瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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21球目

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20球目を打ち出すと、マシンは何事もなかったかの様に動きを止め、静かになった。

同時に、礼子も最後に大きな悲鳴を上げると、グッタリと動かなくなった。

摩耶は中に入り、彼女に近づいた。

「礼子。。よく頑張ったわね。あと1球よ。
ねえ、礼子、聞いてる?礼子!」

摩耶は礼子に話しかけたが、礼子は無反応だった。

「人が話しかけてんだから、返事ぐらいしなさいよっ!」


摩耶は側にあった金属バットを掴むと、さんざん痛めつけられた礼子の太股を力一杯殴った。

「うぎゃぁぁぁぁ~っ!痛いぃ~っ!」


意識が朦朧としていた礼子は、あまりの痛さに目を覚まし、絞り出すような叫び声を上げた。


「何だ。まだ十分元気じゃないの。これで最後の1球が楽しみになってきたわ。」


「摩耶、お、お願い。もう許して。これ以上無理だよ。痛い。。足がもの凄く痛いの。。骨が折れてるかも。。」


礼子は泣きながら摩耶に訴えた。


「バカね。あなたはその柔らかいネットに縛られているから、衝撃はかなり吸収されて、ボールの威力は半減されてんのよ。そんな事も分からないの。骨なんか折れてるわけないでしょ。甘っちょろい事言ってんじゃないわよ。」

摩耶は、礼子に罵声を飛ばした。
そして、彼女の恐怖心を煽る様に、わざと強い口調で話を続けた。

「そう、そんなに骨を折って欲しいなら、望み通りにしてあげるわ。もともと21球目は、最後の1球は、その為に用意したんだからね。」


摩耶は残忍な笑みを浮かべると、コインを投入し、ボタンを押した。そのボタンには、140キロと書かれていた。

礼子の顔に再び恐怖の色が浮かぶ。

「い、嫌。。やめて!」

摩耶は怯える礼子に近づくと、彼女の足元に腹ばいになって横たわった。
そして、礼子の右足のふくらはぎにしっかりとしがみついた。

礼子は摩耶行動の意図が分からず、震える声で訊いた。

「なっ、何をする気なの?  や、やめてよ!」


「フフフッ!せっかく球速を140キロに上げたのに、衝撃が吸収されて威力が緩和されちゃ面白くないでしょ。だから、こうしてあなたの足を固定するのよ。」

礼子は目を見開いてスイッチの方を見ると、顔色を変えてすぐに足元の摩耶を見た。

「い、いや!やめて、お願い!足が壊れちゃう!」

「ごめんね、礼子。でも、こんな楽しいこと絶対やめられないわ。分かってね。」

そう言うと、摩耶は更に礼子の足に強くしがみついた。

礼子は、自分の右足が全く動かせなくなった事にパニック状態になり、マシンが間もなくボールを打ち出そうとしている事に気づいていなかった。

「礼子、前を見なさいよ。そろそろ来るわよ。」





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