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第06章 真実
第076話 エリー王女のお願い
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アランを携えシトラル国王の部屋を訪ねるとそこにはセロードもいた。執務机に座るシトラル国王とセロードは何か話していたようで、部屋中どこかピリピリとしている。そんな様子にエリー王女は気圧された。
「おはようございます、お父様。今日はお時間を頂きましてありがとうございます。今、大丈夫でしょうか?」
エリー王女と目が合った際、僅かに目を伏せたような気がした。しかしそれは一瞬で勘違いだったかなと思うほどだった。今はいつもの優しい父親の笑みを浮かべている。
「おはよう、エリー。もちろん大丈夫だよ。今日は何をそんなに緊張しているのかな? さ、こちらに来なさい」
ソファーに座るよう促されエリー王女が座ると、シトラル国王はその隣に座った。
「あの……実はお父様にお願いがございます」
「お願い?」
シトラル国王の眉毛がぴくりと動く。
「はい……国王を選ぶに当たりまして、私も政治に参加させて頂けないでしょうか」
姿勢を正し、まっすぐ見つめた。シトラル国王はじっとエリー王女の目を見ている。どういう反応が返ってくるのか全く分からず、エリー王女は自分の手をぎゅっと握りしめた。
「なるほど……。理由は?」
「はい、ただお会いしただけでは王としての資質を見出だすことができませんでした。私が政治に参加することによって皆様の考え方も見えてくると思います」
今度はシトラル国王の眉間に皺が寄る。
「では、リストに上がった者からちゃんと選ぶつもりでいるのだね?」
「……はい。ですが……」
否定的な言葉を言った瞬間、ピリっと空気が変わったような気がした。シトラル国王に笑顔はない。今日のシトラル国王はどこかいつもと違うようにエリー王女は感じた。
しかし、ここで止めるわけにはいかないと自分を奮い立たせる。
エリー王女は拳を握りしめ、シトラル国王の目をしっかりと見つめた。
「ですが、もし、相手が見つからなかった場合は……私が王となります!」
言い放った後、シトラル国王は目を僅かに見開いた。そして額に手を当て、目を閉じ大きく息を吐く。どう見ても歓迎している様子はなかった。
「お父様……」
シトラル国王は手を上げてエリー王女の言葉を止める。
「そういうことか……」
静かに呟いたその声には怒気が含まれているような気がした。王になるなど簡単に口にしてしまったことに怒ってしまったのだろうか。エリー王女はただシトラル国王が話し出すのを待つことしか出来なかった。
「……わかった。お前に王になる気があることは嬉しいが、王になるには未熟すぎる。政治に参入することはそれを養うことにも適しているだろう。ただお前の命を狙っている者もすぐ傍にいる。そのため、城内で行われるもののみ許可をしよう」
「あ、ありがとうございますっ! 私、頑張りますっ!」
未だに目を合わせようとしないシトラル国王の様子は気になったが、エリー王女は許可をもらえたことに胸を撫で下ろした。
「では、本日午後から行われる会議に今日は見学をしなさい」
「はい。ありがとうございます」
シトラル国王は立ち上がりエリー王女にそう伝えると、後ろに控えたアランに視線を移す。
「この後すぐにセロードの私室に来るようレイに伝えなさい。彼には他の任を与える」
エリー王女は驚き、シトラル国王を見上げた。
「お父様? それはどういう……?」
「言葉の通りだ。エリーは午後の準備をしておくように」
話はこれで終わりだというようにシトラル国王は背を向けた。
「おはようございます、お父様。今日はお時間を頂きましてありがとうございます。今、大丈夫でしょうか?」
エリー王女と目が合った際、僅かに目を伏せたような気がした。しかしそれは一瞬で勘違いだったかなと思うほどだった。今はいつもの優しい父親の笑みを浮かべている。
「おはよう、エリー。もちろん大丈夫だよ。今日は何をそんなに緊張しているのかな? さ、こちらに来なさい」
ソファーに座るよう促されエリー王女が座ると、シトラル国王はその隣に座った。
「あの……実はお父様にお願いがございます」
「お願い?」
シトラル国王の眉毛がぴくりと動く。
「はい……国王を選ぶに当たりまして、私も政治に参加させて頂けないでしょうか」
姿勢を正し、まっすぐ見つめた。シトラル国王はじっとエリー王女の目を見ている。どういう反応が返ってくるのか全く分からず、エリー王女は自分の手をぎゅっと握りしめた。
「なるほど……。理由は?」
「はい、ただお会いしただけでは王としての資質を見出だすことができませんでした。私が政治に参加することによって皆様の考え方も見えてくると思います」
今度はシトラル国王の眉間に皺が寄る。
「では、リストに上がった者からちゃんと選ぶつもりでいるのだね?」
「……はい。ですが……」
否定的な言葉を言った瞬間、ピリっと空気が変わったような気がした。シトラル国王に笑顔はない。今日のシトラル国王はどこかいつもと違うようにエリー王女は感じた。
しかし、ここで止めるわけにはいかないと自分を奮い立たせる。
エリー王女は拳を握りしめ、シトラル国王の目をしっかりと見つめた。
「ですが、もし、相手が見つからなかった場合は……私が王となります!」
言い放った後、シトラル国王は目を僅かに見開いた。そして額に手を当て、目を閉じ大きく息を吐く。どう見ても歓迎している様子はなかった。
「お父様……」
シトラル国王は手を上げてエリー王女の言葉を止める。
「そういうことか……」
静かに呟いたその声には怒気が含まれているような気がした。王になるなど簡単に口にしてしまったことに怒ってしまったのだろうか。エリー王女はただシトラル国王が話し出すのを待つことしか出来なかった。
「……わかった。お前に王になる気があることは嬉しいが、王になるには未熟すぎる。政治に参入することはそれを養うことにも適しているだろう。ただお前の命を狙っている者もすぐ傍にいる。そのため、城内で行われるもののみ許可をしよう」
「あ、ありがとうございますっ! 私、頑張りますっ!」
未だに目を合わせようとしないシトラル国王の様子は気になったが、エリー王女は許可をもらえたことに胸を撫で下ろした。
「では、本日午後から行われる会議に今日は見学をしなさい」
「はい。ありがとうございます」
シトラル国王は立ち上がりエリー王女にそう伝えると、後ろに控えたアランに視線を移す。
「この後すぐにセロードの私室に来るようレイに伝えなさい。彼には他の任を与える」
エリー王女は驚き、シトラル国王を見上げた。
「お父様? それはどういう……?」
「言葉の通りだ。エリーは午後の準備をしておくように」
話はこれで終わりだというようにシトラル国王は背を向けた。
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