瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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ラストイリュージョン

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「いいのよ。ただ、仮にもこの道の第1人者の私を捕まえて、成功する自信がない、
と言わせるのは、ちょっとキツい注文よね。ただ。。」

「いくら偉そうな事を言っても、実際には、今回私は失敗するんだから説得力はないけれど。」

マシーンを見上げて目を細めた和葉。その目の奥に、少し残念そうな色が浮かんだのを
摩耶は見逃さなかった。

「そのことなんですが。よろしければ少し演出を変更しませんか?」

「どういう事?」

「今回の公演は、今日と明日の計2回の予定ですよね?」

摩耶の言う通りだった。
実際には、今日事故を起こす事なる為1回しか公演されないが、本来は2日間の予定
となっていた。

毎年、マジックマウンテン での公演はビッグイベントとなっており、2日間、多い時は3日間の公演となる事もあった。
通常、脱出ショーは1回なのだが、主催者側の強い要望もあり、リスクを覚悟でこなしてきたのだった。

摩耶は、静かに和葉に近づいた。
間近で見る摩耶の瞳に思わず吸い込まれそうになる。

「和葉様は、今回が最後のイリュージョンになるご覚悟で、それに相応しいこのマシーンを選ばれた。
言い換えれば、最後であろうとなかろうと、内容は文句なしに過去最高のクォリティだという事になります。

そのイリュージョンを、1回も成功させないで終わらせて、和葉様は本当に悔いはありませんか。せっかく2回のチャンスがある訳ですから、1度目をまともにトライして、成功させてはいかがでしょうか。というご提案でございます。」

「で、でも。。マシーンにはもう私が細工を。。」

和葉が戸惑いながら摩耶を見ると、何やら悪戯っぽい笑みを浮かべている。
完璧な美しさから一転、同性の和葉でさえ体中の力が抜けてしまう程の可愛さに
変貌した彼女には、恐ろしささえ感じた。

「実はもう、我々のスタッフが、和葉さんが壊した部分を修理しておりまして、
状態は完璧に仕上がっております。」

摩耶のこの話を聞いて、和葉は摩耶の提案を受け入れざるを得なかった。














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