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第15章 再来
第180話 一時の休息
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冷たい雨と大地にぶつかる雨音。そんな中でもエリー王女は温かさを感じていた。
見上げればセイン王子の優しい笑顔がある。
「良かった、無事で」
「はい……ご心配をおかけしました。そして、来てくれてありがとうございます」
エリー王女は、セイン王子の腕の中でやっと落ち着きを取り戻した。
視線を足元で跪くアランとアルバートに移し、背筋を伸ばす。
「よく戻られました」
「この度の件、誠に申し訳ございませんでした。どんな処罰も受け入れる覚悟は出来ております」
アランは頭を上げずに謝罪する。
「いえ、それは良いのです。二人とも無事で何よりでした。陛下も謹慎のみで良いと仰っておりますので、今はまずアトラスを守ることだけを考えましょう」
エリー王女が微笑むとアランとアルバートはさらに深くお辞儀をした。
後ろでずっと待機していたセロードが一歩前に出て頭を下げる。
「では、エリー様とセイン様。ここでは雨に濡れてしまいますので急いで中へお入りください。……お前達の説教は全て終わってからにする」
「はい」
セロードに促されるまま城のホールへ移動すると、セイン王子が魔法で全員の水分を一気に蒸発させた。
「え、何凄い……!」
奥の方でサラの声が聞こえる。セイン王子は小さな笑みをサラに返してから、セロードに向き合った。
「セロード。勝手に入国して申し訳ない。急を要していたもので」
「分かっております。この度はデール王国の戦争も止めてくださったと聞き及んでおります。弊国から感謝を申し上げなければなりません」
「いえ、それは彼の働きのおかげです。ジェルミア様」
ジェルミア王子はずっと被っていたフードを外す。金色の髪から覗く表情は固く、青い瞳からは強い力を放っていた。
「ジェルミア様……。聡明な判断に感謝いたします。またこちらに足を運ぶ勇気もしかと受け取りました。では、お二人には陛下との謁見をお願いしたいのですが宜しいでしょうか」
「もちろんです」
セイン王子とジェルミア王子の首肯を受け、セロードはアランに視線を移す。
「アラン、アルバートはエリー様のお側に。セイン様、ジェルミア様はこちらへ」
セロードがそれぞれに声を掛けると中央階段へ向かい始めた。
「あのっ……セイン様……」
セイン王子の背中を見たエリー王女は言い知れぬ不安を感じ、思わず呼び止めてしまった。セイン王子は振り返るとエリー王女の側まで戻り、手を取る。
「心配しないで。陛下とちゃんと話してくるから」
「……はい」
大丈夫だと言う様に笑みを浮かべるセイン王子に、エリー王女も笑みを作って見せた。不安はなくなってはいない。それが分かっているのかセイン王子は何度か頷くとエリー王女の頬を撫でた。
「ごめんね。待っていて」
名残惜しそうに微笑むとセイン王子は背中を見せた。
「すみません。参りましょう」
セイン王子がそのまま振り返ることなく歩いていく。エリー王女はホールの中央階段を登っていく三人をただ静かに見送った。
「エリー、大丈夫だから。ほら、二人も戻ってきたし、この戦争ももう終わるって言ってたでしょ?」
エリー王女の不安を拭うようにサラが明るい声を出す。
「サラ……。そう……ですね」
「ほら~、アランもアルバートも、もっと早く来なさいよね! エリー、ずっと心配していたのよ」
サラがアランにパンチをするとアランはその拳を片手で掴んだ。
「っ!? え?」
「サラにも怖い思いをさせてしまって悪かった。大丈夫だったか?」
握り締められた手のぬくもりを感じ、サラの顔に熱が集中する。
「だ、大丈夫よ! エリーがいてくれたおかげで大丈夫だったわ。エリー、本当に凄かったんだから! 私を守るために……」
「そうか、良かった。それに真実を知ってもエリー様のお側にいてくれて感謝する」
アランが微笑むとサラは掴まれていた手を反射的に引っ込めて、高鳴る胸を押さえた。
「あ、当たり前じゃない! たとえ王女であってもエリーはエリーなんだから、友達には変わりないわ。そりゃー、驚いて悩んだりもしたけど……」
「サラちゃん、俺からもごめんとありがとな」
「私からも改めてありがとうございます」
アルバートとエリー王女からもお礼を言われ、サラは熱くなった顔を両手で隠す。
「えっ! なに? ちょっと! お礼言われるようなことしてないから止めてっ! なんか恥ずかしくなっちゃうでしょ! マーサさーーーん!!」
耐えきれなくなり、サラはマーサの後ろに隠れた。
「ふふふ。ですが、私も感謝しております。エリー様のお側にいてくださることがどんなに心強いか」
「マ、マーサさんまで!! んんんんっ!! わかったわよ!! 面倒臭いって思われるくらいずっとエリーと一緒にいるからねっ!!」
「嬉しいです」
サラが照れ隠しで怒ったふりをすると、エリー王女は嬉しそうに笑っている。それを見たアランとアルバート、マーサも自然と笑顔になっており、全員が久しぶりに力を抜いた瞬間だった。
一時の休息。
しかし今、アトラス城内では黒い影が蠢いていた……。
見上げればセイン王子の優しい笑顔がある。
「良かった、無事で」
「はい……ご心配をおかけしました。そして、来てくれてありがとうございます」
エリー王女は、セイン王子の腕の中でやっと落ち着きを取り戻した。
視線を足元で跪くアランとアルバートに移し、背筋を伸ばす。
「よく戻られました」
「この度の件、誠に申し訳ございませんでした。どんな処罰も受け入れる覚悟は出来ております」
アランは頭を上げずに謝罪する。
「いえ、それは良いのです。二人とも無事で何よりでした。陛下も謹慎のみで良いと仰っておりますので、今はまずアトラスを守ることだけを考えましょう」
エリー王女が微笑むとアランとアルバートはさらに深くお辞儀をした。
後ろでずっと待機していたセロードが一歩前に出て頭を下げる。
「では、エリー様とセイン様。ここでは雨に濡れてしまいますので急いで中へお入りください。……お前達の説教は全て終わってからにする」
「はい」
セロードに促されるまま城のホールへ移動すると、セイン王子が魔法で全員の水分を一気に蒸発させた。
「え、何凄い……!」
奥の方でサラの声が聞こえる。セイン王子は小さな笑みをサラに返してから、セロードに向き合った。
「セロード。勝手に入国して申し訳ない。急を要していたもので」
「分かっております。この度はデール王国の戦争も止めてくださったと聞き及んでおります。弊国から感謝を申し上げなければなりません」
「いえ、それは彼の働きのおかげです。ジェルミア様」
ジェルミア王子はずっと被っていたフードを外す。金色の髪から覗く表情は固く、青い瞳からは強い力を放っていた。
「ジェルミア様……。聡明な判断に感謝いたします。またこちらに足を運ぶ勇気もしかと受け取りました。では、お二人には陛下との謁見をお願いしたいのですが宜しいでしょうか」
「もちろんです」
セイン王子とジェルミア王子の首肯を受け、セロードはアランに視線を移す。
「アラン、アルバートはエリー様のお側に。セイン様、ジェルミア様はこちらへ」
セロードがそれぞれに声を掛けると中央階段へ向かい始めた。
「あのっ……セイン様……」
セイン王子の背中を見たエリー王女は言い知れぬ不安を感じ、思わず呼び止めてしまった。セイン王子は振り返るとエリー王女の側まで戻り、手を取る。
「心配しないで。陛下とちゃんと話してくるから」
「……はい」
大丈夫だと言う様に笑みを浮かべるセイン王子に、エリー王女も笑みを作って見せた。不安はなくなってはいない。それが分かっているのかセイン王子は何度か頷くとエリー王女の頬を撫でた。
「ごめんね。待っていて」
名残惜しそうに微笑むとセイン王子は背中を見せた。
「すみません。参りましょう」
セイン王子がそのまま振り返ることなく歩いていく。エリー王女はホールの中央階段を登っていく三人をただ静かに見送った。
「エリー、大丈夫だから。ほら、二人も戻ってきたし、この戦争ももう終わるって言ってたでしょ?」
エリー王女の不安を拭うようにサラが明るい声を出す。
「サラ……。そう……ですね」
「ほら~、アランもアルバートも、もっと早く来なさいよね! エリー、ずっと心配していたのよ」
サラがアランにパンチをするとアランはその拳を片手で掴んだ。
「っ!? え?」
「サラにも怖い思いをさせてしまって悪かった。大丈夫だったか?」
握り締められた手のぬくもりを感じ、サラの顔に熱が集中する。
「だ、大丈夫よ! エリーがいてくれたおかげで大丈夫だったわ。エリー、本当に凄かったんだから! 私を守るために……」
「そうか、良かった。それに真実を知ってもエリー様のお側にいてくれて感謝する」
アランが微笑むとサラは掴まれていた手を反射的に引っ込めて、高鳴る胸を押さえた。
「あ、当たり前じゃない! たとえ王女であってもエリーはエリーなんだから、友達には変わりないわ。そりゃー、驚いて悩んだりもしたけど……」
「サラちゃん、俺からもごめんとありがとな」
「私からも改めてありがとうございます」
アルバートとエリー王女からもお礼を言われ、サラは熱くなった顔を両手で隠す。
「えっ! なに? ちょっと! お礼言われるようなことしてないから止めてっ! なんか恥ずかしくなっちゃうでしょ! マーサさーーーん!!」
耐えきれなくなり、サラはマーサの後ろに隠れた。
「ふふふ。ですが、私も感謝しております。エリー様のお側にいてくださることがどんなに心強いか」
「マ、マーサさんまで!! んんんんっ!! わかったわよ!! 面倒臭いって思われるくらいずっとエリーと一緒にいるからねっ!!」
「嬉しいです」
サラが照れ隠しで怒ったふりをすると、エリー王女は嬉しそうに笑っている。それを見たアランとアルバート、マーサも自然と笑顔になっており、全員が久しぶりに力を抜いた瞬間だった。
一時の休息。
しかし今、アトラス城内では黒い影が蠢いていた……。
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