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第03章 告白
第036話 求め合い
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優しく触れ合う唇がエリー王女の頭の中を真っ白にした。嬉しさからなのか胸が熱くなり一滴の涙が溢れる。
唇が離れるとレイの左手がエリー王女の涙を優しく拭いた。ぼんやりと見えるレイの表情は苦痛に歪んでいる。それは自分の立場やレイの立場を思い出させるのに十分なものだった。
「レイ……」
声の出し方を忘れたかのように、喉の奥からなんとか名前を口にする。レイは返事をする代わりに、頬にあった左手を後頭部へと回し、先程より強く、エリー王女の唇を食んだ。エリー王女は思わずレイの服を掴む。
レイも同じように好意を持ってくれていたのだと素直に感じた。
柔らかな唇の感触は今まで抑えていた想いを受け入れてくれているようで、喜びで心が波打つ。
身分など関係ない。
今はただレイを感じていたい。
「ん……」
エリー王女が呼吸をするため唇を薄く開けた瞬間、生暖かいものが口をこじ開けるようにゆっくりと侵入してきた。舌を絡みとるものが何であるのかが分かると、全身が甘く痺れた。
言葉に出来ない想いを刻むように、それは口内でゆっくりと動く。
優しくも強く求めてくるような口付けに、エリー王女も一生懸命に応えた。後ろに木がなければ立っていられないくらい身体は蕩け、絡み合うほど愛しさが募る。
お互いの息づかいと自然と零れる自分の声がエリー王女の脳を麻痺させた。
もうどうなってもいい。
レイさえいてくれたら。
本当にそう思った――――。
どれくらい求め合っただろうか。名残惜しそうに唇が離れ、レイはエリー王女を抱き締めた。
「エリー……ごめん」
耳元でレイの絞り出す声に胸が締め付けられる。謝ってなんて欲しくなかった。ずっと願っていたことが叶ったというのに、苦しすぎて泣きたくなる。
「レイと……このままずっと一緒にいたいです……」
「……うん」
一方、エリー王女を抱きしめたレイの胸の中に残ったのは、喜びや幸せではなかった。
それは後悔。
自ら放った「後悔しても知らないから」という言葉が、今更になって自分に重くのし掛かってくる。
欲望のままエリー王女を求めてしまったことは、側近として許されざる行為だ。本来であれば王女を守り、正しい道へと導いていかなくてはならない。
だから好きだという想いを否定し続けてきた。
分かっている。
もう止められないほど好きだということを。
湧水のように次から次へと湧き出てくるエリー王女への気持ちを抑えられなかった。
「……あ、あの……」
もぞもぞと胸の中で動くエリー王女に気が付き、レイが腕を緩めるとエリー王女は息を大きく吸う。
「あはは、ごめん。力、入れすぎちゃった。大丈夫?」
「は、はい」
頬を赤く染め、エリー王女は優しく微笑む。初めて会ったあの日から、焼きついて離れなかったエリー王女の笑顔がすぐ目の前にあった。自分だけを見つめる瞳に胸が躍り、自ずと笑顔になる。
「レイはやっぱり笑っていた方が素敵です」
「え?」
躊躇しながらもエリー王女は驚くレイの頬に右手を添えた。
「私は……後悔しておりません。凄く……凄く嬉しかったです。たとえこの先一緒になれなくても、レイとこのようなことができ……あ……えっと、キスがしたかったとかそういう意味ではなく……その……」
恥ずかしそうにしながらも一生懸命気持ちを伝えてくれるエリー王女に、愛しさが込み上げる。
「あはは。うん……俺も嬉しかったよ」
指で柔らかな唇に触れながら首を傾げてみせると、エリー王女の体が小さく跳ねた。
「で、こういうこと……したかったの?」
「え? ぁ……あの……そういうことを伝えたかったわけではなく……」
「したくない?」
「いえっ……したくないわけでは……」
「んー、じゃあ、したい?」
「あの……」
唇が触れるか触れないかの距離で囁く。
「ん?」
「……は、はい」
熱い吐息と共に放たれた言葉に、レイは欲望のままに唇を寄せた。触れたいのは自分の方だ。エリー王女の全てが欲しい。しかし、求めても求めてもエリー王女を遠くに感じた。
たとえこの先一緒になれなくても……。
エリー王女の言葉がよみがえる。
そう、腕の中にいるのはアトラス王国の第一王女。
結ばれることは絶対にない遠い存在だから――――。
唇が離れるとレイの左手がエリー王女の涙を優しく拭いた。ぼんやりと見えるレイの表情は苦痛に歪んでいる。それは自分の立場やレイの立場を思い出させるのに十分なものだった。
「レイ……」
声の出し方を忘れたかのように、喉の奥からなんとか名前を口にする。レイは返事をする代わりに、頬にあった左手を後頭部へと回し、先程より強く、エリー王女の唇を食んだ。エリー王女は思わずレイの服を掴む。
レイも同じように好意を持ってくれていたのだと素直に感じた。
柔らかな唇の感触は今まで抑えていた想いを受け入れてくれているようで、喜びで心が波打つ。
身分など関係ない。
今はただレイを感じていたい。
「ん……」
エリー王女が呼吸をするため唇を薄く開けた瞬間、生暖かいものが口をこじ開けるようにゆっくりと侵入してきた。舌を絡みとるものが何であるのかが分かると、全身が甘く痺れた。
言葉に出来ない想いを刻むように、それは口内でゆっくりと動く。
優しくも強く求めてくるような口付けに、エリー王女も一生懸命に応えた。後ろに木がなければ立っていられないくらい身体は蕩け、絡み合うほど愛しさが募る。
お互いの息づかいと自然と零れる自分の声がエリー王女の脳を麻痺させた。
もうどうなってもいい。
レイさえいてくれたら。
本当にそう思った――――。
どれくらい求め合っただろうか。名残惜しそうに唇が離れ、レイはエリー王女を抱き締めた。
「エリー……ごめん」
耳元でレイの絞り出す声に胸が締め付けられる。謝ってなんて欲しくなかった。ずっと願っていたことが叶ったというのに、苦しすぎて泣きたくなる。
「レイと……このままずっと一緒にいたいです……」
「……うん」
一方、エリー王女を抱きしめたレイの胸の中に残ったのは、喜びや幸せではなかった。
それは後悔。
自ら放った「後悔しても知らないから」という言葉が、今更になって自分に重くのし掛かってくる。
欲望のままエリー王女を求めてしまったことは、側近として許されざる行為だ。本来であれば王女を守り、正しい道へと導いていかなくてはならない。
だから好きだという想いを否定し続けてきた。
分かっている。
もう止められないほど好きだということを。
湧水のように次から次へと湧き出てくるエリー王女への気持ちを抑えられなかった。
「……あ、あの……」
もぞもぞと胸の中で動くエリー王女に気が付き、レイが腕を緩めるとエリー王女は息を大きく吸う。
「あはは、ごめん。力、入れすぎちゃった。大丈夫?」
「は、はい」
頬を赤く染め、エリー王女は優しく微笑む。初めて会ったあの日から、焼きついて離れなかったエリー王女の笑顔がすぐ目の前にあった。自分だけを見つめる瞳に胸が躍り、自ずと笑顔になる。
「レイはやっぱり笑っていた方が素敵です」
「え?」
躊躇しながらもエリー王女は驚くレイの頬に右手を添えた。
「私は……後悔しておりません。凄く……凄く嬉しかったです。たとえこの先一緒になれなくても、レイとこのようなことができ……あ……えっと、キスがしたかったとかそういう意味ではなく……その……」
恥ずかしそうにしながらも一生懸命気持ちを伝えてくれるエリー王女に、愛しさが込み上げる。
「あはは。うん……俺も嬉しかったよ」
指で柔らかな唇に触れながら首を傾げてみせると、エリー王女の体が小さく跳ねた。
「で、こういうこと……したかったの?」
「え? ぁ……あの……そういうことを伝えたかったわけではなく……」
「したくない?」
「いえっ……したくないわけでは……」
「んー、じゃあ、したい?」
「あの……」
唇が触れるか触れないかの距離で囁く。
「ん?」
「……は、はい」
熱い吐息と共に放たれた言葉に、レイは欲望のままに唇を寄せた。触れたいのは自分の方だ。エリー王女の全てが欲しい。しかし、求めても求めてもエリー王女を遠くに感じた。
たとえこの先一緒になれなくても……。
エリー王女の言葉がよみがえる。
そう、腕の中にいるのはアトラス王国の第一王女。
結ばれることは絶対にない遠い存在だから――――。
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