ほもむかしばなし

halsan

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あまのまら

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 それは昔々のこと。
 
 天の神様であらせられる天帝には一人の息子がおりました。
 
 名を「織太郎《おりたろう》」といいます。
 
 おりたろうは機を織るのが非常に上手でした。
 
 彼が織る布は非常に漢らしい質実剛健な逸品なのです。
 
 しかもおりたろうは自ら織った布を見事な六尺ふんどしに仕上げていきました。
 
 それは漢のふぐりを優しく支えつつも、漢の尻にがっちりと締め込む素晴らしいふんどしなのです。
 
 おりたろう印の六尺ふんどしは瞬く間に天界のムーヴとなり、神々はおりたろうがまさしく織りなす、様々な風合いの六尺ふんどしを締め込むことによって、互いの漢臭さを高め合っていったのです。
 
 そんなおりたろうも年頃になってきました。
 
 天帝はいまや天界の寵児であるおりたろうには相応のパートナーを迎えねばならぬと、天界中に情報網を張りました。
 
「む」

 あるとき天帝の情報網に一人の益荒男《ますらお》が引っ掛かりました。
 
 その益荒男の名前は「牛太郎《うしたろう》」と言います。
 
 うしたろうはその剛腕で天の牛を捕え、その肉を神々にふるまっていました。
 
 それだけならばただの力持ちです。
 
 ところが、うしたろうの狩りは天帝の漢心《おとこごころ》を十分に刺激するものでした。
 
 なんということでしょう。

 うしたろうは股間の「鬼棍棒《おにこんぼう》」のみで次々と漢らしく牛を打ち倒していくのです。
 
「うむ」

 うしたろうの鬼棍棒を支えるおりたろう謹製の六尺ふんどしに感涙《かんるい》の眩暈《めまい》を覚えた天帝は、うしたろうをおりたろうのパートナーに迎えることにしました。
 
 ところがそれが天界の混乱につながるとは天帝には思いもよりませんでした。
 
 うしたろうとおりたろうはベストパートナーでした。
 
 そう、二人の相性はベストに過ぎたのです。
 
 二人は毎日を互いによる快楽に溺れるようにすごしました。
 
 その結果、おりたろう印の六尺ふんどしは天界の市場から消え、うしたろうの狩りによる牛肉が天界に供給されなくなりました。
 
 衣食住のうち、衣と食を一気に失った天界は大混乱に陥《おちい》りました。
 
 天界はおりたろうとうしたろうの不祥事だと、あることないことを騒ぎたてたのです。
 
 このままでは天帝政権の転覆待ったなしです。
 
 なので天帝はトカゲのしっぽ切りをすることにしました。
 
 あろうことか、天帝はおりたろうとうしたろうの間を、自らの巨大な「魔羅《まら》」で遮《さえぎ》ってしまったのです。

「貴様らを更迭《こうてつ》する」

 天帝の宣言は絶対です。
 
 更迭とは何のことなのかよくわかりませんが、こうしておりたろうとうしたろうの二人は、天帝の巨大なまらによって引き裂かれてしまいました。
 
 おりたろうは毎日悲しみの涙にくれました。
 うしたろうは毎日情欲に身体を焼きました。

 おりたろうはうしたろうと会えない悲しみを六尺ふんどし製造にぶつけようとしましたが、悲しみに目が曇ってしまいます。
 うしたろうはおりたろうと会えない情欲を牛狩りにぶつけようとしましたが、おりたろう亡き鬼棍棒は使い物になりません。

 このままでは天界の天帝降ろしの波が止むことはありません、

 なので天帝は自身のまらの両脇で悲しげに佇《たたず》む二人をこう誘いました。
 
「もしも六尺ふんどし製造に精を出し、牛狩りに精を出すのであれば、一年に一回だけお主らを会わせてやろう」

 おりたろうとうしたろうは喜びました。
 
「よろしい。ならば毎年七夕の日にこの場所で会うがよい」

 天帝との約束を取り付けたおりたろうとうしたろうは互いに仕事に励みました。
 
 そうして二人は七夕の日を迎えたのです。
 
 二人の間を天帝の巨大なまらが遮っています。

 するとそこに一羽のかささぎが飛んできました。
 
「天帝の命により、お二人を引き合わせます」

 そう二人に交互に伝えると、かささぎは天帝のまらの下に潜り込むように飛んでいきました。
 
 続いてかささぎは天帝の裏筋に目標を定めると、こう叫びながら嘴《くちばし》を突き立てたのです。
 
「天帝かささぎ拳!」

「むむう!」

 同時に大地が鳴動し、天帝の巨大なまらから白い天の川が噴き出しました。
 
 すると天帝のまらが見る見るうちにしぼんでいき、おりたろうとうしたろうの間に道を作りました。
 
「賢者タイムは二十四時間である」

 天帝の宣言に祝福されるかように、おりたろうとうしたろうは抱き合いました。

 めでたしめでたし。
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