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バイキュバス
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「今度嘘をついたら、頭と顎がくっついちゃうからね!」
ニコニコ顔で恐ろしげな脅しをかけてくる黒髪の少年に、銀髪銀瞳の存在は正座をして従うしかなかった。
「僕は魔族両夢魔なのさ」
バイキュバス?
初めて聞く種族名にアージュとクラウスは興味津々だ。
「両性具有と、どう違うんだ?」
アージュの問いにベルは少しだけ自慢げに胸を張った。
「あっちは両方持っている存在でしょ。僕は交互になる存在なんだ」
そう言いながら、ベルは再びちんちんを消して見せる。
「わかるかしら、私は男でもあるし、女でもあるの。だからどっちと聞かれても困るの」
ふーん。
どうやらこいつは、ちんちんが生えているときは自身を「僕」呼ばわりし、ちんちんがないときは「私」呼ばわりするらしい。
するとクラウスが学術的興味に捕われた質問をベルに投げかけた。
「半分づつとかできるの?」
するとベルはちょっと考えてから、これでいいかとやって見せる。
まずは上半身が女の子で、下半身が男の子。
「あんまり変わんねえな」
「おっぱいが心持ち、ホント心持ちだけおっきくなったくらいだね」
次に上半身が男の子で、下半身が女の子。
「なんだこの価値のない存在は」
「おっぱいもなくてちんちんもないなんて、生きる価値がないよね」
酷い言い様である。
ちなみにどちらも容姿は変わらない。
「なら、こんなのはどうかしら」
すると、今度は右半分だけおっぱいがちょっとだけふくらんだ。
ということは。
「うお! ちんちんが半分だぜ!」
「すごいや、断面図をスケッチしなきゃ!」
「どう? ぼくってすごいだろう?」
声もハウリングしたかのように二重となっている。
「この声はキモイな」
「頭がガンガンするね」
ということで、クラウスがちんちんの断面を一生懸命スケッチする間に、アージュはベルの尋問を済ませた。
ベルは、自身の存在そのものは認識しているが、なぜ自身がここにいるのかわからないという。
要するに、履歴に関しての記憶喪失のようなモノだ。
どうやら、今は亡き団長パドにおクスリを盛られる前の記憶がそっくり抜けているらしい。
ちなみにおクスリの効果は抜群で、漬けこまれている間は、ベルはパド達に抵抗する気は全く失せていたそうだ。
中毒恐るべし。
「よし、スケッチ終了。声が気持ち悪いからどっちかになってよ」
「とりあえずちんちんを出しとけ」
クラウスとアージュにそう指示されたベルは、素直に男の子の姿となった。
「で、これからお前はどうすんだ?」
「わかんない」
そっか。
アージュは楽しそうに笑いかけながら、ベルの髪を右手でぐしゃぐしゃとやってやる。
「お前はガッツのある奴だからな。しばらくはオレ達と一緒に遊ぼうぜ」
遊ぼう?
ベルはちょっと不思議な気持ちになる。
一緒に遊ぼう?
何やら楽しそうだ。
そもそも、自分が何でここにいるのかもわからないのに、これから自分で何をしようなんて決められない。
なのでベルは三人にくっついていくことにした。
「わかった、よろしくね、アージュ、クラウス、ナイ」
するとそこに鬣犬獣人のフントがひょっこりと顔を出した。
「アージュさんおはようございます、言われた通り来ましたけど」
「お、来たかフントのにーちゃん。にーちゃんもとりあえず肉を食ってけ」
フントは昨晩の禁断症状ベルを知らないので、今のイーゼルは普段よりもちょっと元気があるくらいにしか見えない。
ベルもここで犬のおっさんが顔を出してきても、先ほどまでのアージュからたちによる刺激の方が強すぎて、正直気にならない。
なのでフントとベルは互いに無言でぺこりと会釈をしただけで、食卓を囲むことになった。
さて、五人は朝食を済ませると、アージュの先導で出かけることになった。
朝が賑やかな市場とは違い、この辺りの朝は閑散としたものである。
出向いた先は風俗街の中央にある大きな店。
その名も「この世の快楽亭」
アージュは風俗組合の副支配人であるツァーグと、この店での待ち合わせを約束していた。
アージュを先頭に、入口の扉を無造作に開けると、そこでは見慣れた姿がモップがけをしている。
「あ、おはよう皆さん!」
モップを片手に彼らを招き入れたのはリスペルだった。
リスペルの案内で奥に通された一行を、ツァーグとその他に加え、二人が待っていた。
一人はアージュ達が、ある程度予想していた人物。
商人組合の支配人、キュールである。
もう一人は恰幅のいい中年のおばはん。
「こちらは風俗組合の支配人、ラーデンだ。キュールは知っているな?」
ツァーグからの紹介にアージュ達は無言で頷いた。
ツァーグは続けてラーデンにアージュ達を紹介する。
「こちらが今回の魔物討伐の功労者であるナイさんとその弟たちだ。金髪の方はアージュ、黒髪はクラウスという」
すると、おばはんは珍しげにナイの腰へと視線を送った。
具体的にはナイが帯びている細身の剣に対してだ。
「遥か東方に伝わる剣よね、それ」
「詳しくは知りませんが、先祖の形見です」
ラーデンのかまかけに、ナイはアージュに指示されているようにしれっと答えた。
二人の視線が交差する。
女性二人の無言に、場には緊張が走る。
が、なんとかそれをツァーグが押し切った。
「それはそうとして、昨晩ナイさんから、ある提案を受けている。それを風俗組合と商人組合に承認して欲しいのだ」
続けてツァーグは、ナイが提案したことになっている、アージュの提案について説明を始めたのである。
ニコニコ顔で恐ろしげな脅しをかけてくる黒髪の少年に、銀髪銀瞳の存在は正座をして従うしかなかった。
「僕は魔族両夢魔なのさ」
バイキュバス?
初めて聞く種族名にアージュとクラウスは興味津々だ。
「両性具有と、どう違うんだ?」
アージュの問いにベルは少しだけ自慢げに胸を張った。
「あっちは両方持っている存在でしょ。僕は交互になる存在なんだ」
そう言いながら、ベルは再びちんちんを消して見せる。
「わかるかしら、私は男でもあるし、女でもあるの。だからどっちと聞かれても困るの」
ふーん。
どうやらこいつは、ちんちんが生えているときは自身を「僕」呼ばわりし、ちんちんがないときは「私」呼ばわりするらしい。
するとクラウスが学術的興味に捕われた質問をベルに投げかけた。
「半分づつとかできるの?」
するとベルはちょっと考えてから、これでいいかとやって見せる。
まずは上半身が女の子で、下半身が男の子。
「あんまり変わんねえな」
「おっぱいが心持ち、ホント心持ちだけおっきくなったくらいだね」
次に上半身が男の子で、下半身が女の子。
「なんだこの価値のない存在は」
「おっぱいもなくてちんちんもないなんて、生きる価値がないよね」
酷い言い様である。
ちなみにどちらも容姿は変わらない。
「なら、こんなのはどうかしら」
すると、今度は右半分だけおっぱいがちょっとだけふくらんだ。
ということは。
「うお! ちんちんが半分だぜ!」
「すごいや、断面図をスケッチしなきゃ!」
「どう? ぼくってすごいだろう?」
声もハウリングしたかのように二重となっている。
「この声はキモイな」
「頭がガンガンするね」
ということで、クラウスがちんちんの断面を一生懸命スケッチする間に、アージュはベルの尋問を済ませた。
ベルは、自身の存在そのものは認識しているが、なぜ自身がここにいるのかわからないという。
要するに、履歴に関しての記憶喪失のようなモノだ。
どうやら、今は亡き団長パドにおクスリを盛られる前の記憶がそっくり抜けているらしい。
ちなみにおクスリの効果は抜群で、漬けこまれている間は、ベルはパド達に抵抗する気は全く失せていたそうだ。
中毒恐るべし。
「よし、スケッチ終了。声が気持ち悪いからどっちかになってよ」
「とりあえずちんちんを出しとけ」
クラウスとアージュにそう指示されたベルは、素直に男の子の姿となった。
「で、これからお前はどうすんだ?」
「わかんない」
そっか。
アージュは楽しそうに笑いかけながら、ベルの髪を右手でぐしゃぐしゃとやってやる。
「お前はガッツのある奴だからな。しばらくはオレ達と一緒に遊ぼうぜ」
遊ぼう?
ベルはちょっと不思議な気持ちになる。
一緒に遊ぼう?
何やら楽しそうだ。
そもそも、自分が何でここにいるのかもわからないのに、これから自分で何をしようなんて決められない。
なのでベルは三人にくっついていくことにした。
「わかった、よろしくね、アージュ、クラウス、ナイ」
するとそこに鬣犬獣人のフントがひょっこりと顔を出した。
「アージュさんおはようございます、言われた通り来ましたけど」
「お、来たかフントのにーちゃん。にーちゃんもとりあえず肉を食ってけ」
フントは昨晩の禁断症状ベルを知らないので、今のイーゼルは普段よりもちょっと元気があるくらいにしか見えない。
ベルもここで犬のおっさんが顔を出してきても、先ほどまでのアージュからたちによる刺激の方が強すぎて、正直気にならない。
なのでフントとベルは互いに無言でぺこりと会釈をしただけで、食卓を囲むことになった。
さて、五人は朝食を済ませると、アージュの先導で出かけることになった。
朝が賑やかな市場とは違い、この辺りの朝は閑散としたものである。
出向いた先は風俗街の中央にある大きな店。
その名も「この世の快楽亭」
アージュは風俗組合の副支配人であるツァーグと、この店での待ち合わせを約束していた。
アージュを先頭に、入口の扉を無造作に開けると、そこでは見慣れた姿がモップがけをしている。
「あ、おはよう皆さん!」
モップを片手に彼らを招き入れたのはリスペルだった。
リスペルの案内で奥に通された一行を、ツァーグとその他に加え、二人が待っていた。
一人はアージュ達が、ある程度予想していた人物。
商人組合の支配人、キュールである。
もう一人は恰幅のいい中年のおばはん。
「こちらは風俗組合の支配人、ラーデンだ。キュールは知っているな?」
ツァーグからの紹介にアージュ達は無言で頷いた。
ツァーグは続けてラーデンにアージュ達を紹介する。
「こちらが今回の魔物討伐の功労者であるナイさんとその弟たちだ。金髪の方はアージュ、黒髪はクラウスという」
すると、おばはんは珍しげにナイの腰へと視線を送った。
具体的にはナイが帯びている細身の剣に対してだ。
「遥か東方に伝わる剣よね、それ」
「詳しくは知りませんが、先祖の形見です」
ラーデンのかまかけに、ナイはアージュに指示されているようにしれっと答えた。
二人の視線が交差する。
女性二人の無言に、場には緊張が走る。
が、なんとかそれをツァーグが押し切った。
「それはそうとして、昨晩ナイさんから、ある提案を受けている。それを風俗組合と商人組合に承認して欲しいのだ」
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