瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

文字の大きさ
上 下
243 / 424
苦痛のレベルを決めるのは。。

2

しおりを挟む
〝ドゴッ!〝

鈍い様な、それでいて室内に響く様な、独特の衝撃音がして、硬球が礼子の剥き出しの太股を襲った。

「あうっ!い、痛いっ!」

礼子は声を出しながらも、歯を食いしばって激痛に耐えていた。

〝なかなか楽しませてくれるじゃないの〝

摩耶は、予想以上に頑張る礼子に感心すると同時に、楽しみを増やしてくれた彼女に感謝した。

「しかし、あなたもバカよね。」

「え?」

摩耶の方を振り向いた礼子に、2発目の硬球がヒットした。

〝ドスッ!〝

「ああぁぁ~っ!痛いっ!。。ハアハア、痛い。。痛いよ。。」

一瞬摩耶に注意を向け、身構えるのが遅れた礼子への、この2発目は、かなり堪えたらしい。

一瞬にして、彼女の顔から強気の表情が薄れていく。


「こんな目に遭ってまで好きな男をかばってさ。悲劇のヒロイン気取って自分に酔いしれてんじゃないの?
こんな事しても、相手の男になんか、何も通じないのにさ。」


「そ、そんな事。。私はただ、彼に迷惑がかからなければそれでいいの。」

「お人好しだねえ。そんなだから、あんな男に都合のいい様に利用されんだよ。」

「し、知りもしないくせに、彼はそんな人じゃ・・」

摩耶に対して反論しかけた礼子に3発目が打ち出された。

「きゃあぁぁ~っ!痛い~っ!」

思わず悲鳴を上げる礼子。

そして、5発目まで打ち終えた時、摩耶は更に礼子に揺さぶりをかけた。

「私、知ってるんだあ。あいつが男友達に礼子の事何て言ってるかさ。私の知り合いがあいつと同じ高校でさ。ちょっと聞いてみたわけよ。あいつ、最低な奴だよね。
あなたの事、金づるとか、お人好しのアホとか言ってるらしいよ。」

「う、嘘よ!彼がそんな事いう筈ないわ。デタラメよ!」

礼子は即座に否定したが、明らかに動揺しているのが分かった。

「ほんと、お人好しだね。あいつは礼子の事なんか、ゴミ程度にしか思ってないんだよ。いい加減に分かりなさいよ。」

「やめてえ!もうそれ以上言わないで!」

礼子は泣き出しながら摩耶に叫んだ。

彼女の心の軸は、もう折れる寸前だった。

実際のところ、摩耶は礼子が思いを寄せる男とは全く面識はなかったし、彼女に話している事も、何の根拠もないデマだった。しかし。。

彼女は自分からあっけない程簡単に崩れ初めてしまった。

これはつまり。。

もともと礼子が彼との関係に、自分でも自信がなかった事を意味していた。
利用されているだけだという話も、摩耶の作り話などではなく、実は本当の話で、彼女自身、自覚していたのかもしれなかった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熾ーおこりー

ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】  幕末一の剣客集団、新撰組。  疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。  組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。  志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー ※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です 【登場人物】(ネタバレを含みます) 原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派) 芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。 沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派) 山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派) 土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派) 近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。 井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。 新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある 平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派) 平間(水戸派) 野口(水戸派) (画像・速水御舟「炎舞」部分)

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...