瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~

黒野拓海

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2つの歯型

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いつの間にか、鞭の雨は止んでいた。

美菜はソファに寝かされ、横にはコーヒーを飲むナミの姿があった。

「美菜。。これで分かっただろ?私は確かにここに存在するって事を。お前にとってどちらが良かったかは別として、これは事実なんだよ。」

美菜は苦痛に喘ぎながらナミに答えた。

「確かに、自分ではここまで自分を責められないかもしれない。。でも、何度も言うけど、意識の中の出来事と考えれば可能だと。。あなたは、私の中にいるのだから。。」

すると、ナミは美菜の傷だらけの肩を優しく撫でながら言った。

「それは、伊豆以来お前が摩耶を強く意識していたからさ。ちょっと刺激が強すぎたんだろうね。だから、ありもしない事考える様になったのさ。」

そうなのか。本当に、全ては美菜の誤解だったのか。。
確かに今日の責めは、痛みは、あまりにリアルだった。意識の中の出来事と考えるのは
は無理があるだろうか。。

しかし、本当に!?
こんな怪物みたいな女が、現実に存在するなどあり得るだろうか。

ナミはそんな美菜の迷いを察したのか、ヤレヤレという表情をした。

そして、美菜の右手を掴み肘を顔の前に差し出した。

「ホラ、自分の肘を噛みな。」

「え・・でもなんで!?」

美菜が訳が分からずナミに訊くと、彼女は

「いいから、さっさとしな。本気で噛まなくていいから。」

と、催促した。

美菜は言われるままに、自分の肘の内側を噛んだ。軽くなので痛みは無かったが、肘には美菜自身の歯形が残った。

「よく見てなよ。」

そう言うと、ナミは顔を美菜の肘に近づけた。
この時、美菜はナミの首筋に小さなホクロがある事に、初めて気づいた。

そしてその直後、ナミが美菜の肘を噛んだ。

美菜は一瞬驚いたが、ナミも手加減したのか、さほど痛みはなかった。

ナミが顔を上げると、美菜の右肘には2つの歯形が並んでいた。

ナミは美菜の肘を掴んだまま、側にあった美菜の携帯を取り、2つの歯形を一緒に
撮影した。

「美菜。この2つの歯形、後でよく見てみるんだな。画像も残しておいたからさ。」

そういうと、ナミは仮面を着けたまま帰っていってしまった。
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