれていた。
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