32 / 71
これが俗に言う非常識
しおりを挟む
背後であっけにとられながら座り込んでいるツァーグ、リスペルと、何が起きているのか理解できていないといった表情でぼうっとしているイーゼルをかばうようにしながら、彼らに向かって目の前の肉塊から次々と襲ってくる触手を、アージュは己の身長はあろうかという淡く黄金に輝く大剣を軽々と操りながら、次々と討ち払っていく。
一方で若草色の少女は、青白く光る細身の剣を自在に操りながら、化物の周囲を舞うように切り刻んでいく。
その信じられない光景を目の当たりにし、言葉を失っている三人をさらに驚くべき事態が襲った。
「ディストラクションニードル!」
黒髪の少年が唱えた、ツァーグも初めて耳にする呪文によって脊髄草とやらの化物が一瞬びくりとすると、続けて彼もよく知る魔法が少年によって唱えられていく。
慌ててツァーグは黒髪の少年に訴えた。
「魔族に状態異常魔法は無効です!」
しかしその指摘と同時に少年の呪文は完成した。
「麻痺霧!」
え?
ツァーグとリスペルは目を疑った。
先程リスペルの睡眠霧をあっさりと無効化した目の前の化物が、ぴくぴくと痙攣しながら動きを止めてしまっているのだ。
これは、パラライズフォッグが効いているということ。
魔族、さらに植物属性を持つ相手にパラライズが効くなど、二人にとっては信じられない光景である。
しかし黒髪の少年は当然のように続けた。
「アージュ、ナイおねーちゃん、拘束時間は一分くらいが限界だよ! さっさと片付けてね!」
「任せろ!」
「すっごく斬れるの!」
黒髪の少年に返事をするかのように、金髪の少年と若草の少女は見る見るうちに目の前の化物を切り刻んでいく。
「ナイねーちゃん、土産にするからおっさんどもの頭はきれいに切り飛ばすようにな!」
「こうかしら?」
アージュの指示に従って、ナイはアージュから渡された細身の刃を熟練者のごとく自在に操り、スピナルグラスの身体から生えているおっさんどもの頭を次々と切り落としていく。
切り落とされた首から血が吹き出すことはない。
ということは、既に生物としての活動は終わってしまっているということ。
ツァーグたちの目の前で、それはたわわに実った果樹がその果実を収穫されるがごとく、元仲間の首が肉の塊から次々と落とされていく。
「これで最後よ!」
ナイの刃がパドの頭を落とすと同時に、それまでは触手の相手をしていたアージュがニヤリと笑う。
「クラウス、頼むぞ!」
「わかってるよ!」
アージュの指示にクラウスが返事をすると同時に、アージュは目の前の化物に向けて大剣を最上段から勢いよく振るった。
哀れ肉の塊を成したスピナルグラスは、頂上から地面まで、真っ二つに切り分けられたのである。
続けてクラウスが恥ずかしいコマンドワードを叫ぶ。
「暴風竜の眼・探索者!」
するとクラウスの右目を覆う単眼鏡状のレンズが一瞬碧色に光る。
「見ーつけた」
クラウスのモノクルからレーザー状の光が放たれ、それは真っ二つにされた肉塊の中央付近を照らし出した。
「それが本体だよ。もう一体はわかんないや。もしかしたらナイが切り刻んじゃったかも」
「ふーん」
アージュはレーザー光が照らし出す位置に、どす紫色の発芽もやしのような植物を見つけた。
「ぶった切ると証拠がなくなっちまうか」
「なら精神的に殺しちゃいなよ」
「そだな。そういうときはこれだ」
ということで、アージュもこっぱずかしいコマンドワードを唱えた。
「混沌竜の爪・魂魄破壊針!」
するとアージュが持つ巨大な黄金大剣が白い光とともにみるみるうちに縮んでいく。
いつの間にかアージュの手には、漆黒の短針剣が握られていた。
「ほれ」
ぷすり。
アージュがスピネルグラスの本体らしきもやしを針で刺すと、一瞬びくりとしたそれは、そのまま動かなくなった。
それと同時に、それまで一体となっていたおっさんどもの死体は、糸が切れたように、ばらばらと崩れていく。
「そんじゃ解放」
「ボクも解放っと」
同時にアージュのスティレットは元の小刀に、クラウスのモノクルは元の木の葉型に戻る。
するとナイがアージュに尋ねた。
「この剣はどうすればいいの?」
ナイもアージュに指示されたコマンドで、この剣の特殊能力「鴻鵠」を引き出していたのだ。
「あー、鴻鵠の能力は放っておけば消えるからそのままでいいよ」
ちなみに、鴻鵠とは相手に与えるダメージを3倍とし、さらに25%の確率で相手に束縛効果を与えるというスグレモノの能力。
ただし精神力を3も消費するのだが、魔族のナイには屁でもない。
そこにクラウスも情報を追加する。
「レーヴェお姉ちゃんのデーモンシュレッダーには破魔もついているからお得だね」
「破魔」とはアンデッドおよび悪魔に2倍のダメージを与える上、相手の存在エネルギーを体力として吸収してしまう能力。
こちらは自律型なので必要精神力はゼロと経済的なのだ。
つまり、ナイが手足のように自由自在に振り回している細身の刀は、そのままでも悪魔系にはダメージ2倍の上、体力吸収のおまけつき。
さらに鴻鵠を発動させれば、その攻撃力はなんと6倍に達する。
そりゃ悪魔が紙のように刻まれても仕方がありません。
「そんな高価なのを使わせてもらっていいの?」
やけに切れ味がいいなとは思っていたが、さすがに手にする得物がそんな代物だとは思っていなかったナイは恐縮してしまう。
「いいさ、道具は使わにゃ損々だ。それに元の持ち主はもっととんでもないのを振り回しているからな」
そこでアージュは自分自身の言葉に、クラウスもアージュの言葉によって思わず背筋を凍らせてしまう。
二人の剣術の師である、頭が空っぽな碧いねーちゃんのシゴキを思い出したことによって。
アージュは何かを忘れるようにぶるぶると頭を振ると、先ほどから無言で硬直している三人に振り返った。
「それじゃあおっさんども、顔貸せや」
一方で若草色の少女は、青白く光る細身の剣を自在に操りながら、化物の周囲を舞うように切り刻んでいく。
その信じられない光景を目の当たりにし、言葉を失っている三人をさらに驚くべき事態が襲った。
「ディストラクションニードル!」
黒髪の少年が唱えた、ツァーグも初めて耳にする呪文によって脊髄草とやらの化物が一瞬びくりとすると、続けて彼もよく知る魔法が少年によって唱えられていく。
慌ててツァーグは黒髪の少年に訴えた。
「魔族に状態異常魔法は無効です!」
しかしその指摘と同時に少年の呪文は完成した。
「麻痺霧!」
え?
ツァーグとリスペルは目を疑った。
先程リスペルの睡眠霧をあっさりと無効化した目の前の化物が、ぴくぴくと痙攣しながら動きを止めてしまっているのだ。
これは、パラライズフォッグが効いているということ。
魔族、さらに植物属性を持つ相手にパラライズが効くなど、二人にとっては信じられない光景である。
しかし黒髪の少年は当然のように続けた。
「アージュ、ナイおねーちゃん、拘束時間は一分くらいが限界だよ! さっさと片付けてね!」
「任せろ!」
「すっごく斬れるの!」
黒髪の少年に返事をするかのように、金髪の少年と若草の少女は見る見るうちに目の前の化物を切り刻んでいく。
「ナイねーちゃん、土産にするからおっさんどもの頭はきれいに切り飛ばすようにな!」
「こうかしら?」
アージュの指示に従って、ナイはアージュから渡された細身の刃を熟練者のごとく自在に操り、スピナルグラスの身体から生えているおっさんどもの頭を次々と切り落としていく。
切り落とされた首から血が吹き出すことはない。
ということは、既に生物としての活動は終わってしまっているということ。
ツァーグたちの目の前で、それはたわわに実った果樹がその果実を収穫されるがごとく、元仲間の首が肉の塊から次々と落とされていく。
「これで最後よ!」
ナイの刃がパドの頭を落とすと同時に、それまでは触手の相手をしていたアージュがニヤリと笑う。
「クラウス、頼むぞ!」
「わかってるよ!」
アージュの指示にクラウスが返事をすると同時に、アージュは目の前の化物に向けて大剣を最上段から勢いよく振るった。
哀れ肉の塊を成したスピナルグラスは、頂上から地面まで、真っ二つに切り分けられたのである。
続けてクラウスが恥ずかしいコマンドワードを叫ぶ。
「暴風竜の眼・探索者!」
するとクラウスの右目を覆う単眼鏡状のレンズが一瞬碧色に光る。
「見ーつけた」
クラウスのモノクルからレーザー状の光が放たれ、それは真っ二つにされた肉塊の中央付近を照らし出した。
「それが本体だよ。もう一体はわかんないや。もしかしたらナイが切り刻んじゃったかも」
「ふーん」
アージュはレーザー光が照らし出す位置に、どす紫色の発芽もやしのような植物を見つけた。
「ぶった切ると証拠がなくなっちまうか」
「なら精神的に殺しちゃいなよ」
「そだな。そういうときはこれだ」
ということで、アージュもこっぱずかしいコマンドワードを唱えた。
「混沌竜の爪・魂魄破壊針!」
するとアージュが持つ巨大な黄金大剣が白い光とともにみるみるうちに縮んでいく。
いつの間にかアージュの手には、漆黒の短針剣が握られていた。
「ほれ」
ぷすり。
アージュがスピネルグラスの本体らしきもやしを針で刺すと、一瞬びくりとしたそれは、そのまま動かなくなった。
それと同時に、それまで一体となっていたおっさんどもの死体は、糸が切れたように、ばらばらと崩れていく。
「そんじゃ解放」
「ボクも解放っと」
同時にアージュのスティレットは元の小刀に、クラウスのモノクルは元の木の葉型に戻る。
するとナイがアージュに尋ねた。
「この剣はどうすればいいの?」
ナイもアージュに指示されたコマンドで、この剣の特殊能力「鴻鵠」を引き出していたのだ。
「あー、鴻鵠の能力は放っておけば消えるからそのままでいいよ」
ちなみに、鴻鵠とは相手に与えるダメージを3倍とし、さらに25%の確率で相手に束縛効果を与えるというスグレモノの能力。
ただし精神力を3も消費するのだが、魔族のナイには屁でもない。
そこにクラウスも情報を追加する。
「レーヴェお姉ちゃんのデーモンシュレッダーには破魔もついているからお得だね」
「破魔」とはアンデッドおよび悪魔に2倍のダメージを与える上、相手の存在エネルギーを体力として吸収してしまう能力。
こちらは自律型なので必要精神力はゼロと経済的なのだ。
つまり、ナイが手足のように自由自在に振り回している細身の刀は、そのままでも悪魔系にはダメージ2倍の上、体力吸収のおまけつき。
さらに鴻鵠を発動させれば、その攻撃力はなんと6倍に達する。
そりゃ悪魔が紙のように刻まれても仕方がありません。
「そんな高価なのを使わせてもらっていいの?」
やけに切れ味がいいなとは思っていたが、さすがに手にする得物がそんな代物だとは思っていなかったナイは恐縮してしまう。
「いいさ、道具は使わにゃ損々だ。それに元の持ち主はもっととんでもないのを振り回しているからな」
そこでアージュは自分自身の言葉に、クラウスもアージュの言葉によって思わず背筋を凍らせてしまう。
二人の剣術の師である、頭が空っぽな碧いねーちゃんのシゴキを思い出したことによって。
アージュは何かを忘れるようにぶるぶると頭を振ると、先ほどから無言で硬直している三人に振り返った。
「それじゃあおっさんども、顔貸せや」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です
途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。
ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。
前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。
ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——
一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——
ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。
色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから!
※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください
※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【R18】ダイブ〈AV世界へ堕とされたら〉
ちゅー
ファンタジー
なんの変哲も無いDVDプレーヤー
それはAVの世界へ転移させられる魔性の快楽装置だった
女の身体の快楽を徹底的に焦らされ叩き込まれ心までも堕とされる者
手足を拘束され、オモチャで延々と絶頂を味わされる者
潜入先で捕まり、媚薬を打たれ狂う様によがる者
そんなエロ要素しかない話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる