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第13章 敵国
第168話 決断
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一方で、ジェルミア王子を含む四名も難なくバルダス国王の部屋へと辿り着いていた。
ギルの魔法で見張りを眠らせるとジェルミア王子の側近ハイドが鍵を開ける。ハイドが先頭を切って部屋に入ると直ぐにぱっと部屋の明かりが付いた。
「やはりジェルミアか……。このような夜更けに訪れるとは穏やかではないな」
「バルダス……」
待っていたかのように部屋の奥からバルダス国王がゆらりと現れる。四人は身構えた。
「お前は母親に似て愚かだな。良いのは面だけだ」
バルダス国王が鼻で笑う。
「お前は母を辱しめただけではなく、侮辱までするのか!」
「あの女の体以外に何があるというのだ? むしろ私に感謝するべきだろう? ああ、これはセイン様。エーデルの体はお気に召して頂けましたかな? 母親に似て良い体をしているのでね、あっちの具合も良かったのではないでしょうか?」
ニタニタといやらしい笑みを浮かべるバルダス国王を見たジェルミア王子は、体中の血が頭に駆け上がったかのように表情を変えた。
「黙れ! 腐ったお前に母やエーデルのことを侮辱することは許さない!」
ジェルミア王子が剣を振りかざすとバルダス国王は持っていた剣で受け止めた。
金属音が室内に鳴り響く。
「国王に剣を向けるということがどういうことか分かっているのだろうな? たった四人? 私も舐められたものだな。さ、皆の者、やれ!」
バルダス国王はほくそ笑むと部屋のあちこちから兵士が現れ、あっという間に取り囲まれた。
「ああ、セイン様とそこの側近は生かして捕らえるように。大事な客人だからな」
広い室内ではあるが、八名の兵士と剣を交えるのは動きが制限される。セイン王子がギルに目配せをすると素早くセイン王子に速力向上魔法をかけた。向かってくる兵士にセイン王子は目にも止まらぬ速さで次々と兵士をなぎ倒していく。
「この程度で止められるとお思いですか?」
最後の一人を倒した後、バルダス国王へ振り向き問いかけた。
「あ、ああ……」
予想外の結果にバルダス国王は恐れおののき、青白い顔をセイン王子に向ける。セイン王子がゆっくりとバルダス国王へと近づくとバルダス国王は後ずさり、足の震えからか後ろに転倒する。
「ローンズをも敵に回したということがどういうことか分かっていなかったようですね」
セイン王子の剣がバルダス国王の首筋をとらえると、そこから僅かに血がにじみ出た。
「ま、まて! 私はローンズは敵になど回していない! アトラスなんかと手を組まず、私と手を組み、この世界を意のままにしようじゃないか!」
バルダス国王は必死で訴えるがセイン王子は冷ややかな視線を投げる。
「そのことに何の意味があるのでしょうか……。この国もこの世界もあなたのためにあるのではない。ここに住む民のためにあることをあなたは知るべきだった……」
剣が首筋から顎下に移動し、バルダス国王の顔を上に向かせた。じっと見つめた後、セイン王子は醜いものを見るように顔を歪めた。
「あなたは……我が父と同じ目をしています。いや、少し違うか……。父は破壊を楽しんでいただけだったな……。ただ、己の欲望に人を巻き込み使い捨てるところは同じですが」
セイン王子の瞳は怒りに満ちていた。デール王国の街の様子を見たときから過去のローンズ王国と重ねており、バルダス国王を一目見て父を思い出した。
母は強い魔力を持っていたため、山奥の小さな村でひっそりと暮らしていた。父はどこからか噂を耳にしたらしく、村の民を人質に母を連れ去った。魔力を持つ自分の子供が欲しいがために――――。
「ギル、拘束を」
ギルはセイン王子に言われたとおり、バルダス国王に拘束魔法をかける。
「うっ……うぐぐ……」
バルダス国王はお尻をついた状態で全く身動きが取れなくなった。動くのは瞳だけ。
「ジェルミア様。後はお任せ致します」
セイン王子はバルダス国王を睨んだまま剣を鞘に収め、後ろへ下がる。まだ怒りはおさまってはいない。しかし、けじめとしてジェルミア王子に委ねることにした。
圧倒的な強さを見せつけられたジェルミア王子は、我に返ったかのように剣を握る手に力を込める。
「私はあなたを討ち、国王となります。私はもう立ち止まらない。この国の王として、民を幸せにしてみせましょう」
ジェルミア王子は、まるで自分に言い聞かせるかのように言葉をゆっくりとバルダス国王に落とした。
動けないまま、ただ死ぬのを待つ恐怖は計り知れない。バルダス国王の瞳には涙が滲んでいた。
剣を掲げ、ジェルミア王子が力いっぱい振り下ろす!
しかし、剣先はバルダス国王には触れず、ギリギリのところで止まった。
「……不要な者をただ排除するのでは、あなたと一緒になります」
ジェルミア王子が振り返り、セイン王子に視線を送る。
「セイン様、あなたは忘却魔法は使えますか?」
どういう意図なのかは分からなかったが、セイン王子は首肯で答えた。
ギルの魔法で見張りを眠らせるとジェルミア王子の側近ハイドが鍵を開ける。ハイドが先頭を切って部屋に入ると直ぐにぱっと部屋の明かりが付いた。
「やはりジェルミアか……。このような夜更けに訪れるとは穏やかではないな」
「バルダス……」
待っていたかのように部屋の奥からバルダス国王がゆらりと現れる。四人は身構えた。
「お前は母親に似て愚かだな。良いのは面だけだ」
バルダス国王が鼻で笑う。
「お前は母を辱しめただけではなく、侮辱までするのか!」
「あの女の体以外に何があるというのだ? むしろ私に感謝するべきだろう? ああ、これはセイン様。エーデルの体はお気に召して頂けましたかな? 母親に似て良い体をしているのでね、あっちの具合も良かったのではないでしょうか?」
ニタニタといやらしい笑みを浮かべるバルダス国王を見たジェルミア王子は、体中の血が頭に駆け上がったかのように表情を変えた。
「黙れ! 腐ったお前に母やエーデルのことを侮辱することは許さない!」
ジェルミア王子が剣を振りかざすとバルダス国王は持っていた剣で受け止めた。
金属音が室内に鳴り響く。
「国王に剣を向けるということがどういうことか分かっているのだろうな? たった四人? 私も舐められたものだな。さ、皆の者、やれ!」
バルダス国王はほくそ笑むと部屋のあちこちから兵士が現れ、あっという間に取り囲まれた。
「ああ、セイン様とそこの側近は生かして捕らえるように。大事な客人だからな」
広い室内ではあるが、八名の兵士と剣を交えるのは動きが制限される。セイン王子がギルに目配せをすると素早くセイン王子に速力向上魔法をかけた。向かってくる兵士にセイン王子は目にも止まらぬ速さで次々と兵士をなぎ倒していく。
「この程度で止められるとお思いですか?」
最後の一人を倒した後、バルダス国王へ振り向き問いかけた。
「あ、ああ……」
予想外の結果にバルダス国王は恐れおののき、青白い顔をセイン王子に向ける。セイン王子がゆっくりとバルダス国王へと近づくとバルダス国王は後ずさり、足の震えからか後ろに転倒する。
「ローンズをも敵に回したということがどういうことか分かっていなかったようですね」
セイン王子の剣がバルダス国王の首筋をとらえると、そこから僅かに血がにじみ出た。
「ま、まて! 私はローンズは敵になど回していない! アトラスなんかと手を組まず、私と手を組み、この世界を意のままにしようじゃないか!」
バルダス国王は必死で訴えるがセイン王子は冷ややかな視線を投げる。
「そのことに何の意味があるのでしょうか……。この国もこの世界もあなたのためにあるのではない。ここに住む民のためにあることをあなたは知るべきだった……」
剣が首筋から顎下に移動し、バルダス国王の顔を上に向かせた。じっと見つめた後、セイン王子は醜いものを見るように顔を歪めた。
「あなたは……我が父と同じ目をしています。いや、少し違うか……。父は破壊を楽しんでいただけだったな……。ただ、己の欲望に人を巻き込み使い捨てるところは同じですが」
セイン王子の瞳は怒りに満ちていた。デール王国の街の様子を見たときから過去のローンズ王国と重ねており、バルダス国王を一目見て父を思い出した。
母は強い魔力を持っていたため、山奥の小さな村でひっそりと暮らしていた。父はどこからか噂を耳にしたらしく、村の民を人質に母を連れ去った。魔力を持つ自分の子供が欲しいがために――――。
「ギル、拘束を」
ギルはセイン王子に言われたとおり、バルダス国王に拘束魔法をかける。
「うっ……うぐぐ……」
バルダス国王はお尻をついた状態で全く身動きが取れなくなった。動くのは瞳だけ。
「ジェルミア様。後はお任せ致します」
セイン王子はバルダス国王を睨んだまま剣を鞘に収め、後ろへ下がる。まだ怒りはおさまってはいない。しかし、けじめとしてジェルミア王子に委ねることにした。
圧倒的な強さを見せつけられたジェルミア王子は、我に返ったかのように剣を握る手に力を込める。
「私はあなたを討ち、国王となります。私はもう立ち止まらない。この国の王として、民を幸せにしてみせましょう」
ジェルミア王子は、まるで自分に言い聞かせるかのように言葉をゆっくりとバルダス国王に落とした。
動けないまま、ただ死ぬのを待つ恐怖は計り知れない。バルダス国王の瞳には涙が滲んでいた。
剣を掲げ、ジェルミア王子が力いっぱい振り下ろす!
しかし、剣先はバルダス国王には触れず、ギリギリのところで止まった。
「……不要な者をただ排除するのでは、あなたと一緒になります」
ジェルミア王子が振り返り、セイン王子に視線を送る。
「セイン様、あなたは忘却魔法は使えますか?」
どういう意図なのかは分からなかったが、セイン王子は首肯で答えた。
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