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お待たせしましたホモです

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 透き通るような白い肌に、さらさらと銀髪をたなびかせた、紅の瞳を持つたおやかな存在が、アージュの手によって小さなおっさんの前に引き出された。

 続けてクラウスから、おっさんに向けて潤滑剤ローションの瓶が放り投げられる。
 一方でナイはリスペルと呼ばれた少年の後ろ手を抱え、首には左腕を変形させた鎌を押し当てている。

 今にも折れそうな、どこからどう見ても少女な存在は、おっさんの前にひざまづかされた。

「それではツァーグのおっさん、一丁頼むぞ!」
「どうやるんだろうね! 楽しみだね」
潤滑剤ローションをどのように塗るのでしょうか?」

 などとバカガキ達は興味津々だ。

 どうしようもねなこいつら。
 と、半ばあきらめながらもツァーグは抵抗を試みる。
「残念ながら、おじさんは今は性欲がたまっていないのだよ」
 も、効果なし。

「エル・オー・ティー・アイ・オー・エヌッ! ローション!」

エルオーティ! エルオーティ!」

「ろ・お・しょん! ろ・お・しょん!」

 ガキどもの興奮は止まらない。
 とにかくローションが彼ら彼女らの好奇心をくすぐるのだ。

 一方のおっさんは立ちすくんだまま硬直してしまう。

 実は風俗組合自警団の団長パドは重度のショタホモであった。
 しかもどS。
 根っからのど変態である。

 なので少年リスペルがツァーグの弟子であることは、パドを始めとする団員達にはかたくなに隠し通していた。
 なぜならば、そんなことがばれた日には、ど変態のパドはツァーグの前でリスペルを面白半分に犯しかねないからだ。

 実際、団員の中でも息子や弟をパドに食われた連中もいる。
 さらにタチが悪いことに、パドは妙なところで連帯意識が強く、捕えた男の子を仲間内で共有するのをツァーグ達に強要したのである。
 
 お前らも味わえと。

 だからイーゼルをパドがどこからかさらってきたときは、正直言って皆で安堵に胸をなでおろしたものなのだ。
 これで身内を掘る苦痛から解放された。
 それにこれも正直なところ、美しい少女のたたずまいを持つイーゼルを抱くのは、ショタホモとしては非常にハードルが低いものであったことは事実なのだ。
 
 しかしだからといって、ガキどもの前ではいそうですかと、ちんこをおっ立てる訳にもいかない。
 大体弟子の前で何でショタホモをやらにゃあいかんのか?

 すると逡巡しゅんじゅんするツァーグに痺れを切らしたのか、気の短いアージュがぶち切れた。
 
「てめえおっさん、さっさとやらねえとぶっ殺すぞ!」

 するとアージュの恫喝に反応したのは、ツァーグではなく、イーゼルの方だった。
 
「いや、殺されるの……、いや」
 イーゼルはそう呟くと、無言で涙をぽろぽろと流し始めながら、ツァーグの足元に四つん這いで這っていく。
 その様子に何だ何だと注目する三人をよそに、イーゼルはツァーグの前で改めて膝立ちになった。

「殺さないで、何でも……、するから」
 呟き続けながら、イーゼルは慣れた手つきでツァーグのズボンをゆっくりと降ろす。
 
 途端にガキどもがはやし立てる。
「うお、出たぜ大人のちんちん!」
「でっかいや、さすが大人のちんちんだ!」

 片やナイは露骨に顔をしかめた。
「あんな気持ちの悪いの、いらない」

 さて困ったのはツァーグ。
 下手に抵抗をしたらガキどもがどう暴れだすかもわからない。
 だからといって弟子の前で恥ずかしいこともしたくない。
 さあ困った。
 
 困ったツァーグのちんちんも、当然困ったようにうなだれている。
 
 するとここでイーゼルが再び動いた。
 
「痛くしないで、元気にするから」

 イーゼルはそう小さく呟くと、そっとツァーグの股間に顔を寄せた。

「元気になって」

 そして。
 そして。 
 そして……。

 ぱっくんちょ。

 ……。

 ガキどもに衝撃が走る。
 
「うおお!」
「うひゃあ!」
「きゃー!」

 そして数分後。
 
 不本意ながら果ててしまったツァーグと、口元を白く汚しながらも、お役目を済ませてアージュに許しを乞うような表情を魅せる涙まみれのイーゼル。
 その前ではガキ二人と少女一人が、人質を抱えていたのも忘れ、あうあうとしていた。

 アージュは半ば尊敬のまなざしでイーゼルを見つめている。 
「イーゼルの野郎、なんてチャレンジャーなんだ」

 クラウスはぺたりと座りこんでイーゼルが成した偉業に感心している。
「まさか食べちゃうとは想像だにしていなかったよボクは」

 ナイはリスペルを脅すのも忘れ、半泣きとなって首を左右に振っている。
「やだ気持ち悪い帰ってご飯食べたい」

 そしてまさかの師匠とイーゼルの白黒ショーを見せつけられたリスペルに至っては、完全に腰が抜けた状態で呆然としている。

 その中で最初に我に返ったツァーグが、努めて冷静に振る舞いながら、ズボンのベルトを締めた。
「ローションは使いませんでしたが、まあこのようなものです」
 などとわざわざツァーグが注釈を入れなくても、あまりの衝撃に三人の頭からはローションなぞは吹っ飛んでしまっていたのである。

 静寂に包まれる。
 
「ナイねーちゃんの言うとおりにしよっか」
「そだね、帰ろうよ」
「ね、帰りましょ」

 あまりにもショッキングな事態を目の当たりにして、すっかり牙をもがれたガキ共は、先程までの勢いもどこへやらといった面持ちで元気なくそう言葉を交わした。
 
 こうなればツァーグがイニシアチブを取るのも可能だ。
 彼はイーゼルの機転に心の中で感謝しながら、ガキどもに、共に町に戻るように改めて提案したのだ。
 
 するとそれまで先ほどの悪夢を忘れるかのように夕ご飯の算段をしていたナイがピクリと反応した。
 ナイの様子に、先程の体たらくは何だったと見まごうばかりに、アージュとクラウスも身構える。

「アージュ、クラウス、来たわ」
「なっ?」
「しっ」

 言葉を発しようとしたツァーグをナイが押しとどめる。
「囲まれているけれど、敵意はないようね。すぐそこにいるわ」

 すると、ナイの呟きを合図とするかのように、テントの外から覚悟を決めたような切迫感を持つ声が響いてきた。
 
 蟲の姫よ、話を聞いてもらいたいと。

 蟲の姫?
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