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第19章 悪魔との戦い
第226話 血の契約
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光の魔法を放ってから、かなりの時間が経過した。セイン王子の魔力はかなり多い方ではあったが、その魔力が間もなく尽きそうである。セイン王子の不安が大きくなってきた頃だった。
「セイン様。あまり残ってはおりませんが、我々の魔力もお使いください」
ギルの声がする方を見るとギルとアリス、その後ろには子供達が跪いている。カーラの魔法のお陰でほとんどの者が動ける状態にまで回復ができたようだった。横を見ると、ウィルとアランもいた。
「みんな……。それにアラン……良かった」
アランと目が合ったセイン王子が嬉しそうに笑う。対するアランは少し気まずそうに笑う。
「今からこの者の持っている剣で悪魔の器を破壊する」
「剣? ……もしかして、これですか?」
ウィルがセイン王子とアランに伝えると、アランは胸から血の塊のような短剣を取り出した。それは以前、バフォールがエリー王女に与えたものだった。
「それは?」
「ブラッディソード。血の契約を交わすことで、主と共に成長をする剣。何故あいつがこれを渡したかは知らないが、負の要素はない。この剣であれば器の血液を吸い取り破壊が可能だ」
セイン王子の問いにウィルが答える。禍々しいその剣を見ると不安は拭いきれなかった。アランに負荷はかからないのだろうか。それが顔に出ていたのだろう。ウィルが目を細める。
「心配するな。私は神だぞ」
セイン王子は少し驚いた後、はははと笑い「そうでしたね」と応えた。
「セイン様、そろそろ……」
「うん、そうだね。よろしく」
ギルとアリスはセイン王子の背中に片手をかざす。もう片方の手は子供と手を握っていた。二人は子供たちの魔力を注ぎ込む。セイン王子は、空っぽに近かった魔力が少しずつ戻ってくるのを感じた。
「では、私は行ってきます」
ウィルとセイン王子に対してアランが一礼をするとウィルがセイン王子とアランに一言付け加えた。
「器が壊れたら――――」
ドーム状になっている光の中に入るとすぐに、アランがブラッディソードの鞘と柄を掴みゆっくりと抜く。金属がこすれる音と言うより蛇の鳴き声のような音が聞こえた気がした。
ドクン。
抜いた瞬間に右手から一気に血が抜かれたように目眩が起きる。アランは抜いた鞘を胸にしまうと剣の状態を確かめた。
良く見ると柄に描かれた蛇の模様がアランの腕に巻きつくように痣が出来ている。そこから血が流れ、剣の中へと真っ赤な血が染み渡っているようだった。血管のように無数に枝分かれをした模様が剣に浮かび上がる。短剣ではあったが、見る見るうちにロングソードくらいの長さに伸びていく。
「これで血の契約を交わしたことになったのか……?」
いつの間にか目眩もなくなっていた。少し剣を振ってみる。体の一部のように軽い。柄も自分の手にしっくりと馴染み、剣の長さも調度良い。
「なるほど……これがブラッディソード……」
アランは一人納得したように呟くとそのまま中心へと歩き出した。奥に進むとそこには小さく蹲るバフォールの姿があった。
「バフォール……」
アランの声に気が付いたバフォールは顔を上げた。その表情はあの自身に満ち溢れた表情とは違い、力ないものだった。あれほど恐怖を感じた相手ではあったのに、今は小さく感じる。
「お前か……ああ、その剣をやっと使う気になったのか……そうだな、こうじわじわと苦しめられるより、そいつで一気にやってもらえたほうが楽だ。一思いにやってくれ」
バフォールはゆっくりと立ち上がり、力なく笑う。アランは何故かそんな様子のバフォールに胸を痛めた。
「なんだ……悪魔に同情か……くっくっくっく。人間は面白いがそういうところがつまらない。だが、つつけば直ぐに面白い面を見せてくれる。もちろんお前にも多くの負の感情がある。それを隠し、見ないようにしていることを私は知っている。そうだな……お前は――」
「それがどうした。誰しもそういった感情を持ち合わせることもあるだろう。しかし、それを自分なりに抑えたり、解決していくからこそ成長することが出来る」
小さな動揺を隠し、アランは一瞬でもバフォールに同情したことを悔んだ。悪魔に耳を傾けてはならない。見られてはいけない何かを隠すようにアランは剣を振りかざした。
無抵抗に体を差し出すバフォールにブラッディソードが腹部を貫く。ドクドクと剣が血を吸い取っていることを感じるほど剣が脈打った。
契約者の死は我の自由……。さあ、我を求めよ――――
「セイン様。あまり残ってはおりませんが、我々の魔力もお使いください」
ギルの声がする方を見るとギルとアリス、その後ろには子供達が跪いている。カーラの魔法のお陰でほとんどの者が動ける状態にまで回復ができたようだった。横を見ると、ウィルとアランもいた。
「みんな……。それにアラン……良かった」
アランと目が合ったセイン王子が嬉しそうに笑う。対するアランは少し気まずそうに笑う。
「今からこの者の持っている剣で悪魔の器を破壊する」
「剣? ……もしかして、これですか?」
ウィルがセイン王子とアランに伝えると、アランは胸から血の塊のような短剣を取り出した。それは以前、バフォールがエリー王女に与えたものだった。
「それは?」
「ブラッディソード。血の契約を交わすことで、主と共に成長をする剣。何故あいつがこれを渡したかは知らないが、負の要素はない。この剣であれば器の血液を吸い取り破壊が可能だ」
セイン王子の問いにウィルが答える。禍々しいその剣を見ると不安は拭いきれなかった。アランに負荷はかからないのだろうか。それが顔に出ていたのだろう。ウィルが目を細める。
「心配するな。私は神だぞ」
セイン王子は少し驚いた後、はははと笑い「そうでしたね」と応えた。
「セイン様、そろそろ……」
「うん、そうだね。よろしく」
ギルとアリスはセイン王子の背中に片手をかざす。もう片方の手は子供と手を握っていた。二人は子供たちの魔力を注ぎ込む。セイン王子は、空っぽに近かった魔力が少しずつ戻ってくるのを感じた。
「では、私は行ってきます」
ウィルとセイン王子に対してアランが一礼をするとウィルがセイン王子とアランに一言付け加えた。
「器が壊れたら――――」
ドーム状になっている光の中に入るとすぐに、アランがブラッディソードの鞘と柄を掴みゆっくりと抜く。金属がこすれる音と言うより蛇の鳴き声のような音が聞こえた気がした。
ドクン。
抜いた瞬間に右手から一気に血が抜かれたように目眩が起きる。アランは抜いた鞘を胸にしまうと剣の状態を確かめた。
良く見ると柄に描かれた蛇の模様がアランの腕に巻きつくように痣が出来ている。そこから血が流れ、剣の中へと真っ赤な血が染み渡っているようだった。血管のように無数に枝分かれをした模様が剣に浮かび上がる。短剣ではあったが、見る見るうちにロングソードくらいの長さに伸びていく。
「これで血の契約を交わしたことになったのか……?」
いつの間にか目眩もなくなっていた。少し剣を振ってみる。体の一部のように軽い。柄も自分の手にしっくりと馴染み、剣の長さも調度良い。
「なるほど……これがブラッディソード……」
アランは一人納得したように呟くとそのまま中心へと歩き出した。奥に進むとそこには小さく蹲るバフォールの姿があった。
「バフォール……」
アランの声に気が付いたバフォールは顔を上げた。その表情はあの自身に満ち溢れた表情とは違い、力ないものだった。あれほど恐怖を感じた相手ではあったのに、今は小さく感じる。
「お前か……ああ、その剣をやっと使う気になったのか……そうだな、こうじわじわと苦しめられるより、そいつで一気にやってもらえたほうが楽だ。一思いにやってくれ」
バフォールはゆっくりと立ち上がり、力なく笑う。アランは何故かそんな様子のバフォールに胸を痛めた。
「なんだ……悪魔に同情か……くっくっくっく。人間は面白いがそういうところがつまらない。だが、つつけば直ぐに面白い面を見せてくれる。もちろんお前にも多くの負の感情がある。それを隠し、見ないようにしていることを私は知っている。そうだな……お前は――」
「それがどうした。誰しもそういった感情を持ち合わせることもあるだろう。しかし、それを自分なりに抑えたり、解決していくからこそ成長することが出来る」
小さな動揺を隠し、アランは一瞬でもバフォールに同情したことを悔んだ。悪魔に耳を傾けてはならない。見られてはいけない何かを隠すようにアランは剣を振りかざした。
無抵抗に体を差し出すバフォールにブラッディソードが腹部を貫く。ドクドクと剣が血を吸い取っていることを感じるほど剣が脈打った。
契約者の死は我の自由……。さあ、我を求めよ――――
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