瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

文字の大きさ
上 下
183 / 424
報酬

1

しおりを挟む
数日後、摩耶は学校が終わると、隣の駅のファミレスに向かった。

店内に入ると、少し離れた席から弥生が手を振っているのが見えた。

摩耶は彼女と同じテーブルに着くと、コーヒーを注文した。

弥生は、摩耶の顔をじっと見つめていたが、やがて、ニッコリと微笑んだ。

「うまくいって良かったわね!」

弥生は本当に嬉しそうにカフェオレを飲んだ。

「最初、あなたからこの提案を持ちかけられた時には正直悩んだわ。でも。。」

弥生はカップの中を覗きながら小さく溜息をついた。

「あの子達が私を襲う事を計画していると聞いて、決心がついた。あなたには大変な思いをさせたけど、これで私にも平穏な日々がやってくるわね。それにしても。。」

弥生は包帯を巻いた腕を摩耶に見せた。

「これは痛かったわよ。事前に聞いてもいなかったから、すっかりパニックになってしまって。」

「すみませんでした。あいつらに罠だと悟られない為に、先生には迫真の演技をしてもらう必要があったから。」

「ええ。分かっているわ。」

「ところで、先生?あの。。報酬の件なんですけど。」

「大丈夫、ちゃんとご指定の物を買ってきたわよ。でも。。意外ね。中学生のあなたがこんな物を欲しがるなんて。」

摩耶は、弥生から大きな手提げ袋を受け取った。

ズッシリと重みが伝わってくる。
摩耶は、周囲を少し見渡してから、袋の中を覗き込んだ。

「そうそう、貴子ちゃんにも、お礼しなくちゃね。」

「ええ。。でも、彼女は純粋に鮎良たちが犯人だと信じきっています。私たちが罠を張った事は一切知らないので、その点は十分に注意して下さいね。」

摩耶は袋の中にある黒光りする物を確認して、満足げに弥生を見た。

「ありがとうございます。こういうのって、子供には入れない店でしか買えないので。。」

「それにしても、ゴツい鞭よね~
私ね、家でちょっと借りて、先っぽだけで軽く肘を叩いてみたの。。そしたらそれだけでもびっくりする位痛かったわ。」

弥生は、その時の事を思い出したのか、顔をしかめて手をさすった。

「これは。。鞭の中に金属の芯が入っていて、非力な人でも、破壊力が出せるんです。」

弥生は、身を乗り出してこちらを観ていたが、やがて興味深そうに摩耶に尋ねた。

「ねえ。。そんな物、一体何に使うの?」

私は、弥生に向かってサラりと言った。

「嫌だなあ、先生。これ鞭だもん、もちろん人を打つんですよ、人を! それも先生。。弥生先生をですよっ!  トボけちゃってもう、先生ったら!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熾ーおこりー

ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】  幕末一の剣客集団、新撰組。  疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。  組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。  志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー ※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です 【登場人物】(ネタバレを含みます) 原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派) 芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。 沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派) 山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派) 土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派) 近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。 井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。 新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある 平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派) 平間(水戸派) 野口(水戸派) (画像・速水御舟「炎舞」部分)

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...