150 / 235
第12章 二度目の恋
第150話 僅かな時間
しおりを挟む
セイン王子とエリー王女が抱き合う姿を見て、サラは驚き顔を真っ赤に染めた。
出会ったのが五日前。
それから会っていない……え?
もうこんなに進展してるの?
サラはエリー王女の大胆な行動に驚いていた。
「サラさん……でしたよね? すみません、少しだけエリーさんをお借りしても宜しいですか?」
セイン王子がエリー王女の髪を優しく撫でるとサラに視線を移す。
目が合ったサラはまじまじと顔を見つめた。
エリーが一目惚れするのも頷ける。
K地区の人にはない品のよさ!
きっとエリーと同じ、どこかのお金持ちなんだろう。
でもどこかで見たことがあるような気がする……。
「サラさん?」
「え? えぇ、もちろん! ごゆっくり!」
セイン王子の胸の中にいたエリー王女が顔を上げる。
「どこかへ行かれるのですか? その前にサラに紹介しなくては。サラ、先ほど話していたセイン様です」
「あ、始めまして。エリーと同じ教員のサラと申します」
「挨拶が遅れてすみません。セインです」
セインが手を差し出すと、サラは慌てて握手を交わした。
「では、アランとアルバートを呼んできますね」
「ちょちょちょちょちょっ! エリー!」
当たり前のように二人を呼びに行こうとするエリー王女を呼び止めた。
「ちょちょちょちょちょ? サラ、どうしたのですか?」
微笑みながら首を傾げるエリー王女を見て、肩の力が抜ける。
「えっと……デートするのに四人で行くってこと?」
「はい、そのつもりですが……ダメでしょうか? あ、サラも一緒に行きますか?」
「ええええ。そうじゃないの、そうじゃないのよ、エリー。えっと……」
嬉しそうに手を合わせているのを見て、サラは苦笑いを溢した。
「ほら、デートというものは二人でするものなのよ。他の人が付いていったら邪魔じゃないかしら? しかも男二人が付いて行くって……。せっかく会えたのだから……」
サラがちらっと窺うようにセイン王子に視線を送ると、にこっと笑顔を返してきた。
「そうですね、俺も二人っきりが嬉しいかな。でも、大丈夫ですよ。エリーがそれだけ大事にされている方なのであれば、俺が我慢しないとですしね」
「わー……凄い器が広~い……。あ、声に出てた。あはは、すみません。エリーの相手があなたで良かったって思います。本当、嬉しい! あ、じゃあ私が呼んで来ます! 少しでも二人の時間があった方がいいじゃない? ね、そうしよう! 行ってきます!」
無理やり二人を部屋の奥に押し込んで、サラは部屋を出た。
ふぅと息を吐き、隣の部屋に視線を移すとアラン達の部屋の前に一人の男性が立っている。
ゆっくり近づくと男がサラを見た。
「あ、こんばんは。突然お邪魔してすみません。しかも、お気遣い頂いたようでありがとうございます」
「こんばんは。お付きの人ですか? あ、アラン。今――」
「ああ、今ギルから聞いた。まぁ、二人とも入れ」
サラは言われるがまま中に入ったものの、狭いホテルの部屋に大人の男三人と集まるのはなんだか落ち着かない。
「サラちゃん、なんでそんなとこに立ってるの? ここ座って良いよ~」
入り口に立っていることに気が付いたアルバートがニコニコとベッドを叩いた。
「ううん。えっと、ここで大丈夫! ありがとう!」
「サラさん、こんばんは。始めまして、ギルと申します。今日は突然すみません。そんなに時間はないので、もう少ししたら帰ります。ご迷惑かとは思いますが、お部屋とエリーさんをお貸しして頂けますか?」
「はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。私は全然構いませんが……」
長い時間、部屋に二人っきりにしても良いのかとチラリとアランを見る。
「ああ、セインなら大丈夫だ」
「そう……それなら良いと思います」
お目付け役のアランが良いというなら断る理由もない。
サラは笑顔をギルに向けた。
「ありがとうございます。確かあと一週間はこちらに滞在されるんでしたよね? あと一、二回はこちらに顔を出しに来るかもしれません」
「あ……もう会えなくなってしまうんですね……。私のことは気にしなくていいので、いつでも来てください。エリーがそちらに伺うのでも良いと思いますし。ね、アラン!」
アトラス王国に戻ればもっと会えなくなってしまう。
サラは少しでも長く一緒にいてほしいと思った。
「サラ、ありがとな」
めったにないアランの笑顔が向けられる。
「えっ……う、うん。エリーのためだし! あ、じゃあ私、時間までそこにいていいよって言って来るね!!」
サラはさっと体を反転させ、顔を見られないように急いで部屋を出て行った。
「お前の無自覚な笑顔は罪だな……」
「……なんの話だ?」
「なんの話です?」
アランとギルの問いにアルバートは「なんでもねぇ」と言いながら笑った。
出会ったのが五日前。
それから会っていない……え?
もうこんなに進展してるの?
サラはエリー王女の大胆な行動に驚いていた。
「サラさん……でしたよね? すみません、少しだけエリーさんをお借りしても宜しいですか?」
セイン王子がエリー王女の髪を優しく撫でるとサラに視線を移す。
目が合ったサラはまじまじと顔を見つめた。
エリーが一目惚れするのも頷ける。
K地区の人にはない品のよさ!
きっとエリーと同じ、どこかのお金持ちなんだろう。
でもどこかで見たことがあるような気がする……。
「サラさん?」
「え? えぇ、もちろん! ごゆっくり!」
セイン王子の胸の中にいたエリー王女が顔を上げる。
「どこかへ行かれるのですか? その前にサラに紹介しなくては。サラ、先ほど話していたセイン様です」
「あ、始めまして。エリーと同じ教員のサラと申します」
「挨拶が遅れてすみません。セインです」
セインが手を差し出すと、サラは慌てて握手を交わした。
「では、アランとアルバートを呼んできますね」
「ちょちょちょちょちょっ! エリー!」
当たり前のように二人を呼びに行こうとするエリー王女を呼び止めた。
「ちょちょちょちょちょ? サラ、どうしたのですか?」
微笑みながら首を傾げるエリー王女を見て、肩の力が抜ける。
「えっと……デートするのに四人で行くってこと?」
「はい、そのつもりですが……ダメでしょうか? あ、サラも一緒に行きますか?」
「ええええ。そうじゃないの、そうじゃないのよ、エリー。えっと……」
嬉しそうに手を合わせているのを見て、サラは苦笑いを溢した。
「ほら、デートというものは二人でするものなのよ。他の人が付いていったら邪魔じゃないかしら? しかも男二人が付いて行くって……。せっかく会えたのだから……」
サラがちらっと窺うようにセイン王子に視線を送ると、にこっと笑顔を返してきた。
「そうですね、俺も二人っきりが嬉しいかな。でも、大丈夫ですよ。エリーがそれだけ大事にされている方なのであれば、俺が我慢しないとですしね」
「わー……凄い器が広~い……。あ、声に出てた。あはは、すみません。エリーの相手があなたで良かったって思います。本当、嬉しい! あ、じゃあ私が呼んで来ます! 少しでも二人の時間があった方がいいじゃない? ね、そうしよう! 行ってきます!」
無理やり二人を部屋の奥に押し込んで、サラは部屋を出た。
ふぅと息を吐き、隣の部屋に視線を移すとアラン達の部屋の前に一人の男性が立っている。
ゆっくり近づくと男がサラを見た。
「あ、こんばんは。突然お邪魔してすみません。しかも、お気遣い頂いたようでありがとうございます」
「こんばんは。お付きの人ですか? あ、アラン。今――」
「ああ、今ギルから聞いた。まぁ、二人とも入れ」
サラは言われるがまま中に入ったものの、狭いホテルの部屋に大人の男三人と集まるのはなんだか落ち着かない。
「サラちゃん、なんでそんなとこに立ってるの? ここ座って良いよ~」
入り口に立っていることに気が付いたアルバートがニコニコとベッドを叩いた。
「ううん。えっと、ここで大丈夫! ありがとう!」
「サラさん、こんばんは。始めまして、ギルと申します。今日は突然すみません。そんなに時間はないので、もう少ししたら帰ります。ご迷惑かとは思いますが、お部屋とエリーさんをお貸しして頂けますか?」
「はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。私は全然構いませんが……」
長い時間、部屋に二人っきりにしても良いのかとチラリとアランを見る。
「ああ、セインなら大丈夫だ」
「そう……それなら良いと思います」
お目付け役のアランが良いというなら断る理由もない。
サラは笑顔をギルに向けた。
「ありがとうございます。確かあと一週間はこちらに滞在されるんでしたよね? あと一、二回はこちらに顔を出しに来るかもしれません」
「あ……もう会えなくなってしまうんですね……。私のことは気にしなくていいので、いつでも来てください。エリーがそちらに伺うのでも良いと思いますし。ね、アラン!」
アトラス王国に戻ればもっと会えなくなってしまう。
サラは少しでも長く一緒にいてほしいと思った。
「サラ、ありがとな」
めったにないアランの笑顔が向けられる。
「えっ……う、うん。エリーのためだし! あ、じゃあ私、時間までそこにいていいよって言って来るね!!」
サラはさっと体を反転させ、顔を見られないように急いで部屋を出て行った。
「お前の無自覚な笑顔は罪だな……」
「……なんの話だ?」
「なんの話です?」
アランとギルの問いにアルバートは「なんでもねぇ」と言いながら笑った。
0
人物紹介
大きいサイズで見る
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説

今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪妃になんて、ならなきゃよかった
よつば猫
恋愛
表紙のめちゃくちゃ素敵なイラストは、二ノ前ト月先生からいただきました✨🙏✨
恋人と引き裂かれたため、悪妃になって離婚を狙っていたヴィオラだったが、王太子の溺愛で徐々に……
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる