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第12章 二度目の恋
第151話 幸福な時間の先
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エリー王女の泊まっている宿の部屋で、セイン王子とエリー王女がベッドの上で並んで座っている。
「凄く素敵なお友達が出来たみたいで良かったね」
「はい。とっても優しくて素敵な友人なんです。サラはいつも――」
自分が褒められた時よりも嬉しくて、サラに関する話が次から次へと出てくる。セイン王子が優しく聞き入ってくれたため、エリー王女の言葉は止まらない。
「あはは、本当に大好きなんだね。嬉しいけど少し妬けちゃうな」
「えっ……ん……」
悪戯っぽく笑いながら唇を寄せる。
「冗談だよ。でもごめん。今、少しの間エリーを独り占めさせて」
もう一度唇が触れ、エリー王女は胸が高鳴るのを感じて瞳を閉じた。
ベッドに押し倒されると、二人の吐息が混ざり合う。
しかしその甘い空間の中に、隣の部屋から聞こえてくるアラン達の話す声も混ざってきた。
「あー……ここの壁、薄過ぎない? まぁ、自制が効いていいか」
そう呟いたあとも絡める舌は止まらない。
覆いかぶさるセイン王子の体に腕を回し、エリー王女は体が蕩けていくのを感じていた。
「エリーと……」
荒くなった息を整えながらセイン王子がエリー王女の首に顔を埋め、言葉をゆっくりと落としていく。
「こういう関係になれて、皆には迷惑かけちゃったけど……今は、セインに戻れてよかったって思ってる……。レイでいたら絶対に一緒にはなれないけど、今なら可能性があるから……」
「はい……。私も……今はそう思えます……」
結果だけを見れば、ではあるが、今は愛する人の腕の中にいる。
それだけで幸せだった。
「エリー……」
優しく囁く声と共に、エリー王女の首筋に舌が這う。背中がゾクッとなり、エリー王女から小さな声が漏れる。
「ここ……弱いよね……」
「セイン様……あっ……ダメ……声が……ん……」
「うん……ごめんね、つい……」
セイン王子が顔を上げ、苦笑いを浮かべた。
出来ることならもっと触れ合っていたい。
言葉に出来ない代わりに、セイン王子の頬を撫でた。
「エリー……好きだよ……エリーが他の人を選んでいなくて本当に良かった……」
「はい……選んでいたら、私、後悔していたと思います……」
微笑み合う二人の間に、幸せな時間がゆっくりと流れていった――――。
◇
それから五日後。
エリー王女とサラはローンズ王国にある学校の備品を見させてもらっていた。倉庫は物で溢れており、見たことのない品も沢山ある。気になるものがあれば後で聞いて欲しいとのことだった。
「これは何に使うのでしょう?」
「何だろう? じゃ、それはこっちに置いておこう」
二人はせっせと品探しをする。
そこへ二人の教師が顔を出した。
「役に立ちそうなのはありましたか?」
「はい、お昼頃には終わらせますね」
「ゆっくりでいいですよ。あ、すみません。そちらの男性お二人に少しだけ手伝ってほしいのですが。この教壇を二階に運ばないといけないのですが、二人では重すぎて……」
倉庫に置いてある教壇は木製のためかなり重い。
アランとアルバートは顔を見合わせた。
エリー王女から離れることになってしまうが、ここは学校内である。入れるのは関係者だけのため、少し位なら大丈夫だろうと判断した。
「いいですよ」
アランとアルバートが倉庫から出ていくと、サラがエリー王女にすり寄ってくる。
「あれから彼、毎日来てくれて良かったね」
「はい! 短い時間ではありますが、サラのお陰で楽しい時を過ごさせていただいております」
「ねぇねぇ……ちなみに……二人はどこまでいってるの?」
サラが声を潜めて問いかけた。
「どこまでとは?」
笑顔で首を傾げるエリー王女に「そうよね、伝わらないわよね」と一人ごちている。
「キスとか……した?」
「え!? あ、あの……しました……」
普段はアランやアルバートに筒抜けであり、聞かれてもエリー王女は恥ずかしいとは思ったことがない。それなのに、何故かサラに聞かれるのは恥ずかしかった。
「わぁ、やっぱりそうよね。どんな感じなんだろう?」
「そうですね……とても幸せな気持ちになります」
「いいな、私も……い、いや何でもない。うん、別に想像したとかじゃなくて……ああああ! 作業しなきゃ作業! うん」
サラは顔を真っ赤に染めて後ろを向いて黙々と備品を漁り始めた。
「私、もっとサラの話が聞きたいです」
「いいの、いいの! ほら、早く探そう!」
「はい、じゃ、終わったら聞かせてくださいね」
エリー王女はくすくすと笑う。
そこにふわっと甘い匂いが鼻腔をくすぐってきた。
「いい匂い。何か蓋を開けました?」
「ううん、私は何もしてないよ? あ、本当、いい匂い。窓も開いてないのにどこから匂うんだろう? あ、あれ……」
サラの体がぐらっと傾いた。
エリー王女もまた景色が歪み額を抑える。
「まさか……」
――――睡眠魔法薬。
アランたちに知らせなければとポケットから音玉を取り出すものの、力が入らず転がっていく。
そのまま意識が遠のき、その場に倒れた。
現実と夢の狭間で声が聞こえる……。
「おい、王女はどっちだ?」
「顔なんて知らん、どっちも連れていけば良い。早く行かないとあいつらが戻ってくる」
どうしよう……。
助けて……。
セイン様――――。
「凄く素敵なお友達が出来たみたいで良かったね」
「はい。とっても優しくて素敵な友人なんです。サラはいつも――」
自分が褒められた時よりも嬉しくて、サラに関する話が次から次へと出てくる。セイン王子が優しく聞き入ってくれたため、エリー王女の言葉は止まらない。
「あはは、本当に大好きなんだね。嬉しいけど少し妬けちゃうな」
「えっ……ん……」
悪戯っぽく笑いながら唇を寄せる。
「冗談だよ。でもごめん。今、少しの間エリーを独り占めさせて」
もう一度唇が触れ、エリー王女は胸が高鳴るのを感じて瞳を閉じた。
ベッドに押し倒されると、二人の吐息が混ざり合う。
しかしその甘い空間の中に、隣の部屋から聞こえてくるアラン達の話す声も混ざってきた。
「あー……ここの壁、薄過ぎない? まぁ、自制が効いていいか」
そう呟いたあとも絡める舌は止まらない。
覆いかぶさるセイン王子の体に腕を回し、エリー王女は体が蕩けていくのを感じていた。
「エリーと……」
荒くなった息を整えながらセイン王子がエリー王女の首に顔を埋め、言葉をゆっくりと落としていく。
「こういう関係になれて、皆には迷惑かけちゃったけど……今は、セインに戻れてよかったって思ってる……。レイでいたら絶対に一緒にはなれないけど、今なら可能性があるから……」
「はい……。私も……今はそう思えます……」
結果だけを見れば、ではあるが、今は愛する人の腕の中にいる。
それだけで幸せだった。
「エリー……」
優しく囁く声と共に、エリー王女の首筋に舌が這う。背中がゾクッとなり、エリー王女から小さな声が漏れる。
「ここ……弱いよね……」
「セイン様……あっ……ダメ……声が……ん……」
「うん……ごめんね、つい……」
セイン王子が顔を上げ、苦笑いを浮かべた。
出来ることならもっと触れ合っていたい。
言葉に出来ない代わりに、セイン王子の頬を撫でた。
「エリー……好きだよ……エリーが他の人を選んでいなくて本当に良かった……」
「はい……選んでいたら、私、後悔していたと思います……」
微笑み合う二人の間に、幸せな時間がゆっくりと流れていった――――。
◇
それから五日後。
エリー王女とサラはローンズ王国にある学校の備品を見させてもらっていた。倉庫は物で溢れており、見たことのない品も沢山ある。気になるものがあれば後で聞いて欲しいとのことだった。
「これは何に使うのでしょう?」
「何だろう? じゃ、それはこっちに置いておこう」
二人はせっせと品探しをする。
そこへ二人の教師が顔を出した。
「役に立ちそうなのはありましたか?」
「はい、お昼頃には終わらせますね」
「ゆっくりでいいですよ。あ、すみません。そちらの男性お二人に少しだけ手伝ってほしいのですが。この教壇を二階に運ばないといけないのですが、二人では重すぎて……」
倉庫に置いてある教壇は木製のためかなり重い。
アランとアルバートは顔を見合わせた。
エリー王女から離れることになってしまうが、ここは学校内である。入れるのは関係者だけのため、少し位なら大丈夫だろうと判断した。
「いいですよ」
アランとアルバートが倉庫から出ていくと、サラがエリー王女にすり寄ってくる。
「あれから彼、毎日来てくれて良かったね」
「はい! 短い時間ではありますが、サラのお陰で楽しい時を過ごさせていただいております」
「ねぇねぇ……ちなみに……二人はどこまでいってるの?」
サラが声を潜めて問いかけた。
「どこまでとは?」
笑顔で首を傾げるエリー王女に「そうよね、伝わらないわよね」と一人ごちている。
「キスとか……した?」
「え!? あ、あの……しました……」
普段はアランやアルバートに筒抜けであり、聞かれてもエリー王女は恥ずかしいとは思ったことがない。それなのに、何故かサラに聞かれるのは恥ずかしかった。
「わぁ、やっぱりそうよね。どんな感じなんだろう?」
「そうですね……とても幸せな気持ちになります」
「いいな、私も……い、いや何でもない。うん、別に想像したとかじゃなくて……ああああ! 作業しなきゃ作業! うん」
サラは顔を真っ赤に染めて後ろを向いて黙々と備品を漁り始めた。
「私、もっとサラの話が聞きたいです」
「いいの、いいの! ほら、早く探そう!」
「はい、じゃ、終わったら聞かせてくださいね」
エリー王女はくすくすと笑う。
そこにふわっと甘い匂いが鼻腔をくすぐってきた。
「いい匂い。何か蓋を開けました?」
「ううん、私は何もしてないよ? あ、本当、いい匂い。窓も開いてないのにどこから匂うんだろう? あ、あれ……」
サラの体がぐらっと傾いた。
エリー王女もまた景色が歪み額を抑える。
「まさか……」
――――睡眠魔法薬。
アランたちに知らせなければとポケットから音玉を取り出すものの、力が入らず転がっていく。
そのまま意識が遠のき、その場に倒れた。
現実と夢の狭間で声が聞こえる……。
「おい、王女はどっちだ?」
「顔なんて知らん、どっちも連れていけば良い。早く行かないとあいつらが戻ってくる」
どうしよう……。
助けて……。
セイン様――――。
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