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第19章 悪魔との戦い
第223話 攻防
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アランが遠くへ吹き飛ばされると、リアム国王はセイン王子の元に駆け寄った。
「セイン!」
手当てをするためしゃがみ込み、傷口の状態を確認しようとする。
「兄さん……俺のことはいいから……あいつらを……。俺たちは間違っていないよ……だからっ!! うっ!!」
「しゃべらなくていい。今、止血をする」
リアム国王が苦しむセイン王子の手当をしようとすると、つい先ほどまでリアム国王と対峙していたアリスが走り出していた。
「陛下! 手当は無用! 今が好機っ! そこをどいてください!」
アリスは剣を左から右へと横に振り、リアム国王に向かって風を起こす。風の魔法は勢いを増し、普通の人であれば体ごと持って行かれるほどの突風を巻き上げた。
「アラン!」
アリスはアランにセイン王子のとどめを刺すように合図を送る。痛みを堪えながらもアランは素早く立ち上がり、セイン王子が倒れているそこへ狙いを定めて走り出した。
リアム国王はアリスの攻撃に対し、同じく風を起こしてそれを打ち消す。すぐさま体勢を変え、向かって来たアランと剣を交える。
「アラン・ラッシュウォール。これはお前個人の行いか? それとも背後にシトラル国王がいるのか?」
怒りに任せて切ってしまいたいという衝動を抑え尋ねた。シトラル国王がダルスを支持するとは思えないが、ここはきちんと知る必要があった。
「我々の敵はディーン操る悪魔、バフォール! 陛下やセイン様ではございません!」
リアム国王とアランが戦っている隙を狙い、今度はアリスがセイン王子の頭を狙う。
「お前たちは言葉と行動が伴わぬようだが」
アリスの行動に気が付いたリアム国王は、アランを押し退け、左手に魔力を込める。それを青く光る炎に変えるとアランに向かって放った。アランは剣で受け止めたものの後ろに後退する。
リアム国王はセイン王子を守るようにアリスへ攻撃を移す。
「陛下! 剣をお納め下さい! こいつは偽者! セイン様は間もなくこちらに到着します! それまでっ……!」
二人は必死に訴えるが、リアム国王の怒りは消えない。リアム国王にとってそれは、ただの命乞いにしか聞こえなかった。
「悪魔だの……バフォールだの……セインを偽物扱いして何を得る……」
アランとアリスが交互にセイン王子の首を狙い、リアム国王がそれを阻止するという攻防が何度も繰り返される。少しずつ傷ついていく二人。それでもセイン王子を狙うのを止めなかった。
「ならば……」
リアム国王が剣を縦にかざし、左手を刃の部分に触れる。剣に氷の粒が集まる。
「いけないっ!」
剣に集まった氷から龍が象られ、氷の龍が飛び出してきた。アリスはリアム国王が取ったフォームに素早く反応し、アランの前に立つと、地面に手を付き炎の壁を作る。
氷の龍はその壁に突進し、水蒸気を立ち上げながらも押し入ってくる。
「アラン!」
「わかってる!」
炎の壁から割り入ってくる氷の龍に、アランが魔法薬を自分の剣にかけ龍の頭に飛びかかる。両手で上部に構えた剣を一気に振り下ろし、氷の龍を真っ二つに切り裂いた。
「アラン、後ろ!」
いつの間にか背後に回っていたリアム国王の剣先がアランの背中を切りつける。背中から血が吹き出し、そのまま正面に倒れるアラン。
「アランっ!!」
アリスはその光景に一瞬息を飲む。
「よそ見などしている暇はないぞ!」
アランを斬った勢いで左から上へと流れるようにアリスの体を狙う。剣には魔力が込められ蒼白く光っている。
間に合わない!
それでもアリスは剣の軌道位置に自分の剣を固定し、魔力を込めて衝撃に備えた。
次の瞬間。
金属と金属がぶつかる甲高い音と共に、魔力と魔力がぶつかって起きる爆風が舞い上がる。しかし、アリスの剣には強い衝撃を感じてはいなかった。不思議に感じつつ、思わず瞑ってしまった瞳を開ける。
そこには、爆風にはためいた濃紺色をしたマントが目の前で揺れていた。
「兄さん……これはどういうこと……?」
「……!! セイン、何故止める!?」
リアム国王の剣を受け止めたその人物の瞳は、困惑を隠せずにいた。
それはまた、リアム国王も同じだった。
アリスはその人物を見上げる。サラサラの髪をなびかせ、リアム国王と対等に剣を受けるその人物を。またもやバフォールの作戦なのかと思い、倒れているはずのセイン王子の方を見やる。倒れている人物を目視することができ、アリスはこの目の前にいる人物が本物であることが分かった。
「セイン様……」
じんわりと涙がにじみ出て、安堵の声を漏らした。
「セイン!」
手当てをするためしゃがみ込み、傷口の状態を確認しようとする。
「兄さん……俺のことはいいから……あいつらを……。俺たちは間違っていないよ……だからっ!! うっ!!」
「しゃべらなくていい。今、止血をする」
リアム国王が苦しむセイン王子の手当をしようとすると、つい先ほどまでリアム国王と対峙していたアリスが走り出していた。
「陛下! 手当は無用! 今が好機っ! そこをどいてください!」
アリスは剣を左から右へと横に振り、リアム国王に向かって風を起こす。風の魔法は勢いを増し、普通の人であれば体ごと持って行かれるほどの突風を巻き上げた。
「アラン!」
アリスはアランにセイン王子のとどめを刺すように合図を送る。痛みを堪えながらもアランは素早く立ち上がり、セイン王子が倒れているそこへ狙いを定めて走り出した。
リアム国王はアリスの攻撃に対し、同じく風を起こしてそれを打ち消す。すぐさま体勢を変え、向かって来たアランと剣を交える。
「アラン・ラッシュウォール。これはお前個人の行いか? それとも背後にシトラル国王がいるのか?」
怒りに任せて切ってしまいたいという衝動を抑え尋ねた。シトラル国王がダルスを支持するとは思えないが、ここはきちんと知る必要があった。
「我々の敵はディーン操る悪魔、バフォール! 陛下やセイン様ではございません!」
リアム国王とアランが戦っている隙を狙い、今度はアリスがセイン王子の頭を狙う。
「お前たちは言葉と行動が伴わぬようだが」
アリスの行動に気が付いたリアム国王は、アランを押し退け、左手に魔力を込める。それを青く光る炎に変えるとアランに向かって放った。アランは剣で受け止めたものの後ろに後退する。
リアム国王はセイン王子を守るようにアリスへ攻撃を移す。
「陛下! 剣をお納め下さい! こいつは偽者! セイン様は間もなくこちらに到着します! それまでっ……!」
二人は必死に訴えるが、リアム国王の怒りは消えない。リアム国王にとってそれは、ただの命乞いにしか聞こえなかった。
「悪魔だの……バフォールだの……セインを偽物扱いして何を得る……」
アランとアリスが交互にセイン王子の首を狙い、リアム国王がそれを阻止するという攻防が何度も繰り返される。少しずつ傷ついていく二人。それでもセイン王子を狙うのを止めなかった。
「ならば……」
リアム国王が剣を縦にかざし、左手を刃の部分に触れる。剣に氷の粒が集まる。
「いけないっ!」
剣に集まった氷から龍が象られ、氷の龍が飛び出してきた。アリスはリアム国王が取ったフォームに素早く反応し、アランの前に立つと、地面に手を付き炎の壁を作る。
氷の龍はその壁に突進し、水蒸気を立ち上げながらも押し入ってくる。
「アラン!」
「わかってる!」
炎の壁から割り入ってくる氷の龍に、アランが魔法薬を自分の剣にかけ龍の頭に飛びかかる。両手で上部に構えた剣を一気に振り下ろし、氷の龍を真っ二つに切り裂いた。
「アラン、後ろ!」
いつの間にか背後に回っていたリアム国王の剣先がアランの背中を切りつける。背中から血が吹き出し、そのまま正面に倒れるアラン。
「アランっ!!」
アリスはその光景に一瞬息を飲む。
「よそ見などしている暇はないぞ!」
アランを斬った勢いで左から上へと流れるようにアリスの体を狙う。剣には魔力が込められ蒼白く光っている。
間に合わない!
それでもアリスは剣の軌道位置に自分の剣を固定し、魔力を込めて衝撃に備えた。
次の瞬間。
金属と金属がぶつかる甲高い音と共に、魔力と魔力がぶつかって起きる爆風が舞い上がる。しかし、アリスの剣には強い衝撃を感じてはいなかった。不思議に感じつつ、思わず瞑ってしまった瞳を開ける。
そこには、爆風にはためいた濃紺色をしたマントが目の前で揺れていた。
「兄さん……これはどういうこと……?」
「……!! セイン、何故止める!?」
リアム国王の剣を受け止めたその人物の瞳は、困惑を隠せずにいた。
それはまた、リアム国王も同じだった。
アリスはその人物を見上げる。サラサラの髪をなびかせ、リアム国王と対等に剣を受けるその人物を。またもやバフォールの作戦なのかと思い、倒れているはずのセイン王子の方を見やる。倒れている人物を目視することができ、アリスはこの目の前にいる人物が本物であることが分かった。
「セイン様……」
じんわりと涙がにじみ出て、安堵の声を漏らした。
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