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第3章

土曜日だけ

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昨日、金曜日の事。
練習後のミーティングの時、
原先生は突然言った。

「明日から東北大会が終わるまでの間、
毎週土曜日は
鷲羽根陸上競技場で練習をするぞ!
必要な道具は心配するな!
もう俺の車に全て運び込んである!
明日は9時から練習開始できる様に、
現地集合な!」

「ええ!急にどうしたんですか!?」

家庭煩悩な原先生から熱血キャラに
変身した事は、とても衝撃的で
本人の居ないところで
度々話題になっていたが、
ここまで来ると葵先輩は
ツッコミを入れずにはいられなかった。

「ははは~。
試合さながらの練習と言ったら、
練習環境も大事だよな。お前達は
土のグラウンドでよくやってるよ!
しかしタータンに足を慣らしておくのも
必要だからな。鷲羽根陸上競技場は
質の良いタータンではないが、
練習にはちょうど良い。
東北大会までは3回も土曜日あるからな。
日頃の練習の成果を、確認するぞ?」

と原先生は楽しそうに言った。

原先生がこんなにやる気になるなんて、
雨でも降るのではないか?
と思ってたが天気は今週ずっと晴れだった。
もちろん明日も晴れ予報だ。

私達はお互いに顔を見合わせた。
先生の話を聞く時間なため、
自由にリアクションを取れずに居るが、
目を輝かせ口が半開きになり
喜びを隠しきれないでいる。
後輩ちゃん達はソワソワしながら
浮き足立った様子で喜んでいる。

みんなの隠しきれない
喜びのリアクションを確認した所で、
原先生は満足気に言った。

「俺からは以上だ。」

葵先輩が号令をかける。

「気を付け!ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!」」」



♢♢♢



土曜日。
今週一番の晴天日和だった。

「「おはようございます!」」

8時30分。練習開始の30分前。
先輩方が4人とも集合していた。

「おはよう!みんな無事に到着したね!」

葵先輩が2年生と1年生、
全員の無事を確認する。

「おはよう!
疲れたでしょ?ちょっと休みなよ!」

愛奈先輩がこちらを気遣ってくれる。

「おはよー!
お手洗いはあっちにあるからね!」

ちょこ先輩が、
お手洗いの場所を指差して伝える。

「おはよう。私達の荷物の置き場所は、
こっちに確保してるよ。」

早央莉先輩が誘導してくれる。
2年生組は荷物置き場へ、
1年生組はお手洗いに行った。

「ありがとうございます!
それしても先輩方、早いですね?」

明季が不思議そうに聞いた。
疑問に思うのも無理はない。
鷲羽根競技場へは学年毎に集団移動をし、
現地集合する約束になっていた。
電車は30分に1本で来るため、
田舎あるあるで結局駅集合してしまうのだ。
そして、ここまで来る電車に
先輩方は居なかったのだ。
私達は「3年生は重役出勤するから
準備は自分達でパパッと済ませよう!」
なんて意気込んでいたのだ。

「それはね、私達は車で来たんだよ。」

早央莉先輩が思い出し笑いでもするかの様に
1人で笑ってる。

「車?良いなあ。
誰が送っていってくれたんですか?」

はなえが食い付き気味で質問する。
はなえは昨日から車で行きたいと言っていた。
しかし2年生組は単独お嬢様出勤を認めず、
「部活動は自力で頑張りなさい!」と
叱咤激励をしたのだ。
先程の駅から競技場への道中も、
「暑い、暑い」と汗を滴らせながら
頑張って歩いていた。

「さあ、誰でしょう?」

早央莉先輩が
ニコニコしながら、クイズを出した。

「うーん。早央莉先輩のお父さん?」

侑佳が競技場をキョロキョロ見回しながら、
クイズには興味なさげに答える。

「ぶっぷー!残念ながら
私のお父さんは家でゴロゴロしているよ。
あ!あそこに私達、荷物置いてるんだ!」

早央莉先輩の「ぶっぷー!」が可愛いな
と思いながら前方を見ると、
見知った顔が立っていた。
柱と同化していた
並にスラっと細長い男の人は、
今日もキャップを被って
気さくに挨拶をした。

「おう!
おはようさん!ここまでお疲れ様!」

「愛奈先輩パパ!」

先日の全県大会中にも
顔を合わせ、バナナの差し入れをもらった。
松原女子陸上競技部では
お馴染みの名物パパさんだ。
大会中愛奈先輩が現れる近くに、
パパさんも現れると噂はあったが、
本日は練習にアッシーくんとして
堂々と登場していた。

「「「おはようございます。」」」

明季と侑佳とはなえが、
驚く私を置いてすかさず挨拶をする。
私も我に返り、急いで挨拶をした。

「おはようございます。」

「今日は君達の練習を見学に来たんだよ。
最近面白いことをしているそうじゃないか。
なにも邪魔はしないし、気にしないでな。」

そう言うと、
愛奈先輩パパは車の方へと歩いて行った。

「パパさんの溺愛ぶり、最高でしょ?!」

後ろから、葵先輩が声をかけてきた。

「溺愛とかやめてよー!
ただの親父なんだから!」

愛奈先輩が
葵先輩の肩を叩いて、冗談を制した。

「はいはい。
クーラーボックスに
差し入れを完備している、
ただの親父さんね!」

ちょこ先輩が愛奈先輩の肩に手を置き、
ニヤニヤしながら言った。

「ええ!差し入れも!?
出来る大人は全然違うー!」

明季が
両手で口元を手で隠す仕草をしてから、
テンションが上がった勢いで
両手をグーに握って喜んでいた。

「ご馳走になります。」

はなえが差し入れと聞いて、
やる気を全開に出した様だ。
先程までのダルそうな目付きが、
キリッとしている。

「お気遣いありがとうございます。」

侑佳は高校2年生には似合わない、
遠慮がちな挨拶と軽く1礼をした。

「愛奈先輩パパ、気合い入ってますねー!」

私は率直に言った。

「そうなの!
昨日、鷲羽根で練習することになった
って言ったら、
明日は何もない日だから送っていく
って準備始めてさ。」

愛奈先輩が
顔を赤くして恥ずかしそうに言った。

「私達も愛奈パパ以上に気合い入れて、
今日練習しようね!」

葵先輩が良い具合にまとめた。



♢♢♢



木曜日には300mのインターバルを
アップに取り入れた私達だったが、
せっかくのタータンではバトンパス練習に
めいいっぱい時間を使いたいため、
土曜日はお休みする事にしていた。

「今日はせっかくだから、
バトンパス練習が終わったら、通すぞ!」

「通し!?」

原先生の提案に、私は驚いて聞き返した。

「ああ。タイムも計測する。
試合と同じルールでやるからな!
そのつもりでバトンパス練習をする様に!
AチームとBチームは
来週から通しに合流するぞ!」

「「「はい!」」」

後輩ちゃん達は
テキパキと準備に取り掛かった。
先輩方は
スパイクを履く前にお手洗いに行った。
私はゆっくりとスパイクを履いていた。

「って事は、私はゴールまで走るのか~。」

バトンをもらうだけの
4走者は、体力的に楽だった。
原先生の試合さながらの
バトンパス練習においても、
100mを走ることとは無縁だったのだ。

「タイムの計測もあるからな!」

原先生が私に念押しをしてきた。

「わかってますよ。それも良いですが、
通しの時に動画撮影を
お願いしても良いですか?
どうせここで通すのなら、
どんな感じか見たいです。」

今度は原先生が
驚いた様に頷きながら言った。

「おお、良いぞ。良いぞ!
動画撮影は任せろ!」

「よろしくお願いします。」

私はスパイクを履き終わり、
他校の練習を見学しながら
先輩方を待った。
ここは鷲羽根陸上競技場。
タータンのグラウンド。
到着時は私達だけであったが、
9時を過ぎると
他校の中高生が続々と集まっていた。
通しをするとなると
レーンを一時的に空けてもらうのだから、
大注目を浴びる事は間違いなしであった。
この状況下で失敗するとなると
大恥晒しである。
しかし私は失敗するつもりは毛頭なく、
バトンパスの加速度が気になっていた。

「さて、
何処からパス練習を始めましょうか?」

お手洗いから戻り
スパイクに履き替えていた先輩方が、
ギクッとした様に身を強ばらせた。



♢♢♢



パス練習は、
先にスパイクに履き替えていた私を
お待たせしていたという建前で、
3-4走区間から始まった。しかし
後輩ちゃん達が合流してからと言うものの、
抜群の安定感を誇る区間のため
特に修正箇所はなかった。
葵先輩のリカバリータイムには
後輩ちゃん達の指導をしていた。

そして今、1-2走区間。
第1走のスタートポジションに私は居る。

「どうしたんですか?」

腕を引っ張られ連れられた私は、
その張本人に質問した。

「それがね、いつも
前の人が使っていたセッティングのまま
スタブロを使っていたから、
自前のブロックじゃ
設置方法が全くわからないんだよ~!」

ちょこ先輩の衝撃発言!

「よく今までそれで走れていましたね。
人によって設置角度が全然違うのに!」

「ねえねえ、教えて~!」

「よーく聞いて下さいね。
まずスターティングブロックは、
レーンのスタートラインに対し、
足1歩分開けた所に置きます。
そして直線であれば中央に配置しますが、
ここはカーブです。
中央より気持ち右側に置きます。」

「うん、うん!」

「「はい!」」

ちょこ先輩に教えていたら、いつの間にか
第1走の後輩ちゃん達が集まって
一緒に話を聞いていた。

「前部分は
この時点で固定して大丈夫です。」

言いながら私は、スタブロの前部分を
踵でガンガン打ち付け固定した。

「このスタート地点から、
カーブの切れ目はわかりますか?
あそこです。下を向いて走り出すため、
レーンアウトしない様に設置前に
カーブの切れ目は必ず確認して下さい。」

「うん、うん!」

「「はい!」」

「そして、直線の時はレーンに対して
並行に設置しますが、ここはカーブなので
レーン内に納まるように設置します。
先程はカーブの切れ目を確認しましたが、
実際はその少し向こうをポイントとして、
このスタブロに角度をつけます。」

「うん?」

「「 ? 」」

私はまずスタブロの
後ろ部分も踵で固定した。

「そのまま見てて下さい。
このスタブロの角度で直進すると…」

私はちょこ先輩と後輩ちゃん達を
スタートラインに置いて、
自分1人スタートラインから
ある場所へ直進した。

「はい、ここ!」

私はカーブの切れ目の
少し向こうで立ち止まった。
第2走者の方へ体を向けながら、
目をちょこ先輩と後輩ちゃん達に合わせた。

「ここまで来ると、
カーブも緩やかになって、
内側に入って走りやすくなるんですよね!」

ちょこ先輩と後輩ちゃん達は、
私の歩いた後を追って
私の見てる景色を見に来た。

「本当だ!すごい!」

「「わあ!」」

一番きついカーブを抜けた先は、
直線に向かう緩やかな道のりだった。

「さ!後は足の設置をして、
スタートダッシュしてみますよ!」



♢♢♢



1-2走区間は初めてバトンパス練習から
スターティングブロックを導入し、
3本程合わせて、微調整を終えた。

2-3走区間は葵先輩が
念入りにダッシュのチェックを重ね、
葵先輩と愛奈先輩の
15センチの身長差からくる手の位置問題に、
愛奈先輩が自ら切り込んでいた。
4本程合わせて、
調整を無事に終えたのだった。

15分程休憩を挟み、通しが始まる。
他校の選手も練習しているため、
レーンを独占する時間は5分以内。
空いているレーンで通しをするため、
ど真ん中の4レーンを使用することになった。
合図が来た。
ちょこ先輩の準備が終えたようだ。
私はレーンに入り、
少し体を動かすと大声で言った。

「4レーン、いきまーす!」

周囲の選手に
4レーンを使用する旨、注意喚起だ。
しかし私の居る第4走区間の近くには、
短距離のスタート練習をする
他校のスプリンターが十数名も待機している。
そのため、この注意喚起は
逆に注目を集める結果となった。
好奇な視線だけなら
全県大会のウォーミングアップで
慣れたからまだ良いものの、
好奇心をヒソヒソ話しているのが
聞こえてくるのは、やりづらい。

ふふふ。
最早私のバトンパス技術を見せつけてやる
位のテンションでいかないと、
この区間メンタルが持たないわ!
ふはははは!
この通しは真剣勝負だけれど、
エンタメにも昇華してやる!
みんな釘付けになって見るが良い!

などと意味不明なモチベーションを発揮し、
あっという間に通し1本目は終わった。

「タイムはどうでした?」

ゴールした私は
フィールド内で計測していた原先生に、
真っ先にタイムを聞きに行った。

「50秒88だ!」

原先生は意気揚々と
ストップウォッチを見せてくれた。

「へえ。あ、動画は撮れてますか?」

「ちゃんと撮っているよ。」

原先生の後ろから
愛奈先輩パパが現れ、微笑んで言った。
そして、手に持っていたカメラを
私に渡してくれた。

「ありがとうございます。」

私はカメラを受け取り、動画を再生した。

「ああ、やっぱり。
ふんふん、綺麗に流れていますね。
うんうん、欲をいえばもうちょっと!
でも今までの中で一番良い!
お、お、お?あー!
良いパス!よくやった!」

「おーい。1人で何してんのさー。」

ちょこ先輩が
動画を見ていた私の顔を覗き込んできた。

「ああ、お願いしていた
通しの動画を見ていたんですよ。」

「ええ、何それ、私も見たい、見たーい!」

ちょこ先輩が私からカメラを受け取ると、
葵先輩と愛奈先輩も合流した。

「お疲れー!何見てんの?」

「あ!これうちのカメラ!
お父さんカメラまで持って来てたの?!」

愛奈先輩が
原先生の後ろで照れ笑いしているパパさんを、
「親バカなんだから」とでも言いたげに見た。

「ほら、自分達の走りを見てみなさい。」

愛奈先輩パパさんはカメラを指差し、
何食わぬ顔で動画を見るように促した。

「こうして見ると、まだまだだね私。」

葵先輩が頷きながら、しみじみと言った。

「いやー私も!
もっと距離走ってるのかと思ったら、
もう少しいけそうだわ!」

愛奈先輩は120m担当のため、
体感よりソロ区間が短かった様だ。

「葵と実穏ちゃんペアは、ほんと一瞬だね!」

ちょこ先輩が驚きを隠せずに感心する。

「先生、私達のタイムは
何秒だったんですか?」

葵先輩が真剣な顔で原先生に質問した。

「50秒88だ。」

原先生はゆっくり頷きながら答えた。

「なんか動画を見ると、
まだまだ修正箇所あるよねー。」

愛奈先輩がタイムそっちのけで、思案する。

「よーし!
ちょっと調整して、もう1本いきますか!」

「そうですね!」

ちょこ先輩が
珍しく気合いの入った声かけをした。
私も気合いのこもった元気の良い返事をすると、
ちょこ先輩が私の右腕に腕組みをして
第1走まで連れて行った。
練習と通しでレーンが変わり、
スタブロの設置を自分で行ったが
先程のようにしっくり来なかったとの事。
私も動画で
スタートの不自然さを確認していたため、
2本目の通しが始まる前に
改めてレクチャーをした。



♢♢♢



「今日は疲れたなー!」

私は伸びをしながら歩いていた。
今は鷲羽根陸上競技場から最寄駅に向かっている。
土曜練習が終わり、また学年毎に帰宅していた。

「実穏達、すごい練習していたもんね。」

侑佳が私の後ろを歩きながら、言った。

「原先生が急にやる気になったから、
今週からずっとこんな感じだよー。」

「原先生、今週はほとんど来てたもんね。」

はなえは私の右隣りを歩いている。
溢れてくる汗を拭きながら、言った。

「実穏達は東北大会、控えているからね~。
そういえば、早央莉先輩って今日練習していなかったよね?
リレーの補欠メンバーじゃないの?」

明季が私の斜め後ろ、侑佳の隣から不思議そうに聞いた。

「早央莉先輩ね~。本当は補欠だったんだよ。
でも東北大会に行くって春に目標を決めてから、
早央莉先輩、補欠を辞退したんだよね。
自分はみんなを応援していたいって。」

私は空を仰ぎながら答えた。

「それじゃあ、早央莉先輩って、
全県大会でもう引退していたの?!」

明季が驚きを隠せずに聞く。

「選手としては引退しているね。でも先輩方が
どうしても早央莉先輩も東北大会に連れて行きたかったらしく、
リレーチームの専属マネージャーとして同行してもらう事にしたんだ。」

「って事は、今はマネージャー?」

侑佳も目を丸くした様な声で聞く。

「そういうこと!今週からね!」

「それで練習には参加していなかったんだね。」

はなえが合点のいったポーズを取りながら言った。

「先輩達、本当に仲良しだよね~。」

明季はしみじみと言った。

「お土産買ってくるから、楽しみにしてて!」

私は東北大会に一緒に行けない、明季と侑佳、はなえに向かって
悪戯っ子の様な笑顔を作ってピースしながら言った。

「良いよ、気を使わなくて~。」

侑佳が遠慮がちに言う。

「ありがとう。お菓子楽しみにしているね。」

はなえが期待を込めた真剣な顔で私を見つめて言った。
私にははなえの口元に見えない涎が見えた。

「はなえはもっと気を使いなさい!!!」

明季は図々しいはなえを見て、背中を叩きながら言った。
昨日の単独お嬢様出勤の件もあり、厳しめになっている。
しかしはなえには暖簾に腕押しであった。

のんびりのびのびがモットーの実穏に、
好奇心旺盛で愛されキャラの明季、
おばあちゃんの様な落ち着きを放つ侑佳、
食欲の化身のお嬢様はなえ、
マイペースな4人組が2年生組らしさなのである。
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