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第05章 偽装
第068話 アリスの見解
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アリスの記憶の中では自分以外に魔法を使える者はリアム陛下、故メーヴェル王妃、セイン王子、そして仮面の男だけだ。
そしてローンズ王国で起きたクーデターの後もリアム国王の側に付いていたはずの仮面の男は、ある日を境に姿を消した。
セイン王子はというと、クーデターの最中も、その後も全く姿を見せたことはない。体が弱いとは聞いていたが、ずっと一人で引きこもっているとは考えにくい。王子であるならばクーデター真っ最中、誰かが護衛につくはずなのだ。
そして不可解なことは今も続いている。
セイン王子の部屋は隔離され、入れるのはリアム国王、側近のハル、専属執事のみ。まるで何かを隠しているかのようだった。一部の者からはセイン王子は既に亡くなっているのではと、まことしやかに囁かれている――――。
「……それでね、私セイン様に仕えたことがあるっていう使用人を見つけたの。そしてどんなお姿をしていらっしゃるか聞いたわ。陛下にはあまり似てないらしいんだけど、整った可愛らしい顔をしていたって。薄い茶色の髪に緑がかった青い瞳……」
アリスはレイの瞳をじっと見つめた。
「……ん? ちょっと待って。今の話からすると、仮面の男が俺じゃないかって話だと思ってたけど、なんでセイン様が出てくるの?」
「それは私が仮面の男とセイン様が同一人物じゃないかと思ってるからよ」
「……え。ってことは……えっ?」
レイはアリスが言わんとしていることに気がつき混乱した。
「まだ確証は得てないわ。だけどセイン様の見た目ってレイみたいじゃない? 実はレイの写真もその人に見せたの。あっ、ほら、みんなで撮ったことあったでしょ? それをね」
何故か顔を赤くして慌ててるアリスだったが、レイは気にした様子もなく次の言葉を待っている。
「えっと……、で、でね? 見せたら、セイン様に似てるかもって。大きくなったらこんな感じになってるかもしれないって。レイがアトラスに現れたのは四年前。仮面の男が消えたのも大体四年前だと思う。これって繋がりがあるとしか思えない」
「いやっ……うーん……。確かに陛下もハルさんもセイン様に似てるって言っていたけど、それは年齢や魔法が使えるからであって……」
レイは、そう言われてみるとなくはない気もしてきた。ただ、あまりにも恐れ多すぎてそんなことを考えることも許されない気がした。
「んー……それにさ、セイン様がなぜ仮面で過ごさなければいけなかったの? 顔を知られてはいけない理由……何者かに狙われてたってこと? 何者かに連れ攫われて記憶を消されたとか? ……っ!」
「うん、そうかなって思ってる。もしそうなら、陛下にセイン様を返してあげたい」
このとき、レイは息を飲んでいたがアリスは気がつかなかった。
「陛下がレイと一緒にいるとき、とても楽しそうだった。あんな陛下、見たことないもの……。皆はエリー様を気に入られていたからだと思ってるみたいだけど、私は違うと思う」
「……うーん、やっぱりその線はないよ。セイン様かもって思ったらリアム陛下はなんとかしようとするんじゃない? そういう素振りはなかった。それに想い出の場所に色々連れて行って貰ったけど、俺は何も感じなかったし……だから違うよ」
レイは立ち上がりアリスを見て苦笑いを零した。
「ほら、陛下は記憶を戻そうとそういう場所に連れて行ったんだわ! 陛下も半信半疑なのよ! 私、ローンズに帰ったらセイン様のお部屋に忍び込もうかと思って。そしたら分かるじゃない? レイがセイン様ならそこには誰もいない。違うならセイン様が寝ていらっしゃるだけ」
アリスもまた立ち上がり真面目な顔でまっすぐ見据える。
「アリス……でも、それってバレたらまずいんじゃ……」
「そうね。でも大丈夫。私、こういうの得意だからバレない自信あるし。魔法も使えるし。あっ、一応言っておくけど、レイのためじゃないからね! いや、少しはあるけど、陛下のためよ!」
「うん……わかってる。でも無理はしないでね?」
「もちろん。ま、何か分かったら教える。レイ達もそっちで何か分かったら教えて。じゃ、アランにも伝えておいてね!」
自分の見解を伝えられてすっきりした顔のアリスに対し、レイの顔は僅かに曇っていた。
普段であればレイはアリスとの一件をアランに伝えたであろう。
だがレイはそうしなかった。
それはもう一つの仮説を立てていたからであった。
――――もしそうなら過去は知ってはならない。
そしてローンズ王国で起きたクーデターの後もリアム国王の側に付いていたはずの仮面の男は、ある日を境に姿を消した。
セイン王子はというと、クーデターの最中も、その後も全く姿を見せたことはない。体が弱いとは聞いていたが、ずっと一人で引きこもっているとは考えにくい。王子であるならばクーデター真っ最中、誰かが護衛につくはずなのだ。
そして不可解なことは今も続いている。
セイン王子の部屋は隔離され、入れるのはリアム国王、側近のハル、専属執事のみ。まるで何かを隠しているかのようだった。一部の者からはセイン王子は既に亡くなっているのではと、まことしやかに囁かれている――――。
「……それでね、私セイン様に仕えたことがあるっていう使用人を見つけたの。そしてどんなお姿をしていらっしゃるか聞いたわ。陛下にはあまり似てないらしいんだけど、整った可愛らしい顔をしていたって。薄い茶色の髪に緑がかった青い瞳……」
アリスはレイの瞳をじっと見つめた。
「……ん? ちょっと待って。今の話からすると、仮面の男が俺じゃないかって話だと思ってたけど、なんでセイン様が出てくるの?」
「それは私が仮面の男とセイン様が同一人物じゃないかと思ってるからよ」
「……え。ってことは……えっ?」
レイはアリスが言わんとしていることに気がつき混乱した。
「まだ確証は得てないわ。だけどセイン様の見た目ってレイみたいじゃない? 実はレイの写真もその人に見せたの。あっ、ほら、みんなで撮ったことあったでしょ? それをね」
何故か顔を赤くして慌ててるアリスだったが、レイは気にした様子もなく次の言葉を待っている。
「えっと……、で、でね? 見せたら、セイン様に似てるかもって。大きくなったらこんな感じになってるかもしれないって。レイがアトラスに現れたのは四年前。仮面の男が消えたのも大体四年前だと思う。これって繋がりがあるとしか思えない」
「いやっ……うーん……。確かに陛下もハルさんもセイン様に似てるって言っていたけど、それは年齢や魔法が使えるからであって……」
レイは、そう言われてみるとなくはない気もしてきた。ただ、あまりにも恐れ多すぎてそんなことを考えることも許されない気がした。
「んー……それにさ、セイン様がなぜ仮面で過ごさなければいけなかったの? 顔を知られてはいけない理由……何者かに狙われてたってこと? 何者かに連れ攫われて記憶を消されたとか? ……っ!」
「うん、そうかなって思ってる。もしそうなら、陛下にセイン様を返してあげたい」
このとき、レイは息を飲んでいたがアリスは気がつかなかった。
「陛下がレイと一緒にいるとき、とても楽しそうだった。あんな陛下、見たことないもの……。皆はエリー様を気に入られていたからだと思ってるみたいだけど、私は違うと思う」
「……うーん、やっぱりその線はないよ。セイン様かもって思ったらリアム陛下はなんとかしようとするんじゃない? そういう素振りはなかった。それに想い出の場所に色々連れて行って貰ったけど、俺は何も感じなかったし……だから違うよ」
レイは立ち上がりアリスを見て苦笑いを零した。
「ほら、陛下は記憶を戻そうとそういう場所に連れて行ったんだわ! 陛下も半信半疑なのよ! 私、ローンズに帰ったらセイン様のお部屋に忍び込もうかと思って。そしたら分かるじゃない? レイがセイン様ならそこには誰もいない。違うならセイン様が寝ていらっしゃるだけ」
アリスもまた立ち上がり真面目な顔でまっすぐ見据える。
「アリス……でも、それってバレたらまずいんじゃ……」
「そうね。でも大丈夫。私、こういうの得意だからバレない自信あるし。魔法も使えるし。あっ、一応言っておくけど、レイのためじゃないからね! いや、少しはあるけど、陛下のためよ!」
「うん……わかってる。でも無理はしないでね?」
「もちろん。ま、何か分かったら教える。レイ達もそっちで何か分かったら教えて。じゃ、アランにも伝えておいてね!」
自分の見解を伝えられてすっきりした顔のアリスに対し、レイの顔は僅かに曇っていた。
普段であればレイはアリスとの一件をアランに伝えたであろう。
だがレイはそうしなかった。
それはもう一つの仮説を立てていたからであった。
――――もしそうなら過去は知ってはならない。
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