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第03章 告白
第048話 侵食
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リアム国王からの提案でアトラスの騎士達はローンズの騎士達と合同訓練を行っている。
夜はリアム国王からの訓練も受けられるということで両国の騎士達は張り切り、胸を躍らせていた。
アランとレイも訓練を受けるため、騎士達と共に演習場に待機している。
「ローンズの皆様と仲が良いみたいですね」
両国の騎士達は和気藹々としており、仲の良さが遠くからでもうかがえた。エリー王女はそれを嬉しく思い、一緒に閲覧席にいるハルに語りかける。
「そうですね。合同訓練は年に一回互いの国で行っておりますので、気の知れた仲間という意識が少しあるのではないでしょうか?」
ハルがエリー王女の隣に座るアトラス王国騎士団隊長のバーミアに目を向ける。
「はい。とても良好な関係を結ばせていただいております」
「そうでしたか。皆さんが友好的なのは、きっとリアム陛下が素晴らしい方だからでしょうね」
「ありがとうございます。陛下は常に皆のことを考えてくださっております」
ハルが誇らしげに語るとエリー王女は微笑みを浮かべ、また演習場に目を向けた。
大勢いる中にいてもレイの姿はすぐに見つけられる。
すぐに周りに人が集まるのは、レイの人の良さなのだと微笑ましく見ていると、一人、女性が混じっていることに気付いた。
「ローンズでは女性の騎士がいらっしゃるのですか?」
「はい、一名だけですが。名はアリスと言い、男の訓練でも音を上げずに頑張っているようです。彼女もまた魔法を使えます」
健康的な明るい肌を持ち、赤色の髪が印象的である。髪を無造作に結び、汚れた訓練服に身包んでいたが、とても笑顔の素敵な女性だとエリー王女は思った。
アリスはレイの肩に手を置き、笑いながら周りの人と話をしている。レイは気にする様子もなく当たり前のように笑顔で、二人はとても親密な関係に見えた。
「楽しそう……」
思わず溢した言葉は誰にも届かない。
羨望のような憎悪のような複雑な気持ちにエリー王女は戸惑い、二人から視線を反らした。
「ビルボートも一緒に訓練を受けたかったですよね? 明日は誰かと交代してはどうでしょうか」
自分の気持ちを誤魔化すかのように、ビルボートに声をかける。
「ありがとうございます。予定では明日は副隊長のアルバートがエリー様のお側に仕えさせていただきます」
「そう、良かった……」
エリー王女は笑顔を作り、心のない会話を交わした。
気持ちを反らそうとしたが何も変わることはなく、エリー王女の心の中にはじりじりと黒い炎が侵食していく。
レイの笑顔が好き。
優しいレイが好き。
しかし、今はそれがとても嫌だった。
あの笑顔は自分だけのものではない。
誰にでも優しいのだ。
エリー王女はそう思い知らされた。
自分の目の届かないところにいるレイは誰を見ているのだろう。
私だけに笑顔を見せて欲しい。
私だけに優しくして欲しい。
そんな独占欲に加え、急に不安が襲った。
たとえ自分が結婚したとしても、レイはずっと側に……ずっと好きでいてくれるだろうと勝手に安心していた。
しかしそうではないのだ。
――――レイは好きだと一言も言っていない。
そのことに気が付き、暗い穴に突き落とされたかのように一気に血の気が引いた。
あの時の出来事もレイの優しさだったのでは?
自分が好きだと伝えたため、側近の立場として少しでも応えようとしてくれただけなのでは?
本当はアリスが好きなのだろうか。
そうではないにしても他に思いを寄せる人がいるのかもしれない。
今はいなくてもいずれは誰かと結ばれるのだ。
自分の知らないところで、知らない誰かと愛し合う……。
そんな考えがぐるぐると駆け廻り、エリー王女の胸は張り裂けそうだった。
胸を抑え、エリー王女は楽しそうにしているレイをただ遠くから見つめる。
嫌……。
一人にしないで……。
私だけを愛して……。
黒い炎はどんどん広がるばかりで、エリー王女は自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
夜はリアム国王からの訓練も受けられるということで両国の騎士達は張り切り、胸を躍らせていた。
アランとレイも訓練を受けるため、騎士達と共に演習場に待機している。
「ローンズの皆様と仲が良いみたいですね」
両国の騎士達は和気藹々としており、仲の良さが遠くからでもうかがえた。エリー王女はそれを嬉しく思い、一緒に閲覧席にいるハルに語りかける。
「そうですね。合同訓練は年に一回互いの国で行っておりますので、気の知れた仲間という意識が少しあるのではないでしょうか?」
ハルがエリー王女の隣に座るアトラス王国騎士団隊長のバーミアに目を向ける。
「はい。とても良好な関係を結ばせていただいております」
「そうでしたか。皆さんが友好的なのは、きっとリアム陛下が素晴らしい方だからでしょうね」
「ありがとうございます。陛下は常に皆のことを考えてくださっております」
ハルが誇らしげに語るとエリー王女は微笑みを浮かべ、また演習場に目を向けた。
大勢いる中にいてもレイの姿はすぐに見つけられる。
すぐに周りに人が集まるのは、レイの人の良さなのだと微笑ましく見ていると、一人、女性が混じっていることに気付いた。
「ローンズでは女性の騎士がいらっしゃるのですか?」
「はい、一名だけですが。名はアリスと言い、男の訓練でも音を上げずに頑張っているようです。彼女もまた魔法を使えます」
健康的な明るい肌を持ち、赤色の髪が印象的である。髪を無造作に結び、汚れた訓練服に身包んでいたが、とても笑顔の素敵な女性だとエリー王女は思った。
アリスはレイの肩に手を置き、笑いながら周りの人と話をしている。レイは気にする様子もなく当たり前のように笑顔で、二人はとても親密な関係に見えた。
「楽しそう……」
思わず溢した言葉は誰にも届かない。
羨望のような憎悪のような複雑な気持ちにエリー王女は戸惑い、二人から視線を反らした。
「ビルボートも一緒に訓練を受けたかったですよね? 明日は誰かと交代してはどうでしょうか」
自分の気持ちを誤魔化すかのように、ビルボートに声をかける。
「ありがとうございます。予定では明日は副隊長のアルバートがエリー様のお側に仕えさせていただきます」
「そう、良かった……」
エリー王女は笑顔を作り、心のない会話を交わした。
気持ちを反らそうとしたが何も変わることはなく、エリー王女の心の中にはじりじりと黒い炎が侵食していく。
レイの笑顔が好き。
優しいレイが好き。
しかし、今はそれがとても嫌だった。
あの笑顔は自分だけのものではない。
誰にでも優しいのだ。
エリー王女はそう思い知らされた。
自分の目の届かないところにいるレイは誰を見ているのだろう。
私だけに笑顔を見せて欲しい。
私だけに優しくして欲しい。
そんな独占欲に加え、急に不安が襲った。
たとえ自分が結婚したとしても、レイはずっと側に……ずっと好きでいてくれるだろうと勝手に安心していた。
しかしそうではないのだ。
――――レイは好きだと一言も言っていない。
そのことに気が付き、暗い穴に突き落とされたかのように一気に血の気が引いた。
あの時の出来事もレイの優しさだったのでは?
自分が好きだと伝えたため、側近の立場として少しでも応えようとしてくれただけなのでは?
本当はアリスが好きなのだろうか。
そうではないにしても他に思いを寄せる人がいるのかもしれない。
今はいなくてもいずれは誰かと結ばれるのだ。
自分の知らないところで、知らない誰かと愛し合う……。
そんな考えがぐるぐると駆け廻り、エリー王女の胸は張り裂けそうだった。
胸を抑え、エリー王女は楽しそうにしているレイをただ遠くから見つめる。
嫌……。
一人にしないで……。
私だけを愛して……。
黒い炎はどんどん広がるばかりで、エリー王女は自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
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