瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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リアル

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数日後、奈緒美は加虐の天使に、痛みの絶頂時に見えた亀裂の向こうの光について、尋ねてみた。彼なら、あれが何なのか分かるかもしれないと思ったからだ。
いつもと同じ、奈緒美のホームページのチャットルームでの会話だ。

加虐の天使は、その亀裂の向こうに何があるのか、それは他人に訊くべきではなく、奈緒美自身で確認しなければならないと答えた。

奈緒美は、彼が全て分かった上で言っているだろう事は理解していた。

加虐の天使は、今までよりももっと激しい苦痛を味わえば、その亀裂はさらに大きく開くだろうと言った。

それはつまり、加虐の天使からもっと過酷なお仕置きを受ける事を意味していた。更に厳しい自虐のメニューをこなさなければならないのだ。

奈緒美自身も、あの裂け目の向こうを覗いてみたかった。
だが、自分が今よりも厳しいメニューを消化出来るとは思えなかった。

もっともっとキツく足を責められ、頭がおかしくなる程の痛みを味わう。。
それは、少女時代からの奈緒美の切ない思いだった。願望が満たされず、疼く体が辛くて泣き続けた夜が、何度あった事だろう。
今でこそ、こうして第三者にネットを介して責められる様になり、幾分かは満たされる様になった。しかし、所詮は自虐なのだ。我慢の限界を越えた痛みを自分に与えるなど、到底耐えられない。

それはつまり。。

奈緒美があの亀裂の向こう側を覗く事が極めて困難である事を意味した。

奈緒美は悲しくなってキーボードを叩いた。

゛自分では出来ません。これ以上は。。゛

すると、加虐の天使はすぐに返事を返してきた。

画面を見た奈緒美は、思わず息を飲んだ。そこには、こう書かれていた。

゛では、リアルで仕置きを受けなさい゛

ついに来た・・
加虐の天使からのリアルへの誘い。

他の者であれば、迷うことなく断り、二度とチャットをしないところだ。
事実、ちょっとばかりチャットで盛り上がっただけですぐにリアルの話をする男は多かった。奈緒美はそういう男達はことごとく切ってきた。

だが、相手は加虐の天使だ。奈緒美の心は正直揺れ動いた。

しかし。。

素性が分からないという点では、彼も他の男と変わらなかった。いや、筋がね入りのSなのだ。かえって危ないと言ってもいい。

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