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第19章 悪魔との戦い
第225話 鬱積
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「さぁ! バーミアさんとボーンズはこちらに並んでくださいますか? ええ、では魔法をかけますね」
この場に似合わぬ明るいカーラの声が跳ねる。
セイン王子から指示が飛んだあとすぐに、カーラが笑顔でバーミアとボーンズに声をかけた。二人がカーラの前に立つと、ふわりと温かい風と共に赤い光が体を包み込む。
「ふふふ、強化魔法ですよ。じゃあ、まずその大きな岩さんたちをぽいぽいっっとどかしちゃいましょう。その後は傷ついた皆さんを私の近くに並べて寝かせてください。まとめて回復しちゃいますので。ああ、ウィル様は役には立たないのでその辺で見ていてくださいね」
何の悪気もなさそうに笑顔で神であるウィルに伝えた。ドキっとしたのはバーミアとボーンズだ。ちらりとウィルを見るが、本人は全く気にも留めていない様子で二人はほっと胸を撫で下ろす。
「どうしたんです? 早くお願いしますね」
「は、はい!」
二人は次々と岩をどかし、騎士や子供たちを救出していった。
「気に入らない」
バフォールはせっかく作り上げた舞台を台無しにされ、顔を歪める。
「散々楽しんできたじゃないか。もういいだろ?」
セイン王子とバフォールは互いに相手がどう動くのか分からず動けずにいた。張り詰めた空気。バフォールは、今のセイン王子からは怒りも憎しみも感じられずどう戦ってよいか手をこまねいていた。
――――兄であるリアムも兄のように慕っているアランも傷ついているというのに。こいつの弱みは何なのか……?
動き出したのはセイン王子だった。大地を蹴り距離を縮める。腰を落とし、低い姿勢から剣を斬り上げた。
バフォールは体を反らし、攻撃をかわしたもののぐらりと体が傾いた。当たってもいないにも関わらず、力が抜けたのだ。セイン王子と目が合うと、今度は右から横への攻撃に移り、バフォールは剣で受け止める。剣が交わった瞬間にぐわんとバフォールの視界が歪む。よろめいたバフォールが慌てて距離を取り、額を抑えながらセイン王子を睨む。
「もしかして……力が抜けた?」
光の魔法は悪魔の力を奪うだろうとウィルから教えて貰っていた。それが思っていた以上の効果を得ることが出来たため、驚いて思わず尋ねてしまった。しかし、バフォールは何も答えない。
バフォールが指二本を立て、それを地面に向かって横一線を引く。その線に合わせるように地面から赤黒い壁が聳え立つ。直ぐさま左手をかざし、丸くて大きな赤黒い玉を放った。その玉は壁をすり抜けセイン王子目掛けて飛んでくる。
「セイン! 剣で受け止めろ!」
ウィルの声に反応をしたセイン王子が両手で剣を握り締め、魔法の玉を正面から斬るように受け止める。ぶつかった瞬間に輝く光が赤黒い玉を飲み込み、それが少しずつ小さくなっていき、そのまま消滅した。
「凄い……」
セイン王子が自分の攻撃に驚きつつ、目の前の壁も左から斬り入れる。キラキラとした光の粒子が飛び散り、剣が触れたところから光が浸食していく。
「いける……!」
そのまま右へと横に斬り込んでいくと、浸食された左側から順番に光の粒子となって赤黒い壁が跡形もなく消えていった。
目の前で自分の魔法を簡単に破られたバフォールは後退りする。ディーン王子との契約がある限り逃げるわけにはいかない。
――地位を脅かすものがいれば屈服させろ。
要するにここにいる全員を敗北させ従わせなければならないのだ。紛れもなく脅かすものなのだから。
バフォールはリアム国王に使った洗脳魔法を使おうと試みて見るが、深層の穴すら開かない。それは、セイン王子の体内にある光の魔力が阻止をしていたからだった。
「ちっ……」
焦りの色を隠せないバフォール。
セイン王子はバフォールの周りをゆっくり歩き、話しかける。
「お前は封印では意味がない。お前自身を消滅させなければならないんだ」
「……セイン、では、お前の望みも叶えてやろう。例えば、エリー王女」
それを聞いたセイン王子は呆れたように笑う。
「俺はお前の手を借りずに望んだものを手に入れる。悪魔なんてこの世界には必要ないんだ。努力せずに欲しいものを手に入れたって、直ぐに失ってしまう。それはその物だったり気持ちだったり……」
バフォールの周りを一周したセイン王子は、大きく描かれた線と線が繋がった場所に剣を突き刺した。
「これで終わりだ」
刺した先から線を辿るように左右に光の柱が円を描く。
「俺には見えている。お前のいない平和な未来が。エリーとの未来が……!!」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
光の柱が頂点で交わり、バフォールを飲み込む。眩い光にそこにいる全員がその光景を見入っていた。
バフォールの魔力を吸い尽くすべく魔力を込めるセイン王子。しかし、長い時間かけても未だバフォールが消滅しない。
「このままではまずいな……」
ウィルが呟く。
このままでは、セイン王子の魔力の方が先に尽きてしまう。何とかする手立てを考えなくてはならない。ウィルは周りを見渡した。
この場に似合わぬ明るいカーラの声が跳ねる。
セイン王子から指示が飛んだあとすぐに、カーラが笑顔でバーミアとボーンズに声をかけた。二人がカーラの前に立つと、ふわりと温かい風と共に赤い光が体を包み込む。
「ふふふ、強化魔法ですよ。じゃあ、まずその大きな岩さんたちをぽいぽいっっとどかしちゃいましょう。その後は傷ついた皆さんを私の近くに並べて寝かせてください。まとめて回復しちゃいますので。ああ、ウィル様は役には立たないのでその辺で見ていてくださいね」
何の悪気もなさそうに笑顔で神であるウィルに伝えた。ドキっとしたのはバーミアとボーンズだ。ちらりとウィルを見るが、本人は全く気にも留めていない様子で二人はほっと胸を撫で下ろす。
「どうしたんです? 早くお願いしますね」
「は、はい!」
二人は次々と岩をどかし、騎士や子供たちを救出していった。
「気に入らない」
バフォールはせっかく作り上げた舞台を台無しにされ、顔を歪める。
「散々楽しんできたじゃないか。もういいだろ?」
セイン王子とバフォールは互いに相手がどう動くのか分からず動けずにいた。張り詰めた空気。バフォールは、今のセイン王子からは怒りも憎しみも感じられずどう戦ってよいか手をこまねいていた。
――――兄であるリアムも兄のように慕っているアランも傷ついているというのに。こいつの弱みは何なのか……?
動き出したのはセイン王子だった。大地を蹴り距離を縮める。腰を落とし、低い姿勢から剣を斬り上げた。
バフォールは体を反らし、攻撃をかわしたもののぐらりと体が傾いた。当たってもいないにも関わらず、力が抜けたのだ。セイン王子と目が合うと、今度は右から横への攻撃に移り、バフォールは剣で受け止める。剣が交わった瞬間にぐわんとバフォールの視界が歪む。よろめいたバフォールが慌てて距離を取り、額を抑えながらセイン王子を睨む。
「もしかして……力が抜けた?」
光の魔法は悪魔の力を奪うだろうとウィルから教えて貰っていた。それが思っていた以上の効果を得ることが出来たため、驚いて思わず尋ねてしまった。しかし、バフォールは何も答えない。
バフォールが指二本を立て、それを地面に向かって横一線を引く。その線に合わせるように地面から赤黒い壁が聳え立つ。直ぐさま左手をかざし、丸くて大きな赤黒い玉を放った。その玉は壁をすり抜けセイン王子目掛けて飛んでくる。
「セイン! 剣で受け止めろ!」
ウィルの声に反応をしたセイン王子が両手で剣を握り締め、魔法の玉を正面から斬るように受け止める。ぶつかった瞬間に輝く光が赤黒い玉を飲み込み、それが少しずつ小さくなっていき、そのまま消滅した。
「凄い……」
セイン王子が自分の攻撃に驚きつつ、目の前の壁も左から斬り入れる。キラキラとした光の粒子が飛び散り、剣が触れたところから光が浸食していく。
「いける……!」
そのまま右へと横に斬り込んでいくと、浸食された左側から順番に光の粒子となって赤黒い壁が跡形もなく消えていった。
目の前で自分の魔法を簡単に破られたバフォールは後退りする。ディーン王子との契約がある限り逃げるわけにはいかない。
――地位を脅かすものがいれば屈服させろ。
要するにここにいる全員を敗北させ従わせなければならないのだ。紛れもなく脅かすものなのだから。
バフォールはリアム国王に使った洗脳魔法を使おうと試みて見るが、深層の穴すら開かない。それは、セイン王子の体内にある光の魔力が阻止をしていたからだった。
「ちっ……」
焦りの色を隠せないバフォール。
セイン王子はバフォールの周りをゆっくり歩き、話しかける。
「お前は封印では意味がない。お前自身を消滅させなければならないんだ」
「……セイン、では、お前の望みも叶えてやろう。例えば、エリー王女」
それを聞いたセイン王子は呆れたように笑う。
「俺はお前の手を借りずに望んだものを手に入れる。悪魔なんてこの世界には必要ないんだ。努力せずに欲しいものを手に入れたって、直ぐに失ってしまう。それはその物だったり気持ちだったり……」
バフォールの周りを一周したセイン王子は、大きく描かれた線と線が繋がった場所に剣を突き刺した。
「これで終わりだ」
刺した先から線を辿るように左右に光の柱が円を描く。
「俺には見えている。お前のいない平和な未来が。エリーとの未来が……!!」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
光の柱が頂点で交わり、バフォールを飲み込む。眩い光にそこにいる全員がその光景を見入っていた。
バフォールの魔力を吸い尽くすべく魔力を込めるセイン王子。しかし、長い時間かけても未だバフォールが消滅しない。
「このままではまずいな……」
ウィルが呟く。
このままでは、セイン王子の魔力の方が先に尽きてしまう。何とかする手立てを考えなくてはならない。ウィルは周りを見渡した。
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