瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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月収500万円の痛み

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美波は、先程の幽霊話が、アキラの美波に対する精神的な揺さぶりである事は分かっていた。アキラは、自分にとって美波などたくさんの女の中の1人だという事を改めて強調したのだ。

゛石垣島という魅力的な南海の離島に連れてきてもらったからと言って、勘違いするなよ゛と、アキラの背中が美波に話しかけている様だった。

美波の耳の後ろや首筋が、ズキズキと痛んだ。どうしようもない孤独感が闇と一緒に美波の両肩に覆い被さってくる。

この精神的な落ち込みが、今夜の苦痛をより辛いものにするに違いない。

悔しい。。

アキラの思うツボだった。

〝NaturalFace〝の長期デリバリー制度を利用したアキラに、キャストの1人として1年間、月収500万円で彼の所有物になる契約をしただけだ。彼との間に特別な感情など芽生える筈もないのに。。

いつの間にか、何かの変化を期待する様になっていた自分が情けない。
アキラは、そんな美波の心理を逆撫でするかの様に、淡々と歩き続けた。

チェックインを済ませた2人は、ホテルに一部屋しかないロイヤルスイートに案内された。広くて豪華な部屋だった。
海側の壁にはまっている大きなガラス窓と電動式のカーテン。大きなベッドが2つ。部屋の隅には小さなバーカウンターまであった。

広い部屋の真ん中に立ち尽くす美波をアキラが後ろから抱きしめる。いきなり拘束されるかと思い、一瞬身を強ばらせた美波の肩を、アキラは優しく撫でた。

「さあ、もう一度町に、今度は飯を食いに行こう。」

ホッとした美波は、アキラの方を向いて言った。

「このホテルでお食事するのかと思ったわ。」

アキラは、ニコリと優しく笑いながら頷いた。ついさっき美波を精神的に追い込もうとしていた時とは、別人の様だ。

「私もそのつもりだったんだけどね。ここのフレンチはかなり美味いから。でも、せっかく沖縄に来たんだから、郷土料理の方がいいかな、と思ってね。どうかな。」

美波は微笑みながら頷き返した。

「うん。そっちの方が楽しそう。私にとっては初めての石垣島だし。。」

美波は、アキラの意図を読み倦ねていたが、とりあえず彼の意見に賛成した。
街中まで食事にいけば、それだけで数時間はかかるだろう。その分今夜の゛責め゛のスタートが遅くなるなら、それだけでも有り難かった。


2人は再びホテルを出ると、車で街に向かった。
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