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第04章 禁じられた恋
第052話 隠し事
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朝方でも夏の暑さは感じられる。マーサはじわりと滲み出る汗をハンカチで抑え、ポケットにしまった。持っている鍵で扉を開け、いつものようにエリー王女を起こしに行く。部屋中のカーテンを開けてから寝室へと向かい、そこのカーテンもゆっくりと開けた。
顔に明るい日差しがかかり、エリー王女は眩しそうに掛け布を頭にかぶる。
「おはようございます。朝になりましたのでお支度のご準備を」
マーサは優しく声をかけながらエリー王女に近づくと足元に何か落ちていることに気が付いた。
それを拾い上げると僅かに顔をしかめる。昨夜着ていたはずのガウンとベビードール……。
「エリー様。リアム陛下をお待たせするわけにはいきませんので、お早めに起きていただきませんと」
いつもと変わらぬ声色で声をかけながらも、マーサは辺りを見回し他に違和感がないかを探した。ベッドの周りやサイドテーブル。そしてエリー王女。
少し体が重いのか、エリー王女はいつもより気だるい雰囲気で目をこすり、ゆったりと体を起こしていた。
「おはようございます、マーサ……」
ふわりと微笑む姿はとても幸せそうで、マーサは少しほっとした。しかし、疑問は払拭されていない。
「一つお伺いいたしますが……何故そのような格好をしていらっしゃるのですか?」
ベッドの上にいるエリー王女はふくよかな胸を隠すことなくこちらに向けている。何を言っているのだろうとエリー王女は首をかしげていたが、何かに気が付いたように柔らかく笑みを浮かべた。
「……昨夜、すごく暑かったので脱いでしまいました」
今までどんなに暑くてもこのようなことは一度もなかった。それに部屋は魔法薬で快適な温度なのだ。マーサは不信感を募らせる。
「エリー様、いくら暑くても服を着たままでいてもらわないと困ります。もし何かあったら裸でお逃げになるおつもりですか?」
「そうですよね、次からはいたしません」
エリー王女は肩をすくんで見せ、ベッドからゆっくりと降りた。内心冷や冷やしながらもエリー王女はいつも通り鏡の前へと歩みを進める。
体が痛い。
普段全く使わない筋肉を使ったためか、様々な箇所が痛んだ。目覚めた時、すぐ傍にレイがいなかったことは残念ではあったが、幸せな気持ちはそのまま残っていた。その気持ちと体の痛みは、昨夜のことが鮮明に蘇えらせる。
レイの熱い瞳。触れ合う肌と肌。
ぬくもりを思い出し、一気に体が熱くなった。
レイは身を挺しエリー王女の気持ちに応えてくれたのだ。それは、何よりも偽りの愛ではないことを証明するものだった。レイに愛されていると思うだけで、胸が弾み世界が変わって見える。
「そういえば、レイ様と……」
「え?」
鏡の前に立つと、マーサが笑顔で話しかける。レイの名前を聞くだけで心臓が飛び出しそうだった。何か知っているのだろうか。
「昨夜、お話されて随分すっきりされたのですね。とても晴れやかなお顔に戻られました」
思い起こせば昨夜はアランやマーサに酷い態度を取っていた。きっとずっと心配していたに違いない。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫で――――」
「あら大変。少し赤くなっているところが!……ほら、あのような格好で眠られたので、ここを虫に刺されたようですよ。今お薬を」
マーサが指差す胸元を見ると僅かに赤くなっている箇所があった。決して痒くはないその場所から、エリー王女は思わず視線を逸らした。
気がつかれてしまった?
知られてしまえば、レイの身に危険が振りかかってしまう。そう思ったら今度は背筋がぞくっと冷えた。
レイを守らなければならない。
たとえマーサにだって知られてはいけないのだ。
顔に明るい日差しがかかり、エリー王女は眩しそうに掛け布を頭にかぶる。
「おはようございます。朝になりましたのでお支度のご準備を」
マーサは優しく声をかけながらエリー王女に近づくと足元に何か落ちていることに気が付いた。
それを拾い上げると僅かに顔をしかめる。昨夜着ていたはずのガウンとベビードール……。
「エリー様。リアム陛下をお待たせするわけにはいきませんので、お早めに起きていただきませんと」
いつもと変わらぬ声色で声をかけながらも、マーサは辺りを見回し他に違和感がないかを探した。ベッドの周りやサイドテーブル。そしてエリー王女。
少し体が重いのか、エリー王女はいつもより気だるい雰囲気で目をこすり、ゆったりと体を起こしていた。
「おはようございます、マーサ……」
ふわりと微笑む姿はとても幸せそうで、マーサは少しほっとした。しかし、疑問は払拭されていない。
「一つお伺いいたしますが……何故そのような格好をしていらっしゃるのですか?」
ベッドの上にいるエリー王女はふくよかな胸を隠すことなくこちらに向けている。何を言っているのだろうとエリー王女は首をかしげていたが、何かに気が付いたように柔らかく笑みを浮かべた。
「……昨夜、すごく暑かったので脱いでしまいました」
今までどんなに暑くてもこのようなことは一度もなかった。それに部屋は魔法薬で快適な温度なのだ。マーサは不信感を募らせる。
「エリー様、いくら暑くても服を着たままでいてもらわないと困ります。もし何かあったら裸でお逃げになるおつもりですか?」
「そうですよね、次からはいたしません」
エリー王女は肩をすくんで見せ、ベッドからゆっくりと降りた。内心冷や冷やしながらもエリー王女はいつも通り鏡の前へと歩みを進める。
体が痛い。
普段全く使わない筋肉を使ったためか、様々な箇所が痛んだ。目覚めた時、すぐ傍にレイがいなかったことは残念ではあったが、幸せな気持ちはそのまま残っていた。その気持ちと体の痛みは、昨夜のことが鮮明に蘇えらせる。
レイの熱い瞳。触れ合う肌と肌。
ぬくもりを思い出し、一気に体が熱くなった。
レイは身を挺しエリー王女の気持ちに応えてくれたのだ。それは、何よりも偽りの愛ではないことを証明するものだった。レイに愛されていると思うだけで、胸が弾み世界が変わって見える。
「そういえば、レイ様と……」
「え?」
鏡の前に立つと、マーサが笑顔で話しかける。レイの名前を聞くだけで心臓が飛び出しそうだった。何か知っているのだろうか。
「昨夜、お話されて随分すっきりされたのですね。とても晴れやかなお顔に戻られました」
思い起こせば昨夜はアランやマーサに酷い態度を取っていた。きっとずっと心配していたに違いない。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫で――――」
「あら大変。少し赤くなっているところが!……ほら、あのような格好で眠られたので、ここを虫に刺されたようですよ。今お薬を」
マーサが指差す胸元を見ると僅かに赤くなっている箇所があった。決して痒くはないその場所から、エリー王女は思わず視線を逸らした。
気がつかれてしまった?
知られてしまえば、レイの身に危険が振りかかってしまう。そう思ったら今度は背筋がぞくっと冷えた。
レイを守らなければならない。
たとえマーサにだって知られてはいけないのだ。
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