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環
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環が密かに自転車を置いている場所は、学校の近くにある空き地だった。ここには、
日頃から数十台の放置自転車が置かれたままになっており、環はここに、自分の自転車を紛れ込ませていた。
物が草むらに身を隠して待っていると、環が緊張した顔をしてやってきた。
気の弱い彼女が、弥生襲撃に怖じ気付き、1人だけバックレるだろう事は、十分に予想出来た。
もし、鮎良らに責められたら、体調が悪かったとか、言い訳を用意しているに違いない。もともと、これといって特技のない環が彼女達の仲間にいられるのも、この要領の良さの賜物だった。
摩耶は般若の面を着け、自転車を列から出そうとしている環から、十数メートルの距離まで静かに近づいた。
「だ、誰?!」
背後からの気配にこちらを振り返った環は、怯える様に叫んだ。
「な、何よ!お面なんか被って。。あ、もしかして鮎良?そ、そうなの?」
鮎良は茶髪なのだが、まだ少し距離があり、辺りも暗いのと、般若の面の不気味さとで、気がつかない環。
環は必死に弁解を始めた。
「ご、ごめん、鮎良、わ、私ちょっと体調が悪くなって。。一言言ってから帰ろうかと思ったんだけど、いろいろ準備で忙しいかと思ってさ。」
必死に言い訳を並べる環。だが、黙り続ける摩耶に、さすがの彼女も違和感を感じ始めたのか、冷静にこちらを観察し始めた。
「あ、あなた、鮎良じゃないわね?誰なの?私に何の用?」
更に黙り続ける摩耶に、身の危険を感じた環は、慌てて自転車を引き出そうとした。
その瞬間!
摩耶は自分の横に置かれている自転車を勢いよく蹴り倒した。
十数台の放置自転車は次々とドミノ倒しとなり、逃げ遅れた環に倒れかかった。
「きゃ~っ!」
環は、自転車の間に腰から下を挟まれ、動けなくなってしまった。
摩耶は、ゆっくりと倒れている環に近づいた。
黙って彼女を見下ろす。
「お、お願い。た、助けて。。」
彼女の摩耶に対する恐怖心は、身動きできなくなった事で更に増している様だった。
環は彼女自身の自転車に足を挟まれていた。
「い、痛い。。」
環は自力で自転車を持ち上げようとしていたが、さすがに10台以上の自転車が折り重なっているのと、不自然な体勢で力が入らない事とで、ビクともしない。
「お願い、足が痛いの。。助けて。。」
環は半ベソをかきながら摩耶に頼んだ。
摩耶は、環の上にのしかかっている自転車を数台引き起こし、隙間を作ると、彼女の自転車の手前に入り込んだ。
そして、反対側から彼女の自転車を少し持ち上げた。
環は、足の上に隙間が出来た事にホッとして、足を抜き出そうとした。
しかし。。
摩耶が彼女の自転車を持ち上げたのは、彼女を助ける為ではなかった。
摩耶は、自転車を持ち上げる事でペダルが自由になったのを確認すると、それを勢いよく手で回し始めた。
そして、タイヤが十分なスピードで回転を始めると、再びゆっくりと自転車を環の方に倒し始めた。
「何、何なの?何してるの、やめてよ!」
環は、両手で下から自転車を支えながら、摩耶の意図が分からず叫んだ。
そして、ふと自分の足に目をやった彼女の顔は、瞬く間に恐怖に染まった。
「う、うそ!まさか。。そんな!」
環の視線の先、ミニスカートがめくれて剥き出しになった太股に、怪しく黒光りする
チェーンが、勢いよく回転しながら迫りつつあった。
日頃から数十台の放置自転車が置かれたままになっており、環はここに、自分の自転車を紛れ込ませていた。
物が草むらに身を隠して待っていると、環が緊張した顔をしてやってきた。
気の弱い彼女が、弥生襲撃に怖じ気付き、1人だけバックレるだろう事は、十分に予想出来た。
もし、鮎良らに責められたら、体調が悪かったとか、言い訳を用意しているに違いない。もともと、これといって特技のない環が彼女達の仲間にいられるのも、この要領の良さの賜物だった。
摩耶は般若の面を着け、自転車を列から出そうとしている環から、十数メートルの距離まで静かに近づいた。
「だ、誰?!」
背後からの気配にこちらを振り返った環は、怯える様に叫んだ。
「な、何よ!お面なんか被って。。あ、もしかして鮎良?そ、そうなの?」
鮎良は茶髪なのだが、まだ少し距離があり、辺りも暗いのと、般若の面の不気味さとで、気がつかない環。
環は必死に弁解を始めた。
「ご、ごめん、鮎良、わ、私ちょっと体調が悪くなって。。一言言ってから帰ろうかと思ったんだけど、いろいろ準備で忙しいかと思ってさ。」
必死に言い訳を並べる環。だが、黙り続ける摩耶に、さすがの彼女も違和感を感じ始めたのか、冷静にこちらを観察し始めた。
「あ、あなた、鮎良じゃないわね?誰なの?私に何の用?」
更に黙り続ける摩耶に、身の危険を感じた環は、慌てて自転車を引き出そうとした。
その瞬間!
摩耶は自分の横に置かれている自転車を勢いよく蹴り倒した。
十数台の放置自転車は次々とドミノ倒しとなり、逃げ遅れた環に倒れかかった。
「きゃ~っ!」
環は、自転車の間に腰から下を挟まれ、動けなくなってしまった。
摩耶は、ゆっくりと倒れている環に近づいた。
黙って彼女を見下ろす。
「お、お願い。た、助けて。。」
彼女の摩耶に対する恐怖心は、身動きできなくなった事で更に増している様だった。
環は彼女自身の自転車に足を挟まれていた。
「い、痛い。。」
環は自力で自転車を持ち上げようとしていたが、さすがに10台以上の自転車が折り重なっているのと、不自然な体勢で力が入らない事とで、ビクともしない。
「お願い、足が痛いの。。助けて。。」
環は半ベソをかきながら摩耶に頼んだ。
摩耶は、環の上にのしかかっている自転車を数台引き起こし、隙間を作ると、彼女の自転車の手前に入り込んだ。
そして、反対側から彼女の自転車を少し持ち上げた。
環は、足の上に隙間が出来た事にホッとして、足を抜き出そうとした。
しかし。。
摩耶が彼女の自転車を持ち上げたのは、彼女を助ける為ではなかった。
摩耶は、自転車を持ち上げる事でペダルが自由になったのを確認すると、それを勢いよく手で回し始めた。
そして、タイヤが十分なスピードで回転を始めると、再びゆっくりと自転車を環の方に倒し始めた。
「何、何なの?何してるの、やめてよ!」
環は、両手で下から自転車を支えながら、摩耶の意図が分からず叫んだ。
そして、ふと自分の足に目をやった彼女の顔は、瞬く間に恐怖に染まった。
「う、うそ!まさか。。そんな!」
環の視線の先、ミニスカートがめくれて剥き出しになった太股に、怪しく黒光りする
チェーンが、勢いよく回転しながら迫りつつあった。
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