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第07章 潜入捜査
第088話 ハーネイス
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レイは今、アトラス王国の西の都シルバドールに来ていた。ここを統治するのはシトラル国王の弟の息子サイラスである。
シトラル国王の弟は既に亡くなっており、その妻であるハーネイスはこのシルバドールで毎晩のように宴を開き、贅を尽くした華やかな生活を送っていた。
レイの任務はこのエリー王女の叔母であるハーネイスの屋敷に潜入することだった。
潜入した諜報員の報告にジェルドが何か引っ掛かると言っていた場所である。
レイは髪を本来のストレートに戻し、目立たぬよう黒く染め、黒縁の眼鏡に黒のジャケットを羽織った。真面目な好青年といった印象である。
そして名前をシリルに変え、使用人として屋敷に潜入した。
「スーダムル育成所からの紹介状を」
シルバドールの中で一番大きな屋敷の前には趣味の悪いきらびやかな金色の門が閉まっている。その前にいた使用人であろう若くて顔のきれいな男に紹介状を渡した。
使用人になるためには一度育成所で研修を受ける必要がある。そこためジェルドから用意してもらった偽造の紹介状を使用した。好成績で修めたと記してある。
「シリルさんですね。ダレンさんがお待ちです」
使用人は頭から爪先まで舐めるように見てから屋敷へと案内した。
屋敷の中には見せびらかすように多くの美術品が飾られている。恐らく一つ一つ良い品なのであろうが、なんとも趣味の悪い屋敷だった。窓には重厚なカーテンが閉め切られ、中は薄暗い。
不気味な屋敷だ。
通された部屋に入ると初老の男性が待っていた。この屋敷の執事のダレンである。男は早速、老眼鏡をかけ紹介状に目を通し始めた。
「ふむ……」
招待状から目を離し、眼鏡をを下にずらすと上目でじろじろとレイを見た。
「ハーネイス様が好きそうな美青年だな。では、こちらへ」
しわがれた声でレイを隣の部屋へ案内する。そこには多くの制服がかけられていた。
「ここに制服がある。毎日ここで新しいものと交換しなさい。汚れた制服はここに。担当が洗う」
ダレンが沢山並んだ制服の中から一着を選ぶと、それをレイに渡した。
「今すぐこれに着替えなさい。先にハーネイス様にご挨拶をする」
言われた通りその場で制服に着替えると、直ぐにダレンと部屋を出た。三階の奥まった所に、これまた金の装飾が施された立派な扉が現れる。
ダレンが扉を叩くと中から美しい顔をした青年が扉を開けた。
その瞬間、むせかえるような甘い匂いが立ち込める。レイは思わず顔をしかめた。
魔法?
僅かに魔力を感じた。魔法を使えない者であれば魔力に対する抵抗力が低いため、何らかの効果を発揮するのだろう。レイは警戒しながら部屋の中へ足を踏み入れた。
まだ昼すぎだというのにこの部屋もカーテンは閉め切られ、中は薄暗い。
「ハーネイス様、お連れいたしました」
程ドアを開けた使用人が奥にある天蓋のかけられたベッドに向かって声をかけた。天蓋の中には薄灯りが灯っており二つの影が揺れている。
中にいた使用人が天蓋のカーテンを僅かに開くと、裸の男が一瞬見えた。女にガウンを羽織らせている影が動く。そこをじっと見ていると、カーテンの隙間からゆっくりと艶かしい足がするりと伸びた。
使用人の条件は容姿の良い男のみだった。レイは理由を察し、眉間に皺を寄せる。
この匂いは媚薬、または洗脳の効果があるのかもしれない。
「お前が新しい使用人か。こちらへ」
ハーネイスが細かい装飾を施された豪華な長椅子に腰を下ろし、レイを目の前にひざまずかせる。閉じた扇子でレイの顎を持ち上げ、舐めまわすように見つめた。
「美しい顔だな……」
ハーネイスは満足そうに笑みを浮かべる。
年齢は四十二歳と聞いていたが、若く見えるその容貌と妖艶な雰囲気にレイは背筋がぞくっとした。
「私は美しいものが好きなのよ。たっぷり働いて私を満足させなさい」
--------
↑ジェルド
↑サイラス
シトラル国王の弟は既に亡くなっており、その妻であるハーネイスはこのシルバドールで毎晩のように宴を開き、贅を尽くした華やかな生活を送っていた。
レイの任務はこのエリー王女の叔母であるハーネイスの屋敷に潜入することだった。
潜入した諜報員の報告にジェルドが何か引っ掛かると言っていた場所である。
レイは髪を本来のストレートに戻し、目立たぬよう黒く染め、黒縁の眼鏡に黒のジャケットを羽織った。真面目な好青年といった印象である。
そして名前をシリルに変え、使用人として屋敷に潜入した。
「スーダムル育成所からの紹介状を」
シルバドールの中で一番大きな屋敷の前には趣味の悪いきらびやかな金色の門が閉まっている。その前にいた使用人であろう若くて顔のきれいな男に紹介状を渡した。
使用人になるためには一度育成所で研修を受ける必要がある。そこためジェルドから用意してもらった偽造の紹介状を使用した。好成績で修めたと記してある。
「シリルさんですね。ダレンさんがお待ちです」
使用人は頭から爪先まで舐めるように見てから屋敷へと案内した。
屋敷の中には見せびらかすように多くの美術品が飾られている。恐らく一つ一つ良い品なのであろうが、なんとも趣味の悪い屋敷だった。窓には重厚なカーテンが閉め切られ、中は薄暗い。
不気味な屋敷だ。
通された部屋に入ると初老の男性が待っていた。この屋敷の執事のダレンである。男は早速、老眼鏡をかけ紹介状に目を通し始めた。
「ふむ……」
招待状から目を離し、眼鏡をを下にずらすと上目でじろじろとレイを見た。
「ハーネイス様が好きそうな美青年だな。では、こちらへ」
しわがれた声でレイを隣の部屋へ案内する。そこには多くの制服がかけられていた。
「ここに制服がある。毎日ここで新しいものと交換しなさい。汚れた制服はここに。担当が洗う」
ダレンが沢山並んだ制服の中から一着を選ぶと、それをレイに渡した。
「今すぐこれに着替えなさい。先にハーネイス様にご挨拶をする」
言われた通りその場で制服に着替えると、直ぐにダレンと部屋を出た。三階の奥まった所に、これまた金の装飾が施された立派な扉が現れる。
ダレンが扉を叩くと中から美しい顔をした青年が扉を開けた。
その瞬間、むせかえるような甘い匂いが立ち込める。レイは思わず顔をしかめた。
魔法?
僅かに魔力を感じた。魔法を使えない者であれば魔力に対する抵抗力が低いため、何らかの効果を発揮するのだろう。レイは警戒しながら部屋の中へ足を踏み入れた。
まだ昼すぎだというのにこの部屋もカーテンは閉め切られ、中は薄暗い。
「ハーネイス様、お連れいたしました」
程ドアを開けた使用人が奥にある天蓋のかけられたベッドに向かって声をかけた。天蓋の中には薄灯りが灯っており二つの影が揺れている。
中にいた使用人が天蓋のカーテンを僅かに開くと、裸の男が一瞬見えた。女にガウンを羽織らせている影が動く。そこをじっと見ていると、カーテンの隙間からゆっくりと艶かしい足がするりと伸びた。
使用人の条件は容姿の良い男のみだった。レイは理由を察し、眉間に皺を寄せる。
この匂いは媚薬、または洗脳の効果があるのかもしれない。
「お前が新しい使用人か。こちらへ」
ハーネイスが細かい装飾を施された豪華な長椅子に腰を下ろし、レイを目の前にひざまずかせる。閉じた扇子でレイの顎を持ち上げ、舐めまわすように見つめた。
「美しい顔だな……」
ハーネイスは満足そうに笑みを浮かべる。
年齢は四十二歳と聞いていたが、若く見えるその容貌と妖艶な雰囲気にレイは背筋がぞくっとした。
「私は美しいものが好きなのよ。たっぷり働いて私を満足させなさい」
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↑ジェルド
↑サイラス
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