瞳の奥の漁火～女をいたぶる狂気の女～

リアル

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そしてとうとう１ヶ月が経過した。
ある晩、奈緒美は自分の掲示板に加虐の天使への思いを書き込んだ。この数週間、毎晩同じようにしてきたが、この日まで加虐の天使からのレスはなかった。

奈緒美は、自分の左の太股の丸い跡をそっと撫でた。触れるだけで激しく痛む。
それは今日の昼休み、トイレでティースプーンをライターで炙って焼き、太股に押しつけた時の火傷の跡だった。

奈緒美は自分の傷だらけの太股を見つめた。ジワりと目に涙が溜まり、やがてポタポタと太股の上にこぼれ落ちた。

これからどうすればよいのだろう。
今までなら、自分で自虐していればそれなりに満足できた。しかし、ネットを介しているとはいえ、他人に責められる悦びを知ってしまった奈緒美は、今までの様にはいかなかった。

もう自分で自分の足を傷つけても、むなしいだけだった。
こんなに辛い思いをするなら、加虐の天使のリアルの申し出を受けておけばよかった。

例え大怪我させられようとも、騙されてレイプされたとしても、今の状態よりはずっとマシだと思った。

自分を裏切った加虐の天使を恨んだ。
自分がリアルを断ったから、捨てたのか。。

いや、そもそもあんなＨＰなんかに真摯にアクセスしてくる男なんているわけがなかったのかもしれない。ましてや、自分の足をいたぶられる事に憧れる奈緒美の様な女など、ただの変態にしかみられなかったに違いない。
見も知らない男とチャットしただけで、心が繋がった様な気になっていた自分が馬鹿だっただけた。

奈緒美は哀しい気持ちになって、テーブルに顔を埋めた。

゛お願い。。もう一度来て。。私を助けて。。気が狂う程いたぶって。。お願い。。゛

゛カタカタカタ゛

何かが打ち込まれる様な音がした。いや、実際にはそんな気がしただけだったのかもしれない。

奈緒美は、涙でグッショリ塗れた顔を上げた。画面を更新すると、掲示板の一番上に、１行の文字が書き込まれていた。


そこにはこう書かれていた。


゛リアルなら。。゛

奈緒美にはもう、この申し出を断る事は出来なかった。