瞳の奥の漁火～女をいたぶる狂気の女～

変化の兆し

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数週間後。。

美菜は、相変わらずナミにいたぶられる日々を過ごしていた。
そんなある晩のこと。
いつもの様に帰りの電車に揺られていると、

「美菜さん？美菜さんですよね？」

と背後から声がした。

美菜が振り返ると、１人の若い女の子が嬉しそうにこちらを見ている。

「あら、奈々ちゃんじゃない！久しぶりね。」

「わあ、やっぱり美菜さんだ。よかったあ～感じが変わったから最初分からなかった
けど。」

奈々は、美菜が以前馴染みにしていた銀座の洋服屋のスタッフだった。
仕事柄、いつも派手目の服装をしているが、性格は素直でとても可愛い子だ。

「どおしたんですか？最近、全然お店に来てくれなくて。みんな心配してたんですよお。」

「ごめんなさいね。ご無沙汰してて。最近服の趣味が変わってしまって。。」

当然、ナミの事は話す訳にもいかず、ごまかすしかなかった。
それに、着る服が変わったのはあながち嘘とも言えない。。

「ふ～ん。そうなんだあ。何か寂しいな～でも。。」

奈々は美菜の服装を吟味するように見ながら言った。

「うん。やっぱりそうだったか！」

「何が？」

美菜が訊くと、奈々は頭をかきながら言った。

「えっとね、私は、前から美菜さんには今着てる様な落ち着いてて、品のある服装が
似合うと思ってたんです。うちの店、派手目の服ばかりだから。。立場上言えなかったんですけどね。それに。。」

奈々は美菜の足に視線を移しながらら続けた。

「美菜さんは絶対ミニよりパンツの方が似合いますよね。」

「あら、それって私の足が綺麗じゃないって事ね。」

美菜が笑って言うと、奈々は美菜の肘を軽く叩いて言った。

「きゃはは！ヤダア、そんな訳ないでしょ。美菜さんの足はうちの店の子みんなの
憧れなんだから。あっ、降りなきゃ。美菜さん、たまには店に遊びに来てくださいね。」

「ありがとう。久々に奈々ちゃんに会えて嬉しかったわ。」

美菜がそう言うと、奈々はドアに向かいかけてから、もう一度美菜の方を向き直って
囁いた。

「美菜さん、ますます綺麗になりましたね。大人の女というか、妖艶な雰囲気というか。。女の私でもどきどきしちゃう位。じゃ、おやすみなさい～」

ホームを小走りに駆けていく奈々の後ろ姿に手を振りながら、美菜は呟いた。

〝綺麗になったなんて〝

〝奈々ちゃん、私がくたびれた顔をしてたから、気を遣ってくれたんだわ。優しい子
ね。。〝

そう。この時美菜は、まだ気づいていなかった。

彼女の中で少しずつ、だが確実に何かが変わろうとしている事に。。