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第06章 真実
第078話 真実
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レイはローブを目深にかぶり、人目につかないようローンズ王国へ向かった。通常であれば十日ほどかかる距離。風の魔法を使い、馬にかかる負担を軽減しながら常にスピードを出し続けた。
そして四日後。
まだ太陽が真上にある頃にローンズ王国の城下町に到着した。
宿を借り部屋で女体化用の魔法薬を使う。
女性の姿になったレイは用意されていたカツラを被り、ローンズ城へと向かった。
いよいよリアム国王と会える。
セロードははっきりとしたことは教えてはくれなかった。
しかし、セロードの反応からしてレイの予想は大体合っているのだろう。
これで今までの謎が解けるのだ。
いざ城門前に来ると足がすくむ。
リアム国王がどのような反応を示すのか全くわからなかった。
正直、会うのが恐ろしい。
「アトラス王国シトラル陛下の使者としてきました。これをリアム陛下に」
それでも怪しまれぬように背筋を伸ばし、お目通りを願う書簡を兵士に渡した。
九月上旬。
ローンズ王国にはもう冷たい風が吹き始めている。
レイは自分の腕を掴み、ただ静かにその場で案内されるのを待った。
◇
レイは謁見の間に通された。
玉座に座るリアム国王とその側に立つハル。壁には数名の騎士が立ち並ぶ。
レイは今、誰から見ても女性であり、ここにいる全員がレイだということを分かってはいない。
だからだろう。
先日一緒に食事を取ったり、気軽に話していた相手とは思えないほどリアム国王は高圧的な雰囲気であった。これが普段他の者が見ているリアム国王の姿なのだ。
重苦しい空気の中、レイは跪き頭を深く下げた。
「突然の訪問にも関わらず、謁見の許可を頂きありがとうございます。これをシトラル国王からお預かりして参りました」
そのままの状態で機密文書である書簡を前に差し出す。
台座からハルが降りてくると、それを受け取った。
「直ぐにお目通しいただきたくお願い申し上げます」
レイが言葉を付け加える。
ハルから書簡を受け取ったリアム国王は直ぐに読み始めた。
レイの耳にはカサカサと紙がこすれる音がやけに大きく聞こえる。
顔を覗き見してみれば、リアム国王が顔をしかめ目元を抑える姿が見えた。
良くない内容であることは明らかだった。
リアム国王が軽く手をあげるとハルがリアム国王の口許に耳を寄せる。ハルが頷くとリアム国王は立ち上がり、その場から立ち去った。
残されたレイは震える手をぐっと握り締める。
「使者の者。私に付いてきて頂けますか」
「……はい」
ハルに案内されたのはリアム国王の私室だった。
窓際でリアム国王が立って待っている。
リアム国王は目を細め、探るようにレイを見つめた。
レイは震える足で歩み寄る。
「お前はレイ……なのだな?」
「はい。このような姿で申し訳ございません」
レイは跪き、カツラを外す。
リアム国王の鋭い視線を正面から真っすぐ見据えた。
「……この書簡に書かれている内容は知っているのか」
「いえ、知らされておりません」
「ならば、お前の記憶を戻してから話そう」
「記憶を……リアム陛下が私の記憶を消したのですか?」
世界が歪み、ズブズブと沼に足が埋まっていくようだった。
「そうだ。私が記憶を消した」
予想していた答え。
それは喜ばしいものではなかった。
犯した罪は大きい。
レイは瞳を閉じ、頭を垂らした。
「申し訳ございません……」
「知っているのだな……お前が誰であるのか……」
「いえ……まだ……」
まだ……。
はっきりと知っているわけではない。
レイはそう答え、言葉を噤(つぐ)んだ。
リアム国王がゆっくりと近づいてくる気配がし、レイは顔を上げた。
「陛下……」
そこにあった顔はとても優しいもので、レイは息が詰まる。
何故だか分からないが胸が締め付けられ泣きたくなった。
リアム国王は片ひざを付くと、レイの肩に右手を乗せる。
「もう気づいているとは思うが……お前はセインだ」
そして四日後。
まだ太陽が真上にある頃にローンズ王国の城下町に到着した。
宿を借り部屋で女体化用の魔法薬を使う。
女性の姿になったレイは用意されていたカツラを被り、ローンズ城へと向かった。
いよいよリアム国王と会える。
セロードははっきりとしたことは教えてはくれなかった。
しかし、セロードの反応からしてレイの予想は大体合っているのだろう。
これで今までの謎が解けるのだ。
いざ城門前に来ると足がすくむ。
リアム国王がどのような反応を示すのか全くわからなかった。
正直、会うのが恐ろしい。
「アトラス王国シトラル陛下の使者としてきました。これをリアム陛下に」
それでも怪しまれぬように背筋を伸ばし、お目通りを願う書簡を兵士に渡した。
九月上旬。
ローンズ王国にはもう冷たい風が吹き始めている。
レイは自分の腕を掴み、ただ静かにその場で案内されるのを待った。
◇
レイは謁見の間に通された。
玉座に座るリアム国王とその側に立つハル。壁には数名の騎士が立ち並ぶ。
レイは今、誰から見ても女性であり、ここにいる全員がレイだということを分かってはいない。
だからだろう。
先日一緒に食事を取ったり、気軽に話していた相手とは思えないほどリアム国王は高圧的な雰囲気であった。これが普段他の者が見ているリアム国王の姿なのだ。
重苦しい空気の中、レイは跪き頭を深く下げた。
「突然の訪問にも関わらず、謁見の許可を頂きありがとうございます。これをシトラル国王からお預かりして参りました」
そのままの状態で機密文書である書簡を前に差し出す。
台座からハルが降りてくると、それを受け取った。
「直ぐにお目通しいただきたくお願い申し上げます」
レイが言葉を付け加える。
ハルから書簡を受け取ったリアム国王は直ぐに読み始めた。
レイの耳にはカサカサと紙がこすれる音がやけに大きく聞こえる。
顔を覗き見してみれば、リアム国王が顔をしかめ目元を抑える姿が見えた。
良くない内容であることは明らかだった。
リアム国王が軽く手をあげるとハルがリアム国王の口許に耳を寄せる。ハルが頷くとリアム国王は立ち上がり、その場から立ち去った。
残されたレイは震える手をぐっと握り締める。
「使者の者。私に付いてきて頂けますか」
「……はい」
ハルに案内されたのはリアム国王の私室だった。
窓際でリアム国王が立って待っている。
リアム国王は目を細め、探るようにレイを見つめた。
レイは震える足で歩み寄る。
「お前はレイ……なのだな?」
「はい。このような姿で申し訳ございません」
レイは跪き、カツラを外す。
リアム国王の鋭い視線を正面から真っすぐ見据えた。
「……この書簡に書かれている内容は知っているのか」
「いえ、知らされておりません」
「ならば、お前の記憶を戻してから話そう」
「記憶を……リアム陛下が私の記憶を消したのですか?」
世界が歪み、ズブズブと沼に足が埋まっていくようだった。
「そうだ。私が記憶を消した」
予想していた答え。
それは喜ばしいものではなかった。
犯した罪は大きい。
レイは瞳を閉じ、頭を垂らした。
「申し訳ございません……」
「知っているのだな……お前が誰であるのか……」
「いえ……まだ……」
まだ……。
はっきりと知っているわけではない。
レイはそう答え、言葉を噤(つぐ)んだ。
リアム国王がゆっくりと近づいてくる気配がし、レイは顔を上げた。
「陛下……」
そこにあった顔はとても優しいもので、レイは息が詰まる。
何故だか分からないが胸が締め付けられ泣きたくなった。
リアム国王は片ひざを付くと、レイの肩に右手を乗せる。
「もう気づいているとは思うが……お前はセインだ」
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